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紫音の少女  作者: 柊 潤一
宿命
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歓迎の晩餐

夜になって、ゼルダ王子が迎えにやって来た。


紫音とシュリ婆は王子に連れられ城に入り応接間に通された。


暫くお待ち下さいと言ってゼルダ王子が出ていき、少ししてから執事がやって来て二人は食事の間に通された。


 執事が扉を開け、紫音とシュリ婆が中に入るとハシバ王とゼルダ王子、レイカ姫が出迎えに立っていた。


 王自らの丁重なお出迎えであった。


「今日は私の招きに応じてくださり光栄に思います。こちらへどうぞ」


 ハシバ王は二人を椅子まで案内した。


 執事が椅子を引き二人が座った。


 それからハシバ王が正面に座り、向かって右側に紫音シュリ婆と座り、その向かいにゼルダ王子レイカ姫が座った。


「それでは食事を始めましょうか?お口に合えばいいのですが」


 ハシバ王は執事に目配せをした。


 初めに食前酒が配られ、次に前菜が出てきた。


 ハシバ王がグラスを掲げ、みなもそれにならった。


「では皆の健康と幸福を祝して。乾杯!」


 皆それぞれに乾杯と言いながら食前酒を飲み干した。


「紫音殿はお酒は飲めますかな?」


 ハシバ王が紫音に尋ねた


「はい、少しなら頂けます」


「シュリ婆殿は・・・・多分飲めますな」


 ハシバ王がいたずらっぽく笑った


「なんですかいの。わしゃそんなに飲みそうな顔をしてお


 りますかの。まぁ・・・好きなことは好きじゃが」


 シュリ婆も笑っていた。


 やがて執事が酒を持ってきた。


「これを飲んでみてください。多分気に入られると思います。」


 執事が順番に酒を注いでいった。


 紫音とシュリ婆は一口飲んだ。


「まぁ、美味しい・・・」


「うむ、これは美味いのぉ


 ・・・」


 その酒は澄んだ、ビロードの色をしていた。


 紫音とシュリ婆は暫く無言でグラスを見つめ、また酒を口にした。


「気に入って頂けたようで良かった。このお酒は大切なお客様にしか出さないようにしておりますのでな」


「まぁ・・・私ごときにもったいのうございます」


「何をおっしゃいます。あなたのお蔭でレイカもこの通り元気になりました。もしあなたがいなければと思うと、感謝しても仕切れないくらいです」


「そうですわ」


 レイカが言った。


「紫音様がいなければ、私はこのように元気な体にはなっていませんでしたもの」


「何よりこの様にして、またこのお酒が飲めることが夢のようです。私達だってこのお酒はめったに飲めませんのよ」


「おいおい、レイカ。はしたないぞ」


 ゼルダ王子がレイカ姫を見て笑いながら言った。


「あら、お兄様だっていつもこのお酒が飲みたいと言ってらっしゃったじゃないの」


「ははは。レイカは本当にお酒が好きじゃのぉ。そんなことでは嫁の貰い手がないぞ」


「あら、お父様、わたくしこう見えても男の方からお手紙もよく頂きますのよ」


「む・・・それは聞き捨てならぬな」


「うふふ、ご安心なさって。お父様の御めがねにかなう人でないと、わたくしはお付き合いもしませんことよ」


「ははは、紫音殿お恥ずかしい。レイカはこの様なじゃじゃ馬でしてな」


「しかしこうやって笑いながら話せるのも、これが元気であればこそです。紫音殿、この通り礼をいいます」


「いえ・・・でも元気になられてようございました」


「はい。実を申せば、去年妻を亡くしましてな。この席におらぬのを不思議に思うておられたかも知れませぬが」


「いえ、王子様から既にお聞きしておりましたから・・・」


 ハシバ王はちらっとゼルダ王子を見た


「そうですか。妻が死んで、今度はこのレイカがいなくなるのかと思うと・・・一時は悲しみにくれておりました」


「国王様のお気持ちはよく分かります。私もお力になれて嬉しく思います」


「まぁ、そういう訳で、私は出来る限りのことはさせて頂きたいと思っております。これからも何かあれば、何なりと仰ってください」


「ありがとうございます。もう、充分にして頂いておりますから、これ以上はお気を使われませんように」


「そうですか・・・ところで、ひとつお聞きしてもよろしいですかな?」


「ええ、何なりと」


「あなたの、その病気を治す力は、どこでどうやって身に付けられたのですかな?」


「それが、わたくしにも分からないのです。気が付けばもう身に付いておりました」


「それでは誰かに習ってとかではなく、生まれ持ったものですか・・・」


「そうです」


「で・・・お生まれはどちらですかな?」


ハシバ王がそういった時、ひたすら食事に専念しながら話を聞いていたゼルダ王子が、ちらっと父を見た。


「それも、わからないのです。私には小さい頃の記憶とい

うものがありませんから」


「ふむ・・・失礼ですが、お若そうに見えますが、おいくつになられました?」


「それも・・・わからないのです」


紫音はうつむいた。


「見た目は変わらないままですが、長く生きてきた気がします」


「自分のいる場所で色々な事をやって、突然に気を失って、目が覚めれば違う場所にいて、また色々な事をして、の繰り返しですから、自分でもどれくらい生きてきたのかが、はっきりしないのです」


紫音が話している間、ゼルダは紫音を見ていた。


そして何事もないような顔で話すその奥に、ゼルダは確かに紫音の寂しさを見た。


自分と楽しそうに話している時に、ふと目を落とす事があるその理由が、今わかったような気がした。


「なるほど、不思議な方ですな・・・」


「そんな言い方をしたら失礼ですわ。お父様」


「いや、これは私としたことが迂闊でした。お許しください」


「お気になさらずに。普通の人と違うのは自覚しておりますので」


「でも紫音様は私たちと同じ人間ですわ。私、紫音様と仲良くなりたいのです。よろしければ、今度遊びに行ってもかまわないかしら?」

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