第30話 海に行ってみる
「わりぃ……俺はもうダメだ……。」
城の前の広場には異臭が漂っている。
倒れているオーク――エナリオスはぐったりしていてもう立ち上がることすらままならない。
その周りにも大勢のオークとサキュバスたちが横たわっている。
「大丈夫さね!しっかりするんだよエナリオス!!」
アネットがエナリオスの手を握って言う。
さながら、その様子は物語のワンシーンに見えた。
「……ありがとうアネット。こんないい女に看取られるなら本望だ……オ、オロロエエエエエッ。」
エナリオスが嘔吐した。
「おい!うぷっ……オエエエエエエ。」
あ、アネットが貰いゲロした。
そろそろ何があったのか説明すると、昨夜、オークとサキュバスの親交を深めようとして騒いだのはいいのだが、今朝、大半が二日酔いで動けないわ吐くわで大惨事だった。
朝広場に来てみると城の前の広場には吐瀉物の匂いが漂っていて、この有様だった。
まあ、元々ここに1日滞在して出発は明日の予定だったからいいんだけど勘弁してほしい。
城の前一帯を魔法で掃除したが、次々と吐くやつが現れるのでもうしばらく放置することにした。
俺は城の中庭でルナと訓練をする。
「ルナは弓の腕は一流だが1対1の戦闘になった時には自衛できるかすら微妙だ。俺について来るなら強くなれ。」
「わかりました。」
ルナが真剣な顔になる。
ルナは少なからず俺に気があるっぽいんだよなぁ。
前の世界で人間観察していたからなんとなくわかる。完全に第三者のはわかりやすいけど、自分に向けられるものは少しわかりにくいな。
1年間一緒に生活してきて緩やかに好意を持たれた感じで、恋愛フラグっぽいのは全くわからなかったけど。
まあ、とりあえずモチベーションになってくれるならいいだろう。
「では始める。武器は一通り用意してみた。自由に攻撃して来い。」
ルナは迷わず弓を取った。
そして矢をこちらに放った。
俺はルナと同じ程度ステータスに制限して、左腕を狙ってきたそれを最小限の動きで躱す。
「ルナは確かに弓の達人と言ってもいい。だが、近接戦闘において、弓は圧倒的に不利だ。射線が相手にバレ易く、あっさりと躱すことが出来る。」
俺はルナに向かって走り出す。
第2射を躱し、距離を詰め、第3射の準備をしているルナの首元に手刀をつきつける。
「接近するまでに第2射を射ることが出来たのは見事だ。しかし、弓は攻撃するのに時間がかかり、その間は完全な隙といっていい。それでは勝てない。」
俺はそう言って手刀を下した。
「今の経験からルナはどう戦うべきだと思う?」
「弓自体、接近戦には不向きです。私が使える風属性魔法を使って戦うべきかと。」
「そうか。ならば、ルナは弓の技術により空間把握能力は高いだろう。武器を風属性魔法で扱えるのが理想だな。」
俺は短剣を風属性魔法で空中に浮かせて操って見せる。
「こんな感じだ。やってみろ。」
「はい。」
ルナは短剣を空中に浮かせて操る。しかし、とても上手く扱えているとは言い難い。
「弓の錬度を上げるために魔法で命中させる操作はさせてなかったからな。初めは難しいだろう。だが、加速させるのは特訓したからそれは生かすことが出来るだろう。」
MP節約のため、照準は手動でやらせていたが俺のステータスと訓練したらMPの問題は解決出来そうだからな。この戦闘スタイルも可能というわけだ。
しばらくルナが風属性魔法での短剣の操作に悪戦苦闘しているのを見ていた後、俺も今日やるべきことをするために行動を開始する。
「ルナ。事前の仕込みに行ってくる。」
「私も連れて行ってください。」
正直訓練してて欲しいんだがな。
「わかった。」
「ありがとうございます。」
「準備とかあるか? 俺は今から行けるけど。」
「5分ほど待ってください。お弁当作ってきます。」
ルナは城に駆けていった。
弁当作るのに5分って何だ……厨房でどういう動きをしているのか気になる。
