ボケと殺し屋さんのコント
アストルの持つ携帯のGPSを頼りに車を走らせ、アジトとやらに着いた。
「随分とわっかりやすいアジトなのな」
ヴィヴが呆れ気味に言った。
「どうすんの?」
アイゼルがアジトを見つめながら聞いてきた。
「とりあえずアストルと合流するかね」
そうは言ってみたもののもうアストルの位置も姿も見えている。
歩いて行き少し驚かしてみようという子供心が働き、後ろから銃を突きつけてみた。
「早かったね」
「おつかれさん、悪いね面倒ごと押し付けちゃって」
「気にすんな、で、どうすんの?」
「突っ込む」
「ノープラン乙」
「消すぞ」
アストルとおふざけやり取りをしてみた。
まあ、本当に突っ込むんだけどね。
アジトとやらの扉を蹴り飛ばし、銃を構える。
ここで殺す気はないが。
「誰だ!」
大将みたいなの出てきたー。
「どうも」
「あ、あんた、レミー、れ、レミー・アリアナフォード!」
「ご名答。 ここら辺に新しい殺し屋ちゃんユニット出来たって聞いてさぁ。 うちらの仕事の邪魔だから、よそ行ってくんない?」
「対価は?」
「うちの傘下に入れてやるよ」
ぞろぞろと大将(仮)の後ろから仲間(仮)が出てきた。
「ふざけてんのかてめえ」
仲間(仮)の威圧!
レミーには効かなかった!
「選べ、ここで死ぬか、大人しく言うこと聞いて生き残るか」
「死ぬよ、ここで」
大将(仮)の根性発動!
レミーは追い打ちをかけた!
ヴィヴに目線を送った。
パァン!
銃声が響く。
ヴィヴが大将(仮)の耳を、撃ち抜いた。
「くぁぁ!」
耳を抑えて大将(仮)がうずくまる。
低い声でヴィヴは言う。
「次はお命頂くよ」
仲間(仮)はひるんだ!
レミーはさらに追い打ちをかける!
スっと手を挙げた。
ババババァン!
レミー以外のメンバーの銃が仲間(仮)の髪の毛の端を撃ち抜く。
「もう一度言う。 ここで死ぬか、大人しく言うこと聞いて生き残るか、選べ」
「よそって、どこだ」
大将が耳を抑えながら聞いてきた。
「エルアムークという国に行ってくれないか」
「わかった、ここは引くよ」
「恩に着るよ」
背を向け、アジトらしきものを出る。
「よかったのか? 殺さなくて」
アストルが不満そうに聞いてくる。
「エルアムークにはマテリアがいる。 あいつらごときが生き残れる相手じゃないさ」
マテリアとは、この世界での殺し屋ユニット四強の一つ。
Quintetは四強の上の位置に存在するのだが、四強もなかなかのやり手達ばかりだ。
おや?殺し屋が自分で殺さなくていいのかって?
馬鹿だなぁ。
頭で殺すことほど難しいことなんかないんだぞ?
人を殺すなんて、ハエを潰すのと同じなんだ。
そんな無駄なことを、わざわざ自分の手でなんて、ばっちいってもんさ。
煙草に火をつけ、車を走らせる。
バカを相手にするのも、雑魚を相手にするのも、一見面倒に見えて、面白おかしいもんだ。
いやー、嫌いじゃない。
あ、ちなみに傘下には入れないよ?
嘘ぴょ〜んってやつだね。
嘘をつくのもテクニック。
脅すのもテクニック。
殺すのもテクニック。
殺し屋には色んなものが必要なのさ。