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第33話 貿易と商人

「はぁ。国の上役と話がしたいと。」

「そうでございます。」


 私は今、最近出来た国――ノワール国を訪れている。


 私の名はアキンドゥ。獣人という種族で、私は猫耳を持っている。

 商会「アキンドゥ商会」を設立し、私1代でかなり大きな商会にまで成長させた。


 今回はあのオーク国がなくなったという大きな知らせを受けて、ここを訪れている。

 あの商人の国がなくなり、商人である貴族が皆処刑されたと聞いた。


 国の発展のために貿易をすることをやめはしないだろう。


 よって、偶然エルフ国を取引で訪れていた私が、千載一遇のビジネスチャンスを得ているということだ。



 あの弱小のサキュバス国に商売のノウハウを持った人はいないと思われる。


 今回の商談ではここに商会の支部、いや、本部を置き、この国の貿易の大部分を任せられるところまで行くつもりだ。


 貿易の件はは向こうにとっても急いで解決させたいはず。かなり有利な商談が予測できる。



「確認が取れました。宰相様が会われるそうです。」


 宰相と来たか。気を引き締めないとな。


 それにしてもこの門番、見た目幼すぎないか?

 サキュバスはエルフ同様、寿命が長いと聞くが……。


「何かございましたでしょうか?」

「いや、失礼。凄く若く見えたのでね。」

「これでももう21歳です。」

「そうなんですか。」


 旧オーク国の王都の門番をしていたサキュバスの兵が城まで案内してくれるそうだ。アンさんというらしい。


 城に着くまで向こうも仕事なので軽く世間話をする程度だったが、緊張した。


 ここまでサキュバスを何人か見てきたが、皆容姿が整っていた。アンさんも幼いながらその片鱗を見ることが出来た。


 若いのにしっかりした印象を受ける。



「こちらになります。」


 城に案内され、城にいたメイドに案内を引き継がれた後、部屋に通された。

 オーク国から引き継いでいるので当たり前だが、調度品もしっかりしている。貿易大国だったのは伊達じゃない。


 メイドから受け取った紅茶を飲み、クッキーを食べながら待っていると、1人の女性が入ってきた。


「お待たせしましたね。」

「いえ、滅相もありません。」


 その女性が対面のソファに腰を掛け話を切り出す。


「私がこの国の宰相のリーゼロッテと申します。それで、今回の要件というのは。」

「ええ。この国は今、貿易大国にも関わらず商人がいないでしょう? それを私どもの商会が請け負おうかと。貴国は貿易のノウハウも持っていらっしゃらないでしょう。」


 リーゼロッテさんは少し考えたような素振りをした後、


「それは嬉しい申し出ですね。先人が残していった書物もあるのでそれを参考に貿易していくことも可能ですが、経験のある商会さんがやっていただけるならありがたいです。詳しくお聞かせ願えますか。」


「はい。我が商会が取引の相手国の商会との交渉、商品の管理、需要と供給量の調整、その全てを行います。その代わりに商品の3%のお金を我が商会が受け取るという契約を考えております。」


 かなりこちらに有利な提案をした。関税でも5%をかけている国がそれなりにある程度だ。商会がこんな莫大な利益を手にすることは前例がない。


 しかし、貿易の問題は向こうも早く解決したいはず。しかも向こうはそんなに知識がないと見える。


「ふむ……。あなたの商会について聞かせてもらっても?」

「あ、はい。勿論です。こちらがいつも取引先に渡している資料になります。ご確認ください。」


 資料を手渡す。リーゼロッテさんはその資料に目を通す。

 しばらくの間。私は紅茶で少し口を湿らせる。


「……そうですね。あなたの商会はこのような大規模な取引をやった経験はないと見えますがどうでしょう。」


 痛いところをつかれてしまった。だがこの程度は想定内。私は口を開く。


「ええ。しかし私どもは今までの取引で信頼を勝ち得ていますし、私1代でここまでの商会を作った自負があります。心配することはありません。」


 リーゼロッテさんはまた少し考え込む。

 じれったい。早く決断してくれるとありがたいのだが。


「なるほど。お話は分かりました。しかし、これだけの取引、多大な利益を生むことはわかりますよね?」

「ええ。勿論。」


 何が言いたいのだろうか。



「どの商会でも喜んで請け負ってくれる内容だと思います。こういう言い方はアレですけど、わざわざあなたの商会に大きなお金を払ってやってもらう必要性がこちらにあるとは思えないのですが。」


 雲行きが怪しくなってきてしまった。しかし、なんとか有利にこの商談を終えたい。

 私は頭を回転させる。


「それに加えて、あなたが早く動けたのは大きな商会でない故ではないですか? 少し待てば信頼できる大きな商会も話を持ってくるのでは?」


 それは図星である。


 今、貿易は民間の商会を仲介させることがほとんどだ。商人たちはこのチャンスを逃しはしないだろう。うまく行けばこの新しい国から多大な利益を引き出せる。


 戦争をするということで、商人は一時的に念のため国を出ていたのだが、この大事に対して決定をするのは大きな組織ほど時間がかかる。


 それに比べて、私の商会は新しくできた故に、私に方針の決定をほとんど委ねているままだったので早く動けたのだ。


「この国には先人が残した書物もあります。我が国で貿易を進めていくことも一応可能なわけです。」


 これはもう間違いない。私は泳がされていたのだ。

 こちらが為す術もなく優位性を失い、向こうが完全に取引の主導権を握った。


「ですが、あなたが早く判断を下したことから優秀な商人であることはうかがえます。」

「そうでしょうとも!」

「ええ。ですから貿易をあなたの商会に仲介させることは考えても構いません。」


「考えても……とは?」

「こんなそちらが一方的に多大な利益を手にする契約が通るとでもお思いですか? こちらを侮っているとしか思えませんが。」

「ええと……それは…………。」


「こちらが契約については決定します。それを了承するかはそちらで決めてください。決断は早めにお願いしますね。私どもとしましては他の商会に話を持って行ってもいいのですから。」


 これでノワール国側は、こちらが相場よりかなり強気で利益を取ろうとしたことも込みで契約文を作ってくるだろう。


 完全にやられたな。これは。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 話を終え、商人が退出した後、私はようやく一息つく。


「ロイ様の置いて行ったマニュアル通り話を進めたけれど、なんとか上手くいったわね。」

連休だし更新しなきゃという使命感があった。

ということでリーゼさん側の話を書きました。


アキンドゥは商人(あきんど)から来ています。

人物名など感想で募集します。お金の単位も今のところいいのが浮かんでません。

作者はネーミングに四苦八苦した挙句、微妙な名前に落ち着いてしまうという。


10/12アキンドゥをケットシーでなく獣人というくくりでまとめました。そっちのほうが楽だからです。

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