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第62話 働きます

年度末の忙しさを乗り越えたら年度初めの忙しさがやってきました。

連載再開(大嘘)になってしまいすみませんでした。これからはマイペースに投稿していきます。

熊本地震に被災された方におかれましては、心よりお見舞い申し上げます。

 目が覚める。


 エルフ国にいた時より、早い時間に起きたが、隣を見てもルナの残り香があるばかりだった。


 働き者だなぁ。俺はまだ寝ていたいんだが。



 それにしても昨夜は凄かった。スキル「性技」のレベルが最大に近い俺が搾り取られた。


 比喩でもなんでもなく、俺じゃなかったら死んでる。サキュバスの本領発揮と言った感じだった。



「ふあぁ~あ。」



 起きるか。


 とは、言っても朝早くから俺が適当に城内をふらついていると、結構メイドなどに気を遣わせてしまうこともある。



 用事もないし、ベッドでごろ寝しながら本でも読もう。




 その後、ルナが部屋に呼びに来てから、長い1日が始まった。


 何人もの大使との謁見。



 俺がいない間はマニュアルを作っておいて、それで対応させていたが、相手の腹の内を探ったり、牽制したりをポーカーフェイスで交わし合うのは実際自分がやるとなると、精神力をガリガリ削られていくようで気が滅入る。



