第43話 エルフ国へ出発
「ロイ様!何故私はご一緒させていただけないのでしょうか!?」
私は地名を決める会議の後、廊下でロイ様を問い詰めていた。
ロイ様はエルフ国にこっそり視察に行かれるらしいと聞いたからだ。リーゼ様をつれて。
「ルナ……。国をあまり開けるのは避けたいし、いざというときにしっかりしている人に残っていて欲しい。それにエルフ国に行って、男1人に女2人で出歩いてたら目立つだろ。しかもこんな美人と。」
「美人……。」
ロイ様から美人って言われて思わず頬が緩みます。
……はっ!いけない、いけない。ここは私が怒る場面です。
「いや、じゃあリーゼ様でなく私でもいいはずです!!」
「今のリーゼをデスクワークから放したいのと俺の目的に合ってるからちょうどいいかなっていうのもある。わかるだろ?」
ロイ様の言うことはわかります。リーゼ様の様子を見たら休暇をあげたい。息抜きをさせてやりたいとは思います。
ですが私だってロイ様のことが好きなんです。
なんかおざなりにされている感じがしてどうしても穏やかではいられません。
「むう…………。ですが!!」
「安心しろって。俺はお前のことが好きなのは絶対だ。」
ロイ様はまた私に甘い言葉を囁きます。港町――ドラゴンポートにいたときなど、普段は自分の気持ちを直接言ってくることは少ない人だと思います。
しかし、私へ向けられる気持ちはいつも感じることが出来るので不安はあまりありません。
でも、その直接的に想いを伝える言葉をここぞというときにちゃんと伝えてきます。思わず嬉しくなってしまいます。ロイ様はズルいです。
「……わかりました。でも、リーゼ様とそういう関係になられたとしても私が1番なんですからね!」
ロイ様が元いた世界はわかりませんが、この世界は一夫多妻制が割と普通に存在します。
平民で見られることは少ないですが、王族ならよくあること。というかない方が珍しいぐらいです。
なので、ロイ様には王としての振る舞いとして、女の人が寄ってくるのはロイ様と結ばれている私としてもそこまで嫌なことではないわけですが。
それでも他の女の人より少しでも気持ちをを向けられたいものです。
「それに……一度ベッドに誘われはしたが、リーゼは俺に尊敬の気持ちこそ抱いてはいてもあまり恋愛感情はないと思うぞ。なんていうか。他人とギリギリのところで壁を貼ってるみたいな。」
はっとさせられました。リーゼ様が他人と壁を貼っているというのは長年一緒に働いていた私だけが感じていたものだと思っていました。
ミーナには話したけれど。「そうなの? お姉ちゃんの気のせいじゃない?」とか言われてしまったので特に気にしないでいましたが。
「まあ、短い俺の人生で培った勘というやつだから信用のほどはわからんが。」
ロイ様はやはり凄い王様です。常に全体を見据えていらっしゃるかと思えば、しっかりと1人1人に目を向けていらっしゃいます。
私が為しえなかった、リーゼ様の心の壁を破っていただける人になられるのかもしれませんね。
思わず嫉妬してしまいます。1番の座は私です。そこは譲れません。
「わかりました。ここでロイ様の帰りをまっていますね。」
「頼む。治癒の魔法が使えるように魔道具は置いて行くからな。リーゼがいないと訓練しているミーナたちが怪我したとき治せるやつがいなくなってしまうからな。」
初めからロイ様の決定を覆そうとは思っておらず、少し意地悪な文句を言ってやろうとしただけだったのですが、ロイ様に“好き”と言っていただけたし、結果的によかったと思う私なのでした。
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「それじゃあ行ってくるよ。」
「お気をつけて。」
「お土産よろしくです!」
「……私もお土産。」
「行ってらっしゃいです、ご主人!」
地名が決まった翌日。早速俺とリーゼはエルフ国へと出発した。
もうちょっとゆっくりしたかったが、そうするとリーゼがデスクワークに戻りそうなので仕方ない。
まあ、息抜きも兼ねているし、
この国の方向から入国したら目をつけられそうなので東側から旅人のふりをして入国ことにしたのだ。
ということでスキル「飛行」を使ってかなりの高さまで上がり、移動する。
景色が開けて広大な世界を目の当たりにする。飛ぶっていいなあ。
「王都があんなに小さく見えますね。」
「絶景だよなぁ。」
空中の環境に適応するため、「風属性魔法」で調節する。
サキュバスはこの環境の変化に魔法なしで適応できるので羨ましい。
どこかに種族スキル持ってるいい感じの魔物いないかなぁ。
