第54話 一時帰宅
一度書いたのを全ボツにしたので時間かかりました。
メロをお金を払って雇ったので、職場を作ろうということで俺はノワール城へと一時帰宅をしていた。
リーゼはメロと一緒に行動している。
本気で飛んで移動すれば大して時間も掛からず、日帰りできる距離だ。
ワイバーンから取り込んだ「圧力耐性」は良いスキルだ。
耐性の欄でなく、スキルに分類されるこのスキルがなくとも、俺の耐久の数値があるので「圧力耐性」がなくとも“耐える”ことは出来る。
どういうことかというと、気圧などの影響で死にはしないものの、痛覚が無くなるわけではないということ。実際に生身、前の世界のままの身体で受ける痛みそのままでないのだが、体感でなんだか違和感が残る。
この「圧力耐性」は自分の意思で、その違和感のみを消せる。“痛覚を消す”スキルがあれば同じことのように思われるかもしれないが、自分の意思で選択した圧力による影響を消せるというピンポイントなスキルの方が使い勝手がいいだろう。
ハクアとの戦いのときのような戦いのときに、この不快感に意識を少しでも割かれたり、逆に痛覚がなければ瞬時の判断力が鈍ったりするデメリットを考えるとこのスキルのような効果が理想というわけだ。
ちなみにサキュバスは種族の能力で、これを普通に行える。
そんなことを考察していると、もうノワール国が見えてきた。
「光属性魔法」で身を隠す。
警備が数人立っている門を越えると広場で訓練をしている兵たちの姿が見えた。
人数の内訳としては、サキュバスとオークが半々とその他少しと言った感じである。
その他としては以前オーク国にて奴隷だったものにカウンセリングを施してこの国での生活を始めたものの中から軍に入ることを希望したものである。
カウンセリングは患者の話を聞いたり聞かなかったりなどの方法を行いつつも「光属性魔法」を併用して行っており、順調である。
前の世界でも磁気によるうつ病治療などもあったのでそんな感じのものだ。
精神の病に対して「原因はわからなくても脳の異常な部分を治せばそれでいいじゃん。」的な治療法を用いることに対しては色々な意見が出そうなものだが、その話は置いておこう。
倫理的な問題で、もし魔法による治療法を却下したとして、今のまだ不安定な状態の国で介護レベルの精神的病を抱えた人たちを支えることなんて、前の世界の俺が住んでいた国でも高齢化で似たような問題があったことを鑑みるに難しい、というより無理であろうに。
う~む。それにしてもサキュバスは全員で戦いに乗り出したわけであるし、人口はサキュバスの方が少ないのだが、兵ばどの職に就いている割合はサキュバスが圧倒的である。
本人の希望をほとんど叶えて職を決めたにも関わらず、何故か農業などの職に就いている人が少ない。メイドは戦闘メイドと呼べるような、ある程度の力を備えている。
「ハアァァッ!!」
「どりゃぁぁぁぁ!!」
飛んでいる俺にも、剣の素振りをしている声が聞こえてくる。
「こらぁ!しっかりと踏み込んで剣を振れ!! やる気あるのか! ジジイのファックの方がまだ気合が入っているぞ!!」
現在軍のトップをやっているアンの怒声が飛ぶ。
サキュバス特有の下ネタのノリと上手い具合に俺仕込みの訓練法が定着してしまったのは苦笑せざるを得ないが、アンが如何せん幼く見える容姿に合った可愛らしい声をしているのでイマイチ迫力に欠けるように見える。
だが、兵たちはその声を受けて、真剣さが増す。
ふむ。アンのやついつの間に「威圧」を習得したんだ?