「このたびはノワール国王様にお会いする機会を頂き、ありがとうございます。」


 謁見の間にエルフ国の大使が入ってきて跪く。



「この国は出来たばかりで色々立て込んでいてな。まずは、大使殿と会う時間が取れなかったことを謝罪しよう。」


「いえ、こちらも貴国の状況への理解はしておりますゆえ。」


「そうか。」



 朗らかな笑顔を浮かべて大使が言う。



「貴国と隣国となった我がエルフ国としては是非、よい関係を築いていきたいと思っております。」


「…………そうだな。」


「それにあたりまして、前に宰相殿に相談していたのですが、我が国王との会談の場を設けたいと考えております。」


「ふむ。それはいい考えだと思うぞ。」


「貴国の状況もありますし、会談の場はエルフ城にするのが良いと思っております。我が国は気候にも恵まれていまして」



 大使が自国のプレゼンを始める。


 さらっと自分のペースで上手く要求を告げてくるなぁ。上手いもんだ。




「それで、構わない。俺もエルフ国を見てみたいしな。」


 長い話を聞き終えて、俺はそう答えた。


「ええ。私どもとしても是非エルフ国を見て貰いたいです。」



「では、これからは、具体的な日程などの話を決めていけたらと。」


「ああ。宰相と相談してくれ。」



 メイドに案内されて、エルフ国大使が謁見の間を後にする。





「あー。こんなこと1日中やるのか。」


 王座を立って、休憩をしにあらかじめ決めておいた隣の部屋に入る。


――ガチャ



 部屋に入ると先客がいた。


 俺の方から見えるのは、健康的で程よく引き締まったしなやかな脚。


 誰かと思ってみてみるとミーナがソファの上でうつ伏せに寝ころがってパタパタと脚を動かしていた。


 本を読んでいるようで、テーブルの上にはティーカップと皿に入った、ポテトチップスのようなお菓子が置かれている。



「何読んでるんだ?」


 俺はミーナの向かい側のソファに腰かけながら訪ねる。


「『伝説の勇者の物語』です。書庫にありましたよ。」


「へぇ。」



 ラインハルトって名前の勇者が主人公ってやつか。有名らしいし、俺もそのうち読んでみるか。



「これ貰っていい?」


「どうぞ。」



 机の上に置いてあるポテトチップのようなお菓子をつまむ。


 あ、これ普通にポテトチップだ。塩味が聞いてて美味い。港町が出来たおかげで塩が簡単に手に入るようになったのは嬉しい。



「んで、ミーナはなんでここにいるんだ?」


「割り当てられた午前中の仕事を終えたので、私は休憩に入ってます。」


「そうか。」



 ちゃんと自分の仕事をした上で休むのは別に俺はとやかく言う気はない。



 しかし、こういう仕事を早く終わらせて休んでいる人に、上司が最初から終わらないレベルの量の仕事を割り当てるようになることがある。


 そして、上司が、段々その量をしっかりこなすように言い始めると、ブラック企業の出来上がりだ。



 まあ、今のところメイドには、そんな雰囲気はない。


 ミーナはなんやかんや頼られることも多いし、人望あるから隙があるように見えて逆に良い方に働いてる気がする。



 ……でも、俺が見かけるとき、働いてない割合高い気がするけどな。



「ふう。あ、お茶入れますね。」


 ミーナがちょうど本を読み終わったようで、本をテーブルに置いて、席を立って俺の分の紅茶を用意してくれる。


 机の上に置かれた本の表紙に30巻の文字が見える。


 俺も読もうと思っているんだが、巻数が多くて、じっくり読もうと思ったらしばらく読み始められないだろうしなぁ。なんやかんや忙しい。



「面白かったですよー。悪魔族が村へ進行するのを止めるために主人公がヒロインと2人で大群に挑むんです。」


「ネタバレストップ!」



 俺とミーナの距離にしては大きな声を出してミーナの言葉をさえぎる。



「そんな必死にならなくても……。」


「本のネタバレだけは、何があってもしてはいけない。いいな?」



 危なかった。大筋を聞いてしまった気がするが、まあこの程度ならあらすじの範疇だろう。



 悪魔族か。そういえばエルフ国で見たな。


 あの後リーゼに聞いたが、魔族を含むいくつかの種族は大昔に異空間に封印されてしまったとか伝えられているらしい。


 リーゼがその話をした後1日以上考え込んでたのは、こちらの人の常識的にはかなり驚くことなんだろうな。悪魔を見たって。




「わかりましたよ。ネタバレはやめます。……それで、良かったんですか?」


 紅茶を俺の方に置いてちゃんと座りなおしたミーナが尋ねてくる。


「何がだ?」


「エルフ国の大使の件ですよ。聴いてましたけど向こうの言うままに進めてたじゃないですか。」


「ああ、それな。」



 隣の部屋だから「身体強化」の魔法とかで聞き耳立ててたのか。



「あれでいいんだよ。こっちは向こうの出方を探れたし。」


「そうなんですか?」


「ああ。最初自分から謝罪してみて、利益を迫ってくるか試した。」


「でも、してきませんでしたね。」


「まあ、友好目的で来てるわけで、こちらがオーク国を倒すほどの何らかの武力をもってるのは、向こうの大使も知ってるから、滅多なことは出来ないだろ。」


「なるほど。」


「実際の目的はエルフ国が謝罪を受け入れたという事実を作ったことだ。これで後から会談の席に着くのに時間がかかったことについて追及されるのを避けれる。」



 まあ、この辺りは向こうの大使もわかっていただろう。予定調和だ。



「それで、会談の場所をエルフ国にしたのは?」


「当然、エルフ国側としては、友好条約も結んでいない、武力なども未知数の国に王族を行かせるのは避けたがるだろう。」


「そうですね。」


「だから、ここは譲る。さらっと決まったことに向こうも驚いていたようだが、こちらはその前提で偵察とかしたわけだし。」


「ああ! だからエルフ国に行ってたんですね。」



 俺は机の上のポテトチップに手を伸ばす。


「そういうこと。まあ、歓待する準備をするのもめんどくさいし、お土産持って遊びに行った方が楽だろ?」



「ふふっ。一理ありますね。」


 ミーナが笑いながら言った。




「それで、その時さっちゃんがですね。」


――コンコンコン


「次の謁見のお時間になりました。」


 しばらく、ミーナと話をして、時間を潰していたが、ノックがあり、声が聞こえた。


 先ほどこの部屋に案内してくれたメイドだろう。



「話の続きはまた今度な。行ってくる。今日は一日これの繰り返しだろうからな。」


「頑張ってくださいねー。」


 ひらひらと手を振るミーナに見送られ、俺は部屋を後にした。


 ミーナと時間を過ごすと、多少仕事への憂鬱な気持ちも和らいだ気がした。

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