もりのおうさま
あるもりに、まほうつかいが すんでいました。
しかし、もりは あれはてて、そこにすむ、どうぶつたちは、げんきがありませんでした。
まほうつかいは、
「もりのおうさまが、ひつようだ」
とかんがえました。
ものをつくるのが、とくいな、まほうつかいは、おうさまに ひつような、きんのうつくしい おうかんを つくりました。
そして、もりのけいじばんに、おうさまぼしゅうの こうこくを、はりだしました。
「もりのおうさま ぼしゅうちゅう
おうさまのしごとは、
いち、もりを きれいにすること。
に、もりの みんなを げんきにすること。
さん、もりを あんぜんにすること。
おうさまになったかたには、
きんのおうかんを さしあげます。
もりのまほうつかい」
つぎのひ、まほうつかいの いえのドアを だれかが たたきました。
とん、とん、とん
「どなたですか?」
「もりのタヌキです。わたしが、おうさまに なりましょう」
「それは、ありがたい。さあさあ、おはいりください」
まほうつかいは、タヌキを いえのなかへ あんないしました。
タヌキは、いいました。
「おうさまになれば、きんのおうかんを、いただけるのですね。どうか、みせてください」
「さあ、どうぞ。これですよ」
まほうつかいは、おうかんを とりだして、タヌキへ てわたしました。
うつくしい きんのおうかんをみて、タヌキは、うっとりしてしまいました。
「うつくしいでしょう。まあ、おすわりください。おちゃでも いれましょう」
まほうつかいが、おちゃをいれて、へやに もどってくると、タヌキのすがたは、ありませんでした。
そして、きんのおうかんも きえていました。
「おやおや、おうかんが ほしかっただけなのかな」
まほうつかいは、おうかんを とられたのに おちついています。
それには、りゆうが ありました。
まほうつかいは、おうかんをつくったとき、おうかんに、まほうをかけておいたのです。
もし、おうかんが、おうさまに ふさわしくないものの てにわたったとき、おうかんは、じぶんで、まほうつかいのもとに もどってくる、というまほうです。
「どろぼうは、おうさまには ふさわしくない」
と、まほうつかいは、つぶやきました。
やがて、おうかんは、まほうつかいのもとに もどってきました。
つぎのひ、まほうつかいの いえのドアを だれかが つよく たたきました。
どん、どん、どん!
「どなたですか?」
「もりのクマだ。おうさまになってやるから、きんのおうかんを もらおう」
「それは、ありがたい。さあ、おはいりください」
まほうつかいは、おうかんを クマにわたしながら、ねんのため、ききました。
「あなたは、おうさまのしごとを、してくれますよね」
すると、クマはこたえました。
「もちろんだ。だが、そのまえに、まず、はらごしらえだ。なにかたべものを もってきれくれ」
まほうつかいは、いえにあったくだものや、パンをだしました。
「これだけじゃ、まだたりない」
と、クマが いいました。
「もっと たべものを もってきれくれ」
まほうつかいは、しかたなく、つりざおをもって かわへいき、さかなを たくさん つりました。
そして、さかなをやいて、クマに ごちそうしました。
「ああ、くった、くった。では、ひとねむり」
クマは、グーグー、ガーガーと、おおいびきをかいて、ねてしまいました。
やがて、めをさましたクマは いいました。
「ひとねむりしたら、はらがへった。なにか たべものを だしてくれ」
まほうつかいは、あきれて こたえました。
「もう、うちには、なにひとつ、たべものは ありません」
「なんだと、ならば、もう ようはない」
クマは、おうかんをかぶったまま、バタンと、ドアをしめて、でていきました。
「くいしんぼうは、おうさまに ふさわしくない」
と、まほうつかいは、つぶやきました。
やがて、おうかんは、また まほうつかいのいえに もどってきました。
「おーい、まほうつかいは、いるかー」
まほうつかいの いえのまえで、おおきなこえが ひびきました。
まほうつかいは ドアをあけて いいました。
「どなたですか?」
「もりのオオカミだ。おうさまになれるのは、おれしかいないだろう。さあ、きんのおうかんをわたせ」
まほうつかいは、きがすすみませんでしたが、しかたなく、おうかんを さしだしました。
オオカミは、おうかんを ひったくると、あたまにのせて いいました。
「どうだ、にあうだろう」
まほうつかいは、それには こたえずに いいました。
「では、おうさま。さっそく、もりへ パトロールに いきましょう」
もりのまんなかまでくると、まほつかいは、いいました。
「おうさま、みてください。きのえだや つるが、のびほうだいで、まえへすすめません」
「おれさまに まかせろ」
オオカミは、そういうと、てあたりしだいに、バキバキと、きのえだをおり、つるをひきちぎり、いわをけとばして、すすんでいきます。
「そんな、らんぼうをしたら、きや くさが、きずついてしまいますよ」
まほうつかいは、あわてて ちゅういしましたが、オオカミは、しらんかお。
ちからのかぎり、もりのきや くさを、なぎたおして いくのでした。
まほうつかいは、オオカミに いいました。
「もう、やめてください。あなたのような らんぼうものは、おうさまに ふさわしくありません」
おうかんが、オオカミのあたまから、はなれて、まほうつかいのてに もどってきました。
「おれさまの おうかんを かえせ!」
オオカミは、おこって、まほうつかいに とびかかりました。
まほうつかいは、ひょいっと、みをかわしたので、オオカミは、まほうつかいのうしろにあった、おおきな いわに いきいよく あたまを ぶつけて、きをうしなって しまいました。
まほうつかいは がっかりして つぶやきました。
「このもりには、おうさまに ふさわしいものは いないのだろうか」
そのとき、どこからか、きのえだが するっと のびてきて、まほうつかいのてから、おうかんをとり、そっと、まほうつかいの あたまに のせました。
まほうつかいが、びっくりして、みあげると、そのてのようなえだは、おおきな クスノキのものでした。
「おまえが、おうさまに なればよい」
クスノキが、ひくいこえで いいました。
「わたしが、おうさまに?」
「おまえが、いちばん もりのことを かんがえているじゃないか。いちばん、おうさまに ふさわしいと、 わしは おもうが、どうかな」
クスノキが、そういうと、まわりから、パチパチパチと はくしゅが おこりました。
まほうつかいの まわりには、いつのまにか もりの どうぶつたちが あつまってきて、さんせいの はくしゅを していたのです。
それから、まほうつかい(きんのおうかんをつけた、もりのおうさま)は、じょうぶな オノや、のこぎりをつくって、のびすぎた きのえだを きれいに きりそろえたり、
もりに とおりやすい みちを つくり、
けがをした どうぶつがいたら、おみまいにいって げんきづけたり、
ときには、もりのおまつりを かいさいして、みんなと たのしく すごしたり、
もりのおうさまとして、いっしょうけんめい はたらきました。




