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紫音の少女  作者: 柊 潤一
宿命
27/75

ハウラの策謀

 紫音たちが広間までやって来るとハウラが


「では、私はこれで失礼致します」


 そう言って足早に立ち去って行った。


 紫音はその後ろ姿をじっと見詰めていたが


「どうかされましたか?」


 というゼルダ王子の言葉に


「いえ、では行きましょう」


 と言って歩きだした。


 城からエリカの家へ帰る道すがら紫音とゼルダ王は、シュリ婆の存在を忘れた様に楽しそうに話していた。


 紫音が笑うとゼルダ王子は微笑み、ゼルダ王子が笑い声をあげると、紫音はその顔をにこやかに見詰めていた。


 シュリ婆はそんな二人を終始暖かい目で見ていたが、ふと不吉な影を見たように眉を曇らせ、そしてそれを振り払うかのようにかぶりを振った。


 やがてエリカの家に着き、エリカの出迎えを受けながら


「お腹が空いたぞえ」


 とシュリ婆が言うと


「はいはい、ちゃんと用意してますよ」


 と言いながらゼルダ王子を見て


「あら、お客様?もう一人分用意しないといけないわね」


 と言いながら奥に入りかけたが、エリカはふと立ち止まり、そっと振り返ると、不思議そうにゼルダ王子をまじまじと見詰めてから、あっと声をあげ


「ま、まさかゼルダ王子様?」


「そのまさかのゼルダです」


「えええ・・」


「いや、驚かせてすまぬ。実は城に病人がいてな、紫音殿に治してもらっているのだ。そして昼から又見て頂けるというのでこうして付いて来た。迷惑はかけないので、紫音殿の身体が空くまで待たせて頂きたい」


「そ、それは構いませぬが、王子様はお昼はまだでごさいましょう?」


「いや、お腹は空いておらぬ故、気にしないで頂きたい。城に帰れば・・・」


 そう言った言葉のすぐ後でゼルダ王子のお腹が、はっきりと聞こえる程になった


 一瞬の沈黙の後、ゼルダ王子を除いた三人の笑い声が部屋に響いた。


「いや、これは、何とも・・」


 エリカは笑いを堪えながら


「お口の合いますかどうかはわかりませんが。」


 そう言うと、堪え切れずにクククと笑い


「食べていってくださいな」


 と尚も笑いながら奥へ入って行った。

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