「ロイ様。前方に何か見えます。」
「え、この高さでか。」
リーゼにそう言われ、少し驚いた後、視力を強化して見てみると竜もどきのような見た目をしている。
俺は相手の姿を確認したので「鑑定」を発動する。
ステータス
名前:
種族:レッサーワイバーン
職業:
Lv:3(経験値10/30)
年齢:10
HP:22000/22000
MP:20000/20000
筋力:4000
耐久:2000
素早さ:5000
称号:なし
魔法:なし
スキル:スキル「爪術Lv4(熟練度7/40)」「火の吐息Lv2(熟練度9/20)」「飛行Lv3」
耐性:なし
状態:なし
ステータスは今まで見た魔物の中では高い方だ。
だが、ハクアと比較するとなぁ……。
ドラゴンとワイバーンの違いはよくわからないがレッサーとついているあたり弱い方ではあるのだろう。耐久が低い。
今俺はハクアから貰った魔石に日々魔力を注いでいるため「インベントリ」にかなりの魔力量のストックがある。正直ハクアクラスのやつが来ても負ける気はしない。
とはいってもリーゼがいるので本当に来られたら拙いが。
「よし。あいつを狩ろう。」
「わかりました。」
リーゼが多少身構える。リーゼでも倒せそうなステータスをしているわけだが。
さて、リーゼに任せようかと思ったし、今回はリーゼの息抜きだし俺がやるかな。
「俺がやるから見てていいぞ。氷槍!」
俺は早速右手に水属性魔法で氷の槍を形成する。
「よっと!!!」
魔法で放つ工程までやってもよかったが、筋力のステータス数値にものを言わせて投げてみる。
――シュッッ!!
その槍はまっすぐレッサーワイバーンの頭部を打ち抜き、泣き声を上げることもなく即死させた
《スキル「投擲Lv3」を獲得しました。》
予想してた通りにスキルが手に入ったが、レベル3で手に入ったことに驚いた。
かなりの距離を狙ったしそれがスキルの入手時に反映されているのだろうか。
まあ、槍の速度がかなりのものだったせいでレッサーワイバーンは特に動く的でもなかったわけだが。
俺は「飛行」の速度を上げて落下を始めるレッサーワイバーンに追いつき、そのステータスを取り込んだ後、「インベントリ」に突っ込んでリーゼのもとに戻った。「火の吐息」はハクアの火属性版の劣化っぽいしこのままでは使う機会はあまりなさそうである。
ちなみに種族スキルだが。
《種族スキル「圧力耐性」「魔素呼吸」を獲得しました。》
詳細
種族スキル「圧力耐性」・・・圧力に特に耐性を得る。その度合いはステータスの耐久の値によって変動。
種族スキル「魔素呼吸」・・・魔力で呼吸が行える。空気中の魔力を用いることも可能。
「圧力耐性」なんてスキルがあるのか。ハクアの時は比較的浅いところに呼び出して戦ったから必要なかったが、深海に潜るときもこれで安心だ。
後、レッサーワイバーンは「魔素呼吸」で呼吸していたらしい。ハクアもそうなのかな。
種族スキルでゴチャゴチャするのは嫌だから「水中環境適応」「空中環境適応」というスキルにまとめておくことにする。
「……ロイ様ってどのくらい強いのですか?」
「それなりには?」
リーゼはハクアと戦ったことも話に聞いただけだったので驚いているようだ。
あれぐらいのやつを一撃で仕留めたぐらいで驚かなくても……。
そう思ったが俺はすぐに気が付いた。
あ、ワイバーンを回収してここに戻ってきた、俺の移動速度か。
麻痺していた感覚を冷静に見てみると、あの距離を一瞬で詰めるのは並の速さではない。おそらく音速近い速度が出ているだろう。
よく考察してみると、音速に近い速度で移動しても、周囲への被害がないことや俺の肉体の仕組みを考えるとその辺りは謎が多い。
まあ、わかりやすいところで言うと、ハクアが人化したとき、質量も見た目通りになっているようであることなど、普通に考えたらおかしい。
魔法やスキル、ステータス数値絡みになってくると俺の知らない法則か何かが働いているのは間違いないだろう。
そもそも、先ほどのワイバーンなどのドラゴンや、サキュバスもだが、あの質量を持ってして翼で飛行することは物理的に不可能である。
しかし、実際、飛行出来る上、俺は翼なしで飛行できていることなど、考えれば考えるほどわからないことだらけである。
そうして、自分でもよくわからない能力をリーゼに驚かれたりしながらも、俺とリーゼはエルフ国に向かって飛んでいくのであった。
ぶっちゃけルナを置いて行った作者的な理由は内容は未定ですが姉妹回をやりたいからに他なりません。
11/1「火の吐息」について全く言及してなかったので一応軽くしておきました。




