第53話 スライム狩り
メロとの出会いの翌日、俺とリーゼは西の森にスライムを狩りに来ていた。
スライムは街では生活必需品である。
宿などにあるトイレの底には俗に「コア」と呼ばれている魔石、スライムの心臓部の破壊されたものが入っており、それが排泄物を吸収する仕組みになっている。
何故なら、スライムに入れると外に匂いなどが漏れないからである。なので、生ごみなんかもスライムに入れられている。
そして、スライムは中にあるコアを潰されてから数日すると消滅してしまうので、定期的に街中のスライムは回収され、ごみ処理場に運ばれるらしい。
あまり疫病が流行ったり、ということを聞かないのはスライムによる廃棄物の処理システムの功績が大きいのだと思う。
旧サキュバス国領には生息していなかったが、旧オーク国領には生息しているようなので現在はうちの国も利用させてもらっている。というか、スライムがいない土地の方が珍しいという話を聞いた。
サキュバス国では俺が来てからはきちんと処理して、肥料にしてみたりしていたのだが。
アイテムバッグがなければ、運ぶのが大変なので薬草採取よりも報酬も高い。ちなみにギルドで手桶を借りたのでこれで運ぶ。スライム狩りを卒業した冒険者がギルドに寄付するそうだ。いいシステムだと思う。
昨日のように大量に持って帰ってもアレなので適当に探すことにする。
運べる量も限られてるしな。
森の中を歩いているだけでもスライムはあっさり見つかった。
――ぷるん。ぷるん。
そう表現されるように小刻みに振動しながら目の前をゆっくりと移動しているゼリー状の生物。膝より少し下程度の高さというサイズ感で、申し訳程度の緑色での擬態に加え、その中にはコアである魔石の赤色が見えている。
「……か、かわいい。」
「かわいいか? これ。」
リーゼがそう漏らしたので俺が聞き返す。 正直顔もない動いている謎の物体とか可愛い要素があまり見当たらないんだが。
俺はとりあえず「鑑定」を使ってみることにする。
ステータス
名前:
種族:スライム
職業:なし
Lv:1(経験値0/10)
年齢:0
HP:10/10
MP:128/200
筋力:5
耐久:5
素早さ:5
称号:なし
魔法:なし
スキル:スキル「魔力貯蔵」
耐性:なし
状態:なし
詳細
スキル「魔力貯蔵」・・・自分に触れた純粋な魔力をMPとして還元し、MPを純粋な魔力として放出できる。MPの上限値以上に魔力を蓄えることは出来ない。
想像はしていたがステータスがとても低い。
子どもが棒を持って叩いても死んでしまうのではないだろうか。
また、気になる点もある。MPの値が非常に高い。そしてこのスキルだ。
ふむ。まだ情報が足りないな。
俺はスライムという「種族」に対して「鑑定」を使う。
詳細
種族「スライム」・・・自然界で魔力があるところに発生する魔物。MPを自然回復させることが出来ない。魔石が本体である。
鑑定すると簡単な説明が表示される。
「鑑定Lv10」を持ってしても「種族」に対してはあまり威力を発揮しない。サキュバスやオークなどの他の種族に使っても大まかな概要しか説明がされない。
どうやら、1つの「鑑定」によって、個々の情報量はほとんど均一にしか表示されないようなのだ。
なので、1つ1つ「鑑定」が出来るステータスの項目はより深く情報が分かるような気がする。だが、「チフの実」を「鑑定」した時に「チフの実の起源」などはわからないように、「鑑定Lv10」であっても万物を知れるわけではない。
ちなみに俺の「魔王」という種族に対しては何も表示されなかった。
何故だろう。
まあ、その話は置いておいて、スライムの話である。
ここまで情報が集まれば簡単な仮説は立てることが出来る。魔力から自然発生してこの「高いMPの値」スキル「魔力貯蔵」や「MPを自然回復出来ない」こと、「自然発生する」ことから推測するに、おそらくスライムは自然界の魔力を均す役割の存在なのではないだろうか。
自然の自浄作用の一環という仮説だ。
まだ根拠も薄い仮説であるし、それを正しいとするならば、自然界でしか育ちにくい植物に対しては説明がつくかもしれないが、旧サキュバス領にスライムがいなかったことなど、謎も深まるばかりだ。
しかし、せっせと働きアリが食べ物を運ぶようにスライムは魔力を運んでいると言う風に見てみると、多少微笑ましく感じなくもない。
さて、思考を巡らせるのはとりあえずこの辺にしておこうか。今の仮説が正解でも、スライムを狩ったところでまた自然発生するようなので、さして問題はないだろう。
感覚を強化してみても、森には大量にスライムがいるのがわかる。
「すまない。考え事をしていた。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
物思いにふけるのは癖のようなもので、リーゼも慣れているので特に声を掛けては来なかったが、スライムはせっせと俺たちから遠ざかって行っている。
――シュッ。……バキン!
