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紫音の少女  作者: 柊 潤一
宿命
75/75

別れ、そして新しい出発

 それは、突然の出来事だった。


 ある朝、紫音はゼルダに向かって言った。


「あなた・・・お父様を呼んでかまわない?」


「いったいどうしたんだ。突然に。」


「お父様だけじゃなくて、シュリ婆もエリカさんも、全部の人を呼びたいの」


「お前・・・まさか・・・」


「ええ、そろそろ・・・。私の役目も終わったみたい」


 ゼルダはソファーに崩れ落ちるように座った。


 そして、手で顔を覆った。


 沈黙の時が流れた。


 再び顔を上げたゼルダには、悲痛な覚悟が浮かんでい

 た。


「そうか・・・・わかった」


「いつかは来るとわかっていた事だ」


 それからゼルダは、部下に紫音と交流のあった人々を呼びに行かせ、集まるまでのあいだ紫音と寄り添い、今までのことを語り合った。


 紫音は涙を流し、ゼルダは優しく慰めていた。


 やがて呼ばれた人が集まってきた。


 みな紫音を引きとめたが、無駄だとわかると、泣きながら別れを惜しんでいた。


「紫音や」


 声をかけたのはシュリ婆だった。


「わしゃ、楽しかったぞえ。紫音に会ったあの日からがわしの本当の人生だった気がする」


「お婆さん」


「ゼルダの話し相手になってあげてね」


 紫音はベッドに横になった。


「あなた・・・指輪を貸して」


 紫音はゼルダから指輪を受け取ると、彼女の力と共に願いも込めた。


 それは、再び会えるようにという強い願いだった。


「これで又いつか。きっとあなたと会えます」


「紫音・・・」


「ゼルダ・・・ありがとう。私は幸せでした。ありがとう」


 紫音は目を閉じ、やがて溶けるように消えていった。


 ゼルダとハシバ以外は、みなその場に泣き崩れていた


 ハシバとゼルダはソファーに座った。


「ゼルダ・・・」


 ハシバが声をかけた。


「父上、何も言いますまい。初めから分かっていた事です。今まで一緒に暮らせただけでも、幸せだったと思わねば」


「そうか。そうだな。」


 それから親子は無言でいた。


 みな、紫音との思い出を胸に紫音を思い出していた。


 そして、何故か去り難い雰囲気の中で時間が流れた。


 突然誰かが声を上げた。


「あ、あれ・・・あれ・・・ベットに」


 みんな慌ててベッドに駆け寄った。


 ベッドの上に人影が現れ、それは段々と濃くなっていった。


 紫音だった。


 紫音は元の姿で現れた。


 閉じていた目を開け、周りを見回しゼルダを見つけると、その目が潤んでいった。


「あなた・・・」


「紫音・・・紫音、帰ってきたのか?」


 みんな紫音を見守っていた


「あなた、私・・・」


 ゼルダは紫音の手を握っていた。


 そして初めて泣いた。


 紫音も泣いていた。


「お帰り、紫音・・・お帰り・・・」


「あなた・・・あなた・・・」


 居合わせたみんなも泣いていた。


 紫音の体内には新しい命が宿っていた。



 ー完ー   



紫音の少女が終わりました。

拙い物語をお読みいただき、ありがとうございました。

次から、「紫音の少女 郷愁」に取りかかります。

現在の投稿済みを改稿してから続きを書いていきます。

そちらの方もお読みいただければ幸いです。

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