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第47話 なんか決闘することに

 これは事前に調べてきたことだが、エルフ国王都は王城を中心としている円形都市であり、城の防備のため一直線に城へ向かう通りは少なく、かなり入り組んだ造りになっている。


 なので、エリクには比較的わかりやすい大通りを通るルートで精霊神殿までの道を教えて貰った。


 一応方向感覚には自信があるのだが、初日であるし、わざわざ裏道を通って行かなくてもいいだろう。



「ちょいとそこの美人な彼女さん連れてるカッコいいお兄さん。」


 俺とリーゼで精霊神殿へ向かうためを歩いていると、露店の客引きをしている女性に声を掛けられた。


 俺は本屋での乱読する本を探すときやウインドウショッピングが主目的のとき以外は、店で自分の目的の物に一直線で向かうタイプなので、客引きはスルーして来たのだが、目が合ってしまったので半ば仕方なく足を止めた。



「リースは妹ですよ。」


「そうなの!? 美男美女で絵になってたわよ。」


「そうですか。ありがとうございますお姉さん。」


「やだもう。お姉さんだなんて。」



 そう言って照れているが、年齢を「鑑定」して、エルフの年齢を人間の年齢に脳内で換算してみた結果、少し歳はとっていても、見た目は年齢より十分若く見える。



「チフの実買っていかない? いいのが入ったのよ。少し割引しちゃうわ。」


 さっそく商品を勧められる。トマトのような見た目をしているこの果物のようだ。


「これってどこが産地なの?」


「この街から少し西に行ったところね。あ、でも教えたんだから直接そこに取りに行くとか言わないでよ。」



 その女性は俺の腰に下げている鉄の剣を見てそう言う。


 冒険者ならば町中でも常に護身用で剣を身に着けているものも少なくはないそうなので俺は今腰から剣を下げている冒険者スタイルである。


 おすすめされたのは初めて聞く名前の果物だが、冒険者に採取依頼を出して入荷したものなのだろう。



 この世界では農業は行われているのだが、成長過程で魔力が作用している植物を人工的に育てるのは難しかったりする。



 ちなみに実験的に色々育ててみた結果「黄金の稲」ほど進化すれば成長過程での外部からの魔力の作用を必要としないとわかった。


 まあ、何故稲があれほど異常に進化していたかは今のところ謎であるが。



 というわけで、話が逸れたが、魔力を必要とする植物は人工的に育てるのが難しいものも多く存在しており、それの採取を冒険者ギルドに所属するものが請け負ったりするということだ。



 冒険者ギルドで掲示板の前を通るときにちらっと見たところ薬草採取の依頼を見かけたが、人工的に栽培できるのならば初心者にありがちな薬草採取の依頼なんていう、草を採ってくるだけで報酬がもらえる依頼など存在しないだろう。


 採取依頼もちゃんと利害が一致して成り立っているのだ。



「聞いたからにはちゃんと買いますよ。5つ貰えますか?」


「はい。まいどあり~。懐の広いお兄さんはきっと出世するよ。銅貨4枚ね。」



 銅貨を支払い、買ったチフの実というのは懐から取り出すように見せて「インベントリ」から袋を取り出してそこに入れてもらう。


 そして、チフの実とやらを「鑑定」してみる



詳細


 「チフの実」・・・魔力が作用して育つ植物の実。皮ごと食べられる。春の終わりから夏の始めが旬。



 ナイスな情報をピンポイントで教えてくれる「鑑定」はやはり便利スキルである。今は春の終わりごろに位置するので今がちょうど旬で間違いないだろう。



「リーゼも食べる?」


「いえ……。できれば後でいただけますか?」



 リーゼには遠慮されてしまったが、露店が立ち並ぶ場の雰囲気もあり、食べ歩きするのも趣があっていいので。俺は食べ歩きを満喫させてもらう。


 俺は買ったチフの実を齧りながら、リーゼと精霊神殿に向かう。



 それにしてもこのチフの実。食感は梨に近いのに味は柑橘系。新感覚である。



 他にも客引きと目を合わせないように気を付けながらも露店を見ながら歩く。


 明日この店入ってみようかな。なんて思いつつ。




「引ったくりだ!!捕まえてくれ!!!」


 客引きの声に交じって違う雰囲気のものが聞こえてきたかと思うと、前から男が走ってくるのが見えた。


 リーゼは俺を窺うような反応をしたが、やることは決まっている。



 俺はその引ったくりと思われる男に対して――チフの実を齧ったまま、無関心な様子ですれ違う。



 当たり前だ。ヴァイスでも気づかないぐらい絶妙に発した「魔力ソナー」で確認してみると、男を追い始めている剣を腰につけた人たちが確認できた。


 おそらくこの国にいるという騎士団員だろう。いますれ違った男のステータスは一般人並であるし、ここで俺が出しゃばっても面倒なだけだ。事情を聴かれたり、少しでも拘束されるなんて御免である。