俺はナイフを投げてスライムの魔石に当てて破壊する。
「ストライーク。」
なんとなくそう言ってからスライムの回収のため、スライムのもとに歩いていく。
先ほどリーゼが「可愛い」と評価したスライムを狩ったわけだが「可哀そう」などと言ったり、思ったりするタイプではないだろう。リーゼも俺のことをよくわかっているように、俺もリーゼと伊達に1年以上過ごしてはいない。
前の世界ではモンスターを狩るゲームをしていた女の子が「このモンスター可愛い!好き!」と言って、全身そのモンスターの装備で揃えていたのを見たが、装備を揃えるのに100匹近くそのモンスターを狩ってるというのを想像するとそれはそれで「ええ……。」という感じである。
とは言っても、ゲームと現実の違いはあるな。混同するのは良くない。
「おお。」
倒したスライムに近寄ってみると、俺たちを横切った時より2回りほど小さくなっていた。
魔石を潰したからだろうか。
スライムを見たときに、持ってきた木桶だと1匹入れるのが精々な感じで不思議に思ったが、そういうことかと合点がいった。
「魔力貯蔵」のスキルを取り込んだ後、スライムを木桶に入れて再び散策を続ける。
あれから2匹ほどスライムを狩ったところで付近に人がいることに気づく。
スライムを仕留めている、ナイフを投げる「投擲」を見られなければ別に会っても問題ないだろう。
そう思っていると案の定、その人はこちらに近づいて来て、顔を合わせることになった。
「あ。」
「あっ!」
そこにいたのはメロだった。そういえば昼間はスライムを狩ってると言っていたな。
「ハルトさん!これ返そうと思ってたんです。持ってて良かった。」
ラインハルトを縮めてハルトなのだろうか。メロは昨日俺が渡したお金の入った袋をこちらに突き出している。
「なんで?」
「受け取れませんよこんな大金!」
そう言われて、昨日稼いだ金額をほぼそのまま渡したものが、メロの尺度だといささか多かったのだろうと気づく。
「正当な報酬だと思って俺が額を決めたんだから気にしなくていいよ。」
「いや、私なんかの演奏にこんなに価値ないですって!」
自信がないのか俺が渡したお金を受け取る気はないようだ。
俺が決めた価値に文句をつけられても正直困るだけだから素直に貰ってくれればいいのに。
向こうからしてみれば、施しを受けているような印象なのだろうが、それにしても、相手が奢る気になっているときは、素直に奢られておいた方が好印象だったりする。
どうしたものかと考えていると、ここで昨晩少し考えていた計画について、名案を思い付く。
「じゃあ、こうしよう。メロに頼みたいことがあるから、その前払いってことでどう?」
「あ、はい……、そういうことなら……。」
メロは意外にもあっさりと了承してくれた。
「で、でも私に出来るこんな大金貰えるような頼みなんて……。あ、ああ!」
突然顔を真っ赤にしてあたふたし始めた。
「そんな。無理です無理です! 私そんなことまだ経験ないですし……。」
「いや、そういうことじゃなくて、多分勘違いしてる。」
勘違いしている内容は容易に推し量れるが、俺がいきなりそんなこと頼むような人に見えたのだろうか。
「何が勘違いなんですか!? もしかして、もっと凄いことを……。」
「落ち着けって。」
「あの……。この方は……?」
リーゼが痺れを切らして、俺に尋ねてくる。
あー、もう。これ収集つくのに時間かかるやつだわ。
物語の“起”の部分でリアル時間がかなり掛かっているのは本当に申し訳ないです。
いつ更新速度が上げれるかわかりませんが、頑張って書きますから!




