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第60話 儲かりまっか

 昼下がり。


 クラシックのピアノ演奏がされている店内。

 昼時を少し過ぎた店内は客が途切れることはないが、少し落ち着いたよい雰囲気である。


「いやぁ。上手くいったなぁ。」


「上手くいきましたねぇ。」



 リーゼと俺は優雅な午後のティータイムを満喫している。


 カップに入れられた紅茶自体は安物であるが、エルフ国特産の果物で香りづけしたアールグレイで値段を考えれば格段によいものだと思う。



 奴隷を購入してエリクに自分がオーナーになったことを告げてから2週間。俺の全力を持って、この店を繁盛させた。



 順を追って、この店の繁盛への経緯を説明していこう。


 まずここで働かせる従業員の「隷属の首輪」が目立たなくなるような制服作りをした。

 休暇扱いのところ悪いが、リーゼに試作してもらい。奴隷たちに後はやらせた。



 次に店の準備と並行して、ビラ配りを行った。

 紙が一般に流通しているとはいえ、ポスターのように掲示するのでなく、ビラを配るという方法はある程度、街の人たちの目を引いた。



 しかし、当然ここでライバルとなる宿との差別化がネックとしてぶち当たる。


 だがここも抜かりはない。ライバルとなる宿のバックには商会がついており、多岐に手を出し始めているアキンドゥ商会ともライバル関係と言える。


 それが味方に付いたことで、快く力を貸して貰い、ことに当たった。



 ライバルの宿の客引きの目玉となっている“食べ放題、飲み放題”だが、普通に考えて、かなりの量を食べたり飲んだりしたところで店の利益になるように出来ている。


 そこで、アキンドゥ商会のコネを使って仕入れを行うことで、“某店でこれだけ飲み食いしない限り、此方の方がお得!”という謳い文句での宣伝が可能になる訳だ。



 すると、その宿の商会が文句をつけに来たわけだが、商人ギルドを通して正当に抗議するなどで簡単に事が済んだ。


 その後の妨害もあまりなかった。ある程度予想されることには根回しをして潰してやったが、派手に手を出してこれなかったのはこの街だからというのもあるのだろう。



 アキンドゥ商会という後ろ盾があったのが一番大きいのだろうが、エルフが長命であまり子どもを作らないことからか、この国は王族はいるが、身分的に貴族と呼ばれるものはおらず、実力主義的な社会が構築されている。


 メロが夜に1人で演奏していたように、騎士団がいるおかげか、治安も良く、平民には住みやすい国だと思う。



 もし他の国であるならば、こうはいかないだろう。後ろ盾なしに新しい技術や営業形態を用いようとすると、そのアイデアを権力者に奪われたりして終わるのがオチだろう。


 それにもし、後ろ盾があったとしても、相手が強引な手に出ることなどがあると、まともに商売なんて出来ない。




 そんなわけで問題もほぼ起こらずに、“森の宿”は新装開店を迎えた。


 そして、宣伝の影響もあり、もの珍しさから入ってきた客は、店で演奏される音楽に心を打たれることになる。


 店で演奏したのは所謂ジャズミュージックである。


 前の世界では禁酒法が出され、非合法にマフィアや権力を持った人々がこっそりと酒を楽しむ中、共に楽しんだという経緯もあるほど、酒と親密な関係がある、心を奪われるその音楽は、エルフ国王都に住む人々の心を魅了した。



 スキルの恩恵もあったとはいえ、粗削りだと言える演奏であったが、娯楽文化があまりない人々の心を掴むには十分すぎるほどだった。



 農家の人々は年中仕事に追われ、娯楽のある生活を送ることは殆どないというのはこの世界でも例外ではない。


 そのせいもあってか、エルフ国王都でも、娯楽文化は庶民にはあまり根付いておらず、娯楽と言えば、食事と酒か、誰かの噂話か、休日に騎士の試合を見にいくことぐらいであった。