5分と言われたので「異世界知識」を使って、昨日読みかけだった著作権切れの小説を読むわけにもいかず、手持無沙汰に過ごす。
そして体感3分ぐらいでルナが戻ってきた。某マヨネーズなどで有名な会社のクッキング番組のようだ。
俺はルナを連れて海沿いまで道を作りながら向かうことにする。
「道幅ってこんなもんでいいかな?」
「大丈夫だと思います。」
道にする場所を選びながら、土属性魔法で整地する。木は資材として使うため「インベントリ」に格納する。
そんな作業をひたすら繰り返して漁村予定地まで整地を終えた。
ルナと雑談しながらとはいえ、退屈な作業だ。ルナはもっと退屈なんじゃないだろうか。
漁村予定地の端で資材を取り出し、木材として切り、水属性魔法で水分を取り出し、乾燥させる。
《特級水属性魔法を獲得しました。》
意外とMPを消費したが、それでも自然乾燥で数年かかるものもあることと、急速に乾燥させたために割れがあまり発生していないことを考えるとコストに全然見合っている。魔法の便利さが今日も際立っている。
これで乾燥させてギターとか作ったらすごくいいものになりそうなんだが。
ちなみに俺は読書の他に楽器も趣味としていたのである程度は弾ける。
前いた世界ではひっそりと1人でやっていた趣味だったので、そのうち楽団やバントなど組んでみても面白そうだなと思う。
そして作業が終わったので切り株をテーブルに、適当に切り出した木を椅子にして昼食をとることにした。
趣があってよい。
ルナが作った弁当を食べる。そうやらサンドイッチらしい。
この照り焼きチキン的なサンドイッチとか明らかに3分で出来るものじゃないと思うのだが。
ちなみにこの世界では醤油は普通に流通していた。前の世界でも醤油かそれに似たものは世界中にあったしな。
「相変わらず美味しいな。ルナが作ったんだろ?」
「はい。私が作らせていただきました。」
ルナが机の陰でガッツポーズをしていたのが軽く見えてしまった。
「午後からは海の調査に入るんだが……。」
「はい。私は戻らせていただきますね。」
「悪いな。万一ルナに危険があるといけない。」
森の時と違って察してもらえた。
というのもルナ訓練をつけてやったので、ルナはその圧倒的な実力差に気づいたのだろう。俺がピンチに陥った時、ルナは時間稼ぎの盾になることも出来ないと。勿論絶対にそんなことはさせる気はないが。
昼食を食べ終わり、ルナを見送った後、俺は「飛行」を使って海に向かった。
見下ろすとそこには穏やかな海が広がっている。
俺は風属性魔法で空気を圧縮した塊を作り海に投げ込み、圧縮を解いた。
半球状に海が凹み、その抉れた部分にものすごい勢いで海水が流れ込む。
魔法に名前を付けるなら「空気爆弾」と言ったところか。
これで縄張りを持っているという魔物も来るだろう。
少しすると海から水柱が上がり、目的であるらしい魔物が姿を現した。見た目は完全に青色を纏ったドラゴンのように見えた。
俺はまず「鑑定」を使ってみる。
ステータス
名前:ハクア
種族:アクアドラゴン
職業:なし
Lv:30(経験値2422/3000)
年齢:41245795
HP:60000/60000
MP:60000/60000
筋力:48000
耐久:48000
素早さ:50000
称号:「海の主」「最後の古代竜」
魔法:「特級水属性魔法」「上級光属性魔法」「上級無属性魔法」
スキル:「爪術Lv8(熟練度74/80)」「水の息吹」「咆哮」「人化」「飛行Lv5」「水属性魔法適性」「光属性魔法適正」「無属性魔法適正」
耐性:なし
状態:なし
え、ちょっと待て。強過ぎないか??
予定通り投稿できませんでした。
2章のプロットが自分でもゲロつまらなかったので立て直しました。
自分の中では1日おきに更新したいのですが、リアルが忙しいのでしばらく不定期投稿という扱いでお願いします。
10/4 ステータスのスキルを修正。
10/6 ステータスのスキルを修正。魔法のランクが上がった文を追加。