 確かに騎士団の情報は収集したいが、直接面識を持つとリスクの方が大きいだろう。



 男とすれ違って数秒後、同じ服に身を包み、剣を腰から下げている人たちともすれ違った。「鑑定」でステータスを見ると、それなりのステータスをしていることが窺える。


 ノワール国の軍で言うと中間に位置する程度だろうか。勿論リーゼなどは除いて、アン以下の兵での話だが。



「騎士団ってやっぱり制服があるんだね。」


「お兄様はあのような服がお好みで?」


「……結構カッコ良かったと思うよ。」


 まだ慣れていないため、リーゼにお兄様とか呼ばれると一瞬思考が怯んでしまう。


 「魔力ソナー」で男と騎士団の追いかけっこの様子を追っていたところ、まもなく男は捕まったようだった。



 そしてその後、後ろからさっきの騎士団員の1人が走ってくるのを確認した。


 嫌な予感がしないでもない。段々とこちらに近づいてくる。



「おい貴様!」


 あー。これ話しかけられてるの俺っぽいなぁ……。出来ればスルーしてやり過ごしたいが、後の流れを推測すると素直に反応するのが最善か。


「なんでしょう?」


 振り返ってみてみるとロングヘアーの男がそこにはいた。 一般にイケメンと呼ばれるだろう見た目をしていて、雰囲気だけで言うなら「プライドが高そうなお坊ちゃん」と言った感じだ。


 この推測が当たってほしくはないのだが。


「その恰好を見るに貴様も冒険者の端くれだろう。何故あの男を見逃した。」



 どうやら今回の推測は当たってそうである。


 それにしてもこんなやつ実際いるんだなぁ。前の世界でこんな知り合いはいなかったので新鮮であるが、如何せん今は「めんどくさい」の一言である。


 リーゼに目配せして、俺1人で対応することを伝える。



「そりゃ……だって、俺は田舎から出てきたばかりの新人ですし。戦闘能力も皆無ですからあの男がナイフとか持ってたらと思うと動けませんでしたよ。」


「嘘をつくな。お前は余裕そうにチフの実を食べていたじゃないか。」


「そんなことありませんよ。少しでもおかしな様子をみせて、あの男が俺の剣を見て逃走の障害になると確認したら排除に動くかもしれないじゃないですか。俺にとってあれは最善の対応でした。」



 適当に口から理屈を立てる。俺の強さには気づいていないようなので早くやり過ごそう。


 そもそも無償で他人のためにリスクを払うのは誰にでもできることではないし、こいつの言ってることは無茶苦茶である。



「…………だとしても誇り高きエルフならばあそこで立ちふさがらないでどうする!!」


 既に向こうの理屈が力尽きているが、ここで穏便に話を終わらせないところを見るとやっかいそうだ。


「そうですね。すみません。今後鍛錬に努めます。」


 感情論に対しての必殺技。同調を使ってみる。


「あ、ああ……。」


 それは上手く相手のペースを崩すことに成功した。



 しかし、


「この僕、エルフ国騎士団副団長のジルと決闘しろ!その心をしっかり入れ替えてやる!!」



 感情を自分が納得した形で着地させないと気が済まないらしい。子どもかよ……。



「俺も忙しいんですが。」


「明日で構わん。僕も今日は仕事があるしね。」


 お前の予定なんて聞いていないんだが。


「断わったら騎士団の詰め所で引ったくり事件についての事情聴取をさせてもらうからより、時間を取られるだろうね。」


 完全に職権乱用してるなこいつ……。


「決闘というからには勝った負けたで何か発生するのでしょうか。」


「まあ、僕は騎士団副団長だし、一撃でも加えられたら君の勝ちでいいよ。僕に出来ることなら出来る限りのことはしよう。」


 自信があるようなので改めて先ほど軽く目を通したステータスを再び「鑑定」してやる。



ステータス

 名前:ジル


 種族:エルフ


 職業:騎士


 Lv:10(経験値78/10)


 年齢:29


 HP:350/350


 MP:710/710


 筋力:200


 耐久:200


 素早さ:240


 称号:なし


 魔法:「初級火属性魔法」「中級風属性魔法」「初級無属性魔法」


 スキル:スキル「剣術Lv4(熟練度32/40)」「風属性魔法適正」「火属性魔法適正」「無属性魔法適正」


 耐性:なし


 状態:なし



 俺の感覚で言わせてもらえばステータスは低い。同じレベルのサキュバスよりも。MPが多めなのはエルフだからだろうか。


 剣術はかなりのレベルである。精鋭のオークが「剣術Lv3」であったことを考えれば。



 はぁ……。仕方ない、避けられないことだと思って諦めよう。


 巻き込まれたからには上手く事を運ぶために思考を早く切り替えるか。



「わかりました。その代わり、なるべく人目につかないところでやりませんか?」


「騎士団副団長の僕に負けることは別に恥ずべきことではないぞ。だが、いいだろう。条件を飲もう。」



 こうして、時間、場所を約束して、その男、ジルと別れるのであった。

テンプレが好きでやりたいと思っていたのですが。普通にテンプレの面倒事って主人公が少し頭を使えば回避出来るんだよなぁ……。と思いながらもなんとか書いていたらこんな感じに。

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