 先述したように、前の世界でも酒と音楽は切っても切れない縁であったのだ。あまり娯楽がない状態で、音楽という新しい娯楽を提案したところ、熱狂する人々で溢れたのは自然なことである。



 さらに、赤字であった店の経営を一気に回復させるために行ったのが、昼間に客を取る。ということだ。


 市場は昼間に稼ぎ時であり、昼間には十分な客の量が見込めるというのに、宿屋の食堂スペースを遊ばせておくのも、もったいないと思ったからだ。



 前の世界であった24時間営業しているコンビニエンスストアというのは客のニーズに答えたある意味で究極形態だ。


 流石に24時間の店をやるつもりはなかったが、営業時間によって、異なる客層がつかめることもあり、昼間の営業を行った次第である。



 勿論、他の宿が昼間に営業をしていないのは夜の仕込みであったり、昼を簡素なもので済ませる習慣の方が強く、儲からないからという理由があるわけだが、昼間は安い値段で長く居られる心地の良い休憩場所として提案し、更には、商品の販売を始めることで、客を掴むことが出来た。


 その商品とは、何を隠そうマヨネーズである。



 マヨネーズは卵が一般に流通しているこの国では、簡単に作れて、人気が見込める。現代人が過去や異世界にトリップしたときに簡単に作れる数少ないものの1つだろう。


 店の料理で使う調味料をレシピも紹介しつつ店で売るという方法も、前の世界でそれなりに行われていたことであったがこの世界にはない。現代知識を最大限利用したと言えよう。



 後、昼間の時間帯に夜のお得なメニューを軽く紹介するようにテーブルに置いておくというのも有効な手であった。


 こうすることで昼間これを見て興味を持った人が夜も来てくれるという、有効な宣伝になった。 



 今、挙げた以外にも、前いた世界で行われていた様々な工夫をすることで、店は一躍大人気店になった。


 手軽に出来ることも多いが、前の世界での人々の知恵を活用することが出来た。表に俺の名前は出なかったが、この国のアキンドゥ商会の人々からは尊敬の念を向けられた。



 エリクは開店当初目を回すほどの忙しさであったし、奴隷達も戸惑うことも多かったが、店の雰囲気を見ても、これは一時的なものでなく、安定した利益を今後も見込めるだろうと確信できるものであった。


 そして、商会から手配してもらった屋敷や、奴隷の購入費用など、今はまだ、事業全体としては利益が出ていないが、黒字が現れるのもそう遠くない未来だろう。



 ついでというとアレだが、酒を飲んだ人々からはこの国の様々な情報も得られた。


 というか、この国の情報を集めることがこの国を直接訪れた当初の目的である。


 それを店を運営するという方法はで音楽を広めるという目的も同時にこなしてくれた。最良ではないだろうか。



 ということで、俺はこの国でやろうと思ったことを全てこなし、明日で滞在期間を終え、国に帰る。



「お茶のおかわりいかがですか?」


「貰うよ。」



 紅茶を空になったカップに注いでもらう。



「エリク、ホール入っていいのか?」


「まあ、女の子達に料理も色々教えてるし、今暇だから。」


「そっか。」



 ああ、精霊の儀式とやらは忙しくて見に行けなかったな。



 エリクの幼馴染との恋路も気になるが、特に進展はないようだ。


 まあ、軽くからかったこともあったが、他人の恋愛に出しゃばる行為はあまり好きじゃない。


 今度来た時にでもエリクに聞いてやろう。



「ん? 僕の顔に何かついてる?」


「いや。」



 午後の時間は穏やかに流れていく。

えー今話で書いたことを丁寧に描写しようとするとダレそうだし、登場人物無駄に増えて扱いづらさが増すなぁ。どうしようか。

としばらく悩んでおりまして、リアルのことや、PCの調子が悪かったことも言い訳に、「明日やろう」が繰り返された結果、1か月経っておりました。


処女作ということもあり、描写に重きを置く部分など、試行錯誤が多いですが楽しんでもらえると幸いです。連載止めててすみませんでした。連載再開します。

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