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第51話 決闘と初依頼達成

 俺とジル――エルフ国騎士団副団長との戦いが始まる。

 リーゼが木陰でサンドイッチを食べながら見守っている。



「これはミスリル製だけど、いつも騎士団の訓練で僕が使っているものだ。刃は潰してあるから心配はいらない。」


「ありがとうございます。」



 俺はジルから鞘に入った剣を受け取り、それを抜いて構える。刀身は銀色に輝いている。


 ジルも同じく剣を抜いた。構えることはせず、自然体で立っている。



「1回でも攻撃を当てられたら君の勝ちで構わないよ。」


 自信家なのかと思える発言だが、騎士団副団長が冒険者見習いを相手にするのだから普通はこのような態度で当たり前か。



「それでは、行かせていただきます。」



 俺はそう言うが早いか、一気に距離を詰める。


 勿論のことだが、ステータスは違和感のないぐらいに抑えている。田舎暮らしで森で狩りをしていたらこんなものかといった程度である。



――キィン!



 剣は全く構える素振りを見せなかったジルに簡単に受け止められる。流石は「剣術Lv4」だけのことはある。


 そして、ジルが振るう剣は滑らかな動きで俺に攻撃を当てに来る。



 俺はとっさに下がって回避した。今の攻撃が制限されたステータスで躱せたのは単純な経験と言っていい。


 俺も戦いのために訓練はしてきているので、剣の太刀筋は見える。


 なので、後は上手く身体を使えば彼の剣も避けることは出来る。



「くっ……!」



 俺は制限された身体能力で回避したため、体のバランスを崩す。


 当然彼もそれはわかっているだろう。追撃が来たら拙いと思ったが、それはなかった。



 俺は今できる限りの速さで態勢を立て直した。



「センスあるよ。とても冒険者になったばかりとは思えない。」


 ジルは余裕の表情でそう言う。自分の優位を確信したようだ。


「その腕ならあの引ったくりを捕まえるのに何も問題はなかったはずだ。君は相手の力量を見分ける目を養ったほうがいい。」


 ふむ。昨日のことで文句を言ってこないところを見るに少しは冷静になったようだな。



 正直この制限したステータスでジルに攻撃を当てるのは難しい。


 だが、1発ぐらい、食らわせてやろうじゃないか。


 リーゼとは、どうやって事を運ぶかという打ち合わせは済ませてある。


 少しばかり長丁場になりそうで退屈させるだろうが、リーゼには、寛いでいて貰おう。



 俺は再び攻撃を仕掛け、反撃に対して、回避行動を取る。


 体勢を完全に崩してしまったとき、ジルは確実にその隙で1撃入れることが出来るが、追撃してこない。


 なぜならそのことを俺が1番わかっているからだ。



 少しずつ攻め方を変えながら、俺はジルに何度も何度も攻撃を仕掛ける。


 数回打ち合えるようになるが、勝機は見えない。




「認めるよ。君ほど諦めずに僕に向かってくるやつはうちの騎士でもそうはいない。どうかな?騎士団に見習いとして入らないかい?」


 そろそろ小手先の攻め手がなくなってきた頃、ジルはそう言ってきた。


「お誘いは嬉しいですが、冒険者としてやっていくと一度決めましたから。」


「そうかい。残念だよ。そろそろ攻め手も尽きただろう。最後に僕の本気を少しだけ見せて終わりにしようか。サービスだよ。」


「ええ。では次で最後にしましょう。」


 そうか。さて、俺もここで仕掛けてみるか。


 本気を出すとは言ったが、ジルは自分から攻めては来ないようだ。ならば遠慮なくこちらから行かせてもらおう。



――ギィン!



「む!」


 ジルが声を漏らす。俺は狙いを身体でなく、剣に変えた。


 今、最も障害となっているのは「剣術」だ。


 精霊が語っていたようにエルフは人間よりも身体能力に劣る。


 つまり、レベルが上がり、底上げされたといってもステータスの身体能力の数値の伸びは小さめである。つまり、身体能力のみの戦いになれば差は縮まる。


 人体の構造的に向こうが力を入れにくいように調整して剣を当てることによって、「剣術」の関係ない、競り合いに持って行けるということだ。



「本当に驚いたよ。こんな戦い方見たことがない。だが、僕も本気で行くと宣言したからね!」


 自分が全力で力を入れられず、両手を用いても、互角で剣で押し合っている状況に驚いたジルだが、その顔には余裕が見て取れる。



 俺の知らない何かがあると確信したが、特に対応が出来ることもなく、ジルに次の手を打たせてしまう。



――バキッ!!



 ジルの持つミスリルの剣に違和感を感じると同時に俺の剣が折れた。



 剣が不良品だったわけではない。何をしたんだ!?


