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第61話 帰宅しました

 エルフ国を出て、自国に戻る。


 行きの手順の逆を行い、預けていた馬車を受け取り、ある程度離れたところで馬車を「インベントリ」に入れて飛んで行こうとしたのだが、あまり走っていない馬が「インベントリ」に入れる際、暴れ始めたのでしばらくは馬車で移動することになった。馬は走っていないと気が滅入るようだ。


 港町に行くときにも思ったが、馬車は結構揺れる。


 ステータスの影響で尻が痛くなることはないし、同乗者の揺れる胸が見られるというのは、メリットに感じないでもないのだが、荷物を積むときに損害が出るかもしれないし、やはり、ステータス補正がない人には長旅はつらそうであるので、そのうち改良してみるのもいいかもしれないな。


 そんなことを考えながらまったりと家路を進んだ俺たちが到着したのは、日が傾きかけたころだった。



「ロイ様~~~!!」


 俺は満面の笑みで走ってきたルナを抱き寄せた。


「ただいま。」


「おかえりなさい!」


 俺も頬が緩む。


 そして、密着した状態から離れたルナが顎を上げて目をつぶるが、俺は頭を優しく2回叩いてやる。


「それは後で。な。」


 ルナは少し不満そうな表情を浮かべた。可愛い。




「ミーナもただいま。」


 ミーナの方に身体を向け手を広げてみせる。


「……私にもお姉ちゃんみたいに人前であんな恥ずかしいことをしろと?」


「冗談だよ。そんな目で見るな。」


 小粋なジョークじゃないか。ジト目で見るのはやめてくれ。


 それにしても公然と下ネタを言うような文化であるのに、人前で抱き合うのは恥ずかしいことに入るらしい。



「……おかえり。」

『おかえりなさいです。ご主人。』


「マリー、ヴァイス。ただいま。」


「…………お土産。」


「ちゃんと用意してあるぞ。夕食のときにでも出す。」


「…………そう。ありがと。」



『よし。ちゃんとお礼が言えたな。』


 ヴァイスが得意顔で前足を使ってマリーを撫でるが、本人はうっとうしそうにしている。


 兄貴風吹かせてるなぁ。



 さて。


「リーゼも馬車での移動は疲れてるだろうから仕事の引き継ぎは明日にでもやればいいよ。今日は土産話でもしながらゆっくりしよう。」


「わかりました。」


 俺も明日に仕事の予定を回すようにラインハルトのところに言いに行くとしよう。



 明日からは大使らとの謁見などと言った王としての業務をこなしていく。


 細かい陳情書まで俺のところに回ってくるなど、どちらかというと領主規模の仕事までこなしてきたが、大使らと会うなどといった、王が務めるべき仕事をドラゴンポートを作っている間はリーゼに任せていたし、エルフ国にいる間は、わずかながらラインハルトに任せていたからなぁ。




 帰ってきた挨拶も終えたところで、俺は夕食の時間まで少しあったので、自室でゴロゴロすることにした。


 ルナは夕食の準備に張り切っていた。



――ドサッ


 自室に入り、かなり大きい、キングサイズのベッドに倒れこむ。


 やはり、自室だと思うと一番落ち着く。



 なんとなくルナの匂いがしないでもない。


 しばらくして、俺はゆっくりと意識を手放した。




――コン、コン、コン


 ノックの音で目が覚めた。


「食事の準備が出来ました。」


「今いくよ。」


 軽く伸びをして、部屋を出る。



「んっ……。」


 口が柔らかい感触によってふさがれた。


 俺の身長に届かせるために背伸びをしているのだろう。肩に少し体重がかかっている。


 そして、少しの時間でそれは離れ、上目づかいで悪戯っぽい笑みを浮かべて、彼女――ルナは言った。



「驚きました?」


「…………ああ。」


 なんというか。ルナには主導権を持っていかれがちな気がする。




 久しぶりの城での食事を終え、俺は「インベントリ」から陶器製の容器とスプーンをこの場にいる人数分を取り出した。


 リーゼを除いて、皆、もの珍しそうに容器を持ち上げて眺めたりしている。



「プディングですか。」


 ルナが言う。


「ああ。俺のいたところではプリンと呼ぶのがメジャーだった。」



 エルフ国では卵が一般的だったので所謂カスタードプディングを作ってみた。


 前の世界の俺のいた国では和製英語の「プリン」と聞くと甘い食べ物を想像する人が多いだろうが、実は元となった単語の「プディング」は結構幅の広い蒸し料理の総称だったりする。



 ヴァイスには食べやすいように、皿に出してやる。


 ペットに甘いものを与えると生活習慣病になったり、他の物を食べなくなったりするらしいからダメと聞くが、コミュニケーションが取れることなどを考えると少量なら問題ないだろう。


 まあ、砂糖が高価だったのもあり、蜂蜜のようなもので代用しているから、犬用プリンと似た感じになっているし。



「ん~~~! 美味しいです!!」


 ミーナが大きな声を上げる。



 それを聞いて皆プリンに口をつける。


「「『「~~~~~~!!」』」」


 プリンは皆に好評だった。


 ちなみに森の宿で販売しようかと考えていたが、まだ試行錯誤の余地がありそうなのでそれは行っていない。


 マヨネーズの作り方は秘密にしているが、甘いプリン――カスタードプディングはあまり浸透していないがプディング自体は庶民にも浸透している料理だ。


 販売してもすぐに他の商会が類似商品を出すだろう。



 後で改良案をルナと相談してみるか。


 などと色々考えていると服の裾を引っ張られ、俺は目線を下げる。


「…………おかわり。」


「これで最後だぞ。」


 マリーに「インベントリ」からもう1つプリンを出してやった。




「んちゅ……ちゅぷ…………ロイさまぁ」


 今、俺は自室のベッドの上で、俺はルナと口づけを交わしている。


 淫靡な音がかなり部屋に響いているような感じがする。



 初めて結ばれたときと同じぐらいに俺とルナは互いを求めあっていた。会えなかった時間の埋め合わせをするように。


 そして、そのままルナの手が俺の股間に伸びるが、その手をやんわりと誘導し顔を放す。



「待って……ルナにプレゼントがあるんだ。」


 俺は「インベントリ」から目的の物を取り出す。


「エルフ国の露店で買ったんだけど、どうかな?」


 差し出したのは銀色に輝くヘアリングだった。



「私、とっても嬉しいです。」


 リング自体は簡素なものだったが、ルナに似合いそうだなと思い選んだものだ。


 女の人に贈り物をするという経験がなかったので、喜んでもらえるか少し不安な部分もあったが、ルナの見せる俺の大好きな笑顔が見れて、ほっとしたの半分、嬉しさ半分、といったところだ。



 まあ、ルナなら何でも喜んでくれそうな気はしたが。



「じゃあ、今日は私が沢山、お礼しますね?」


 ルナはプレゼントを喜んだ時とは少し違う、妖艶な笑みを浮かべ、俺にキスをして、そのまま押し倒した。

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