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2話 来訪者

 俺はその大きな玉座の間の中央に敷かれた緋色の絨毯の上に寝かせられ、その上を魔王を名乗る幼女が馬乗りになっておられる。


 うっすら見えていた幼女の姿が鮮明になる。


 歳は10歳ほどだろうか。薄いピンク色の髪を二つ結びにして、黒のワンピースを着ていた。


 急に灯った明かりにぱっちりとした目を細めながら、幼女がそのやわらかそうなくちびるを動かす。


「私の名前はライラじゃ。そしてそっちのはボイドという」


 彼女が指した先には長身の笑っているピエロ風の仮面をかぶった執事が立っていた。


 俺と目が合うとそのピエロは深々とお辞儀をする。


「ではボイド、説明を頼む」


 幼女はそう言うと奥の方に置かれた玉座にトコトコと歩いていってしまった。


 その玉座の周りに真っ黒なローブで覆われた人物が三人立っているのが見えた。


 三人の中には三メートルはあるのではないかと思うほどの大きさのものもいる。


 ここからでも威圧感が半端じゃないな。


 説明を頼まれたボイド、というピエロが一歩前に出る。


「ただいま紹介に与った、この魔王城の執事長であり“セクステッド”が一角、ボイドという者でございます。以後お見知りおきを」


 ボイドが女なのか男なのかよくわからない声で続ける。


「この度は誠に勝手ながら、貴方様を魔王様の六人の守護者“セクステット”の一員として迎え入れるべく、召喚させていただきました」


 つまり……なんだ……この状況はアレだ。



 異世界召喚というやつか!



 急にスウェット姿が恥ずかしくなってくる。


 こんなことならネットで皮の鎧でも買っとくんだった。


「なんで俺なんかが? 俺はちょっとゲームが好きなだけの純粋で健全な男子高校生だぜ?」


「それは貴方様にお嬢様をお守りする力と、その適性が――」


「俺にそんなものはない。カエッテゲームヤリタイ」


 人違いじゃないのか? そう思えて仕方がなかった。


「まあ落ち着いてください。貴方様がないとおっしゃっても、あるものはあるのです」


 なんだその精神論的な言い回しは。俺、体育会系アレルギーあるんですけど。


「では今から、貴方様にその力を与える儀式を――」


 そのときだった。突如その広い空間に雷が落ちたかの様な音が轟く。


 同時に黒ローブの三人とボイドが動く。そのうちの一人が一瞬で距離を詰め、俺を黒マントですっぽりと覆うように抱いた。


 当たるやわらかい胸の感触。ああ、このまま時間が止まればいいのに。


「暴れるなよ」


 その黒マントの女は静かに、優しく、だが緊迫した声でそう言った。


「ずいぶん不躾なまねをするじゃあないか。勇者よ」

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