 何が起こったのか確かめたいところだったが、瞬時に俺は状況を判断する。


 ここで引くわけにはいかない。今は攻める時だ。



 俺は折れた剣をすぐに手放し、素手で攻撃をする。



 俺の拳とジルの剣が同時に止まる。



 俺の拳は――――ジルに届いていた。




 ジルは俺の身体に当たりそうなギリギリまで来ていたが、俺の拳が当たったのがわかると「剣術」のスキルだろう。剣を止めていた。


「……まさか当てられるとは思わなかったよ。君の勝ちだ。」


 彼はそう言って剣を鞘に納める。


「君の強みはその判断力だったようだね。見抜けなかったのは僕のミスだよ。」


 素直に俺に称賛の言葉を掛けてくる。


 剣を交えて心が洗われたようだ。というか、昨日のが、一時の感情で行動した失敗に過ぎないということか。


「いえ、剣を折られたときは凄く焦りました。何をしたんです?」


「ミスリルの剣は魔力を込めると硬くなる性質があるんだよ。剣に纏わせながら戦うのは、魔法を扱える人でも難しいことだが、覚えておくといい。」



 ……知らなかった。


 魔法を扱えることが前提で身につける技術だからなのか、オークで使っているやつを見たことがなかったからだ。


 早くうちの国の軍にも教えなければ。



「では約束通り僕の出来る限りのことはするが、何がいい?」


「もう決めてあります。」


 先ほどの会話で確信した。俺がジルに出すべき要求は。



「夕食をご一緒してもいいですか?」



「…………え?」


「尊敬する騎士団副団長のジルさんと夕食をご一緒したいのですが、やはり副団長様はご多忙の身。ダメでしょうか?」


「……いや、それぐらい構わないよ。今日にでも。」


 一瞬固まったジルだったが、快くこちらの要求を呑んでくれた。


「そうですか!ありがとうございます!」



 こうして、ジルとは後程、再び待ち合わせをすることになった。今のところ計画通りである。



「お待たせ。退屈だったでしょ?」


 座ってずっと俺が戦っているのを見ていてくれたリーゼに声を掛ける。


「いえ、面白かったですし。」


「俺がやられてるのがか?」


「そういうことではないです。戦闘の参考になりました。」


「そうか。」


 個人の戦闘力が前の世界とは規模や重要性が段違いなので別段おかしいということもないのだが、 宰相の立ち位置なのに幾分武闘派の発言をするのは不思議なものだな。



 そして、再び森に入ってしばらく歩いてみると、チフの実を発見したので「鑑定」で実の成長具合が良さげなものの収穫を行った。




「こんなにあの森で薬草採れるものなの!?」


 冒険者ギルドに戻ってくると案の定セレスに驚かれた。

 まだ少し早い時間帯でギルドには人があまりいない。


「数日前から貯めてあったとか?」


「そんなことしてたら、枯れて干からびてるだろ。」


 人の手で育てられないと言われているのだから数日前に採ったものの状態を保つのは難しいだろう。

 ああ、「インベントリ」を使えば可能だな。


「こんなに採ってきた人、初めて見たわ。本当にどうやったのよ。」


「普通に探すだけですよ。強いて言うなら……運?」


「それが本当なら、薬草採りで人生の運使い果たしたんじゃない?」


 適当に軽口をたたきながら、依頼達成の手続きをする。



「そういえば、口調。それでいいのか?」


「はぁ……。あなたたちにはもう諦めたわ。ほら、受付嬢って冒険者に言いよられたりするじゃない? だから距離を保つために口調には気を使っていたのだけれど。」


「無害な男認定をされるのも複雑な気分だぞ。」


「いや、あなたにはリースちゃんがいるじゃない。」


「……私、妹ですよ?」


「あ!そうだったわね!!」


 ……意識はされていないかもしれないが、兄妹の演技に違和感を持たれているのかもしれないな。



「後、これって買い取って貰える?」


「…………流石に驚いたわね。ホワイトラビットなら大丈夫よ。買い取らせてもらうわ。」


「ホワイトラビットを狩ってくるのって珍しいのか?」


「臆病だし、すばしっこくて、罠を使っても警戒されてしまうから、弓で射るしか主に狩る方法はないと言われているわ。所謂、高級食材よ。どうやったの?」


 マジか。やってしまったかもしれない。


 言われてみれば、うちの国では魔物も人里には入って来ることはなかったが、森の中にいる魔物は幾分俺やサキュバス達への警戒心は薄かったような気がする。


 「投擲」スキルで特に考えなしに仕留めていたのは失敗だったか。


「田舎暮らしだったから、ナイフを投げる技を父から教わっていたからそれでやった。」


「本当に? 一度見てみたいわね。」


 胡散臭いと言いたげな視線を俺に向けてくる。



 それにしても弓で狩る魔物は高級食材か。


 普通に考えると、魔物なんて呼ばれるものとの戦闘で命の危険を考えると遠距離武器の方が使われるだろう。誰が好き好んでリスクを高めるのか。


 だが、それはステータスというものがあると、話は変わってくる。


 「弓術」のスキルを鍛えるより、弱い魔物などを近接武器で仕留めてレベルを上げていった方が入門として、てっとり早い。西の森にはスライムといったほぼ攻撃力のない魔物などがいるようであるし。


 レベルが上がれば近接武器がより上手く扱えるようになるので、「弓術」を扱うものは少ないといった感じだろう。



 うちの国では弓を使えるものは多いが、それはさまざまなメリットなどからそうした結果で例外である。



「自分だけの技術をもっているなら、ランク昇格も早いかもね。お金は預けておく?」


「いくらになるんだ?」


「薬草の報酬と合わせて銀貨1枚、銅貨42枚よ。」


「え、そんなに!?」


 エリクの宿に1週間近く泊まれる額だ。駆け出しの冒険者としては1日で稼ぎすぎだろう。


「高級食材だって言ったじゃない。城で出されるような料理によく使われるのよ。」


「これで俺も有名になったりするのかなぁ……。」


 目立たず冒険者をやるよう気を付けていたはずなのに予想外のところで失敗してしまったかもしれない。


「仕留め方が特殊なだけだから私が広めない限り有名にはならないんじゃない? 弓で仕留めても血抜きでナイフ入れるから多分見ただけじゃわからないわよ。何? 有名になりたいの?」


「いや、じゃあもっとドラゴンとか倒してから有名になりたいから広めないでくれ。」


「……そう。まあ頑張りなさい。」



 時の人みたいになったら拙いなと思っていたが、ギリギリセーフかな。

更新速度が凄く落ちていますが、そのうちなんとか上げられるように頑張ります。

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