第5話 初陣
俺がこの国に来て1か月が立った。
いよいよだ。オーク国との戦争が始まる。
俺はこの世界に来てから3日目に国民に王としてお披露目された。国民の反応は特になかったというのが正しい。
とっくにに希望すら失っているのが大半であった。
しかし、リーゼさんの説得で、国民のほとんどが多少なりとも戦争に協力をしてくれた。戦い自体には国民の5割は参加している。
リーゼさんの人望がなしたことだ。素直に凄いと思う。後ほんとに何歳なんだリーゼさん。
捕まるぐらいならいっそ死のうと思っていても、実際戦って死ぬ選択をするつもりなのは2割程度だっただろう。
後は自殺を試みるも死ねないのが7割5分。残りは自殺などするだろう。という予想だった。
死ぬ気で説得して6割が少しでも準備には参加してくれればいいなぐらいだったからその想像すら上回っている。
偵察に行かせたところオークの兵士は100人程度らしい。
完全に舐められているがこちらとしては都合がいいというものだ。
オークの装備は90人はミスリルの防具に剣、10人はミスリルの軽い防具に弓という感じのようだ。金持ちめ。羨ましい。
近接兵が多いのはミスリル防具には、弓は効きづらい上、近接戦闘ではサキュバスに負ける要素はないという判断なのだろう。
まあ予想通りだ。リーゼさんの資料による情報が凄い。
来るであろう部隊まで簡単に予想できた。
山脈と森があるがオーク国との物流で整備された道が1つあるので間違いなくここから攻めてくることも予想できた。向こうは完全に此方を舐めてかかっている。
というかリーゼさんはここまで情報を用意して勝てると全く思っていなかったとはどういうことなのかと問い詰めたいレベルではある。
さて、それでは迎え撃つ準備をしようか。
俺は砦でサキュバス達に迎え撃つ準備をさせる。
「ふう……。いよいよか。」
「そうですね。ロイ様。」
「ありがとうリーゼさん。ここまで順調に準備が進んだのはリーゼさんのおかげといって言い。」
「いえ……。これからですから。」
「そうだな“これから”か……。リーゼさんは最初完全に負ける気だったけどな。」
「全てロイ様のおかげです。」
「……そういうのは終わってからにしよう。俺たちも動く。」
俺はルナとサキュバス数人をつれて森の中に入っていった。
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ロイ様が砦を出て森に入っていかれた。
私は砦のサキュバスの指揮を任されている。
ようやくだ。
この一か月勝つための準備を進めてきた。
ミーナに城の案内を頼んだ日。魔王様が来て2日目。城を見た感想を聞くつもりで「どうでした?」と尋ねたところ
「うん。とりあえず一か月後に勝つ目途はついたかな。」
とおっしゃられたのだ。
最初はこの方は愚王なのだろうか、などと少し思いつつも戦争の準備とやらに手を貸した。
そして準備が進み「戦術」を聞いたところ本当に勝つつもりなのだと知った。
ロイ様がおっしゃった「戦術」はとても合理的なものだった。魔族にこんな発想ができる者はいないだろう。この方は相当頭が切れるという感想だった。
ロイ様は「戦略」まで立てていると言っていた。「戦略」とは私にはよくわからないが。
私は予定通りに弓兵を砦の上に配置した。
オークの兵団が見えてくる。
予定の地点までひきつけて弓を放たせた。
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俺はオークの王子だ。俺は今サキュバスを蹂躙するために進軍している。
軍というほどの規模でもない。サキュバスは戦闘能力が低い。その上満足なミスリル装備も持っていないのだ。
もっと少なくても余裕で国を占領できる。
親父もいい役回りをくれたもんだ。
サキュバスは全然壊れない丈夫な玩具だ。好きなものを選びに行けるのだから心が躍る。
オークの兵も精鋭を連れてきているのだ。負けるどころか負傷すら負う要素なんてない。
進軍していくとサキュバスが砦の上から弓を放ってきた。
砦はサキュバス国が栄えていたころに作ったらしい。碌に兵もいないのによくこんなものを作ったものだ。
砦なので財政難に陥っても売りに出せなかったみたいだがな。
俺たちの軍は前にミスリル装備の兵、後ろに弓兵という配置だ。
身体能力が高い俺たちオークは弓の弾道も見えるし、ミスリル防具で簡単に弾けるのでお話にもならない。
露出している顔などにあたらないようにだけ気を付けながら進軍する。
こちらの弓兵にも弓を撃たせる。
こちらの弓は高性能で矢尻がミスリル製だ。サキュバスのショボい鉄の防具を貫ける。
あまり殺さずに捕らえたいところだが弓を撃たせ続けるのもアレなので殺させてもらう。
半分捕えれば充分との指示を受けている。「後は犯した後、殺しても構わない」と。
サキュバスは貴族を中心に分配されるので、これは精鋭の兵士の士気を上げ、貴族に従わせるためだ。
サキュバス国以外の隣国とにらみ合っているときに。魔族の「力がそのまま権力に繋がる」という思想を持ち出されてクーデターを起こされては困るからな。
無駄な抵抗をしやがって。
まあ、この兵の数で楽しむならば、かなり殺してもあまりあるだろうから構わんが。
ククク、バカな奴らだ。こちらの精鋭の兵士の弓が当たりサキュバスが死んでいく。こちらに損害は一切ない。
「うわああああ!」
進軍していると先頭の兵士の叫び声が聞こえた。
「どうした!?」
「落とし穴のようです!かなり深く掘ってあります!」
単なる嫌がらせだ。まあいいだろう。こちらの優位には変わりはない。抵抗にすらなっていないのだからな。
「グハッ!」
「どうした!?」
「穴に落ちた兵を助けようとしたら矢が当たりました!強力な痺れ薬が塗られているようです」
「何!?」
ラッキーパンチが当たったらしい。クソッ!あいつら絶対に苦しめて殺してやる。
下位の毒に対する万能解毒薬は持ってきていたが痺れ薬には効果は効果の範囲外だった。
「落とし穴に落ちたやつは後で引っ張り上げればいい!弓兵はここでサキュバスを撃て!後の者は進軍しろ!!」
兵を進める。
またオークの兵の叫び声が聞こえた。兵が落とし穴に落ちたのだ。
弓が飛んできているから上に集中していてどうしても足元への注意が及ばない。逆に足元に注意すると弓の危険がある。
予想以上の抵抗だとオークの王子は思った。
しかしまだ半分以上兵は残っているし、落とし穴に剣山などがついていようとミスリルの防具があれば多少の負傷はあっても死んではいないだろう。
負傷した兵は2~3人ほどで弓が当たったものだけだ、痺れ薬により一時的に無力化されている。
オークの軍はようやく砦付近までたどり着いた。
砦の扉はオークの力があれば簡単に破れるだろう。お前たちの抵抗もここまでだ。とオークの王子はほくそ笑むのであった。
戦闘は敵視点のほうが書いてて楽しいですね。
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