魔力を感じるにはスキルがあるわけではないが、なんとなく魔力は肌で感じることが出来、それに気づいたので「鑑定」を使ってみる。
ステータス
名前:アン
種族:サキュバス
職業:騎士
Lv:22(経験値45/220)
年齢:21
HP:1200/1200
MP:1302/1302
筋力:982
耐久:1024
素早さ:1235
称号:なし
魔法:「中級火属性魔法」「初級無属性魔法」
スキル:スキル「農業Lv1(熟練度2/10)」「性技Lv5(熟練度0/50)」「飛行Lv3」「火属性魔法適正」「無属性魔法適正」
耐性:なし
状態:なし
職業がジルと同じ騎士になっているが、ジルより強いな。ステータス的には。
騎士団副団長というにはジルのステータスがいささか低いのではと思ったが、決闘の後に酒場で聞いたところによると、騎士団は騎士学校を卒業したらエスカレーター式に所属するところで、その後に色々な役職に就くという流れがあるらしい。
ジルはある程度、国の噂話や事情などにも明るかったが、そんなに権力があるわけではないようだ。数十歳の幅のある同期の中ではナンバー2の実力ではあるらしいが。
ああ、アンには言伝でミスリルに魔力を纏わせる話をして貰うのを忘れないようにして置かなければ。
俺はとりあえず、ラインハルトの元に向かう。俺のことではなく。
……それにしても、一瞬アンがこちらを見上げたように見えたのは気のせいだろうか。ステータスを見る限りまだ俺の隠れているのを見破るほど気配察知能力が高いとは思えないが……。
「おお、陛下。いつお戻りに?」
「さっきこっそりとな。また出ていくから。」
街の中心部にある建物の一室に窓から降り立つ。
ラインハルトは書類にペンを走らせていた。ちゃんと働いているようだ。
そういえば、最初の頃はオークの顔を見分けられるか自信なかったが、生活するうちに普通に見分けられるようになったな。
人間と同じで体つきから顔まで微妙に違うので見分けるのは思ったより容易かった。
ラインハルトはエナリオスよりは華奢であり、目つきもそんなにきつくない。
エナリオスの方が初見では怖がられるタイプの容姿をしていた。内面は凄く気さくでさっぱりしたやつだけどな。エナリ。
「陛下の国なんだから堂々と帰ってこいよ。」
「言葉遣いに違和感がありまくりだぞ。それ。」
ラインハルトは現在敬語なども勉強中である。王の立場だと気さくに話せる人も少なくなるので、俺は素のままでも心地いいのだが、将来的には言葉遣いがちゃんとできないと困る。
「完全に習得したら俺の前ではある程度崩してもいいからな。」
そう言っておく。
「それで。何故帰ってこられたんで?」
「少しエルフ国で商売でも始めようと思って、あの商人に手伝って貰おうと。」
「こっそりと偵察に行くとか言って大胆なことするん……ですね。早々にこの国がなくなるなんてことにならないといいな。」
「不謹慎なこと言うなよ。」
その辺りは上手くやるつもりだから大丈夫だろう。ある程度計画はしてから来ている。
「それで、ルナさんには会わないんですか? 寂しがってましたよ。」
「いや~なんというかだな……。会うと別れるのがつらくならないか? すぐまたエルフ国に行くし、それなりにかかりそうだから、またしばらく会えないかと思うとだな……。」
「そうですかい。まあ、オレはそんなにとやかく言う気はないんで無理強いはしませんよ。」
あーーー。俺もルナに会いたい。さっさとエルフ国でやることを済ませよう。
「そういえば、ミスリルの剣に魔力を纏わせて戦うやり方があるらしいが、知ってたか?」
「いや、オレは鍛冶には詳しくないです。畑の作物ならある程度は。」
「ミスリルに魔力を纏わせるという話をルナたちとアンに伝えといてくれ。」
「わかりました。」
よし、1つずつ目的を済ませていこう。
「何か報告とかあるか?」
「ええっと……確か……。ああ、ありました。訓練場のところでエルフの姿が見られたようで。」
報告の紙を書類の山から取り出して俺に渡してくる。
ふむ。なるほど。貿易の件でエルフ国から来た商人と一緒に偵察に来ていたのか。
その場を抑えられなかったので追及は出来ず……と。
しかし、見られたのは一般兵の訓練だけのようだし、城に近づいたら流石にうちのメイド姉妹らが気が付かないわけはないからおそらく大丈夫だろう。
「把握した。それでアキンドゥはどこに?」
「今の時間だと商会の建物にいると思います。」
「わかった。ありがとう。」
俺はアキンドゥのもとに向かう。
商会の建物とは、オークの貴族が仕事場に使っていた建物を商会に宛がったものだ。
結構いい建物なのでたいそう喜んでいたのは印象に残っている。
「陛下! わざわざこちらまでお越しくださるとは。なんの御用ですかな?」
「アキンドゥ商会」と大きく書かれた看板を掲げる建物に行くと、すぐにアキンドゥが飛んできた。
ちなみに飛んできたと言っても、アキンドゥは獣人で「飛行」スキルは持っていない。
応接間のようなところに通されたが、やはり、ラインハルトのところの部屋と違い、調度品などが置かれていたり、空間づくりがちゃんとしているな。
「商売の話を持ってきた。」
俺は席に着いて早々に、これからの計画について説明する。
正直、メロと初めて会った後、あんなにすぐ再開することになるとは思っていなかったので、資料は用意していないが、順序立てて、上手く伝えることに努める。
「ふむ。私からはこの計画の成功のほどは窺いかねますが、協力は惜しみません。今の時点でも結構な利益が出ておりますゆえ。」
嬉しそうにアキンドゥは言う。
まだ、海産物の輸入などは行っていないが、オーク達が作る武器や農作物などの輸出だけでもかなりの利益が出ている。
「それは良かった。」
アキンドゥに必要な紹介状やらを書いてもらい、俺はノワール国を後にした。




