第29話 ピザって10回言ってみて
俺たちを乗せた馬車は旧サキュバス国の砦へと到着する。
「でっけぇなあ……」
俺とルナが乗っている3号車の御者が思わず呟いた。
これは俺の初陣で戦ったときに使用した砦である。砦はこの国が栄えていたころに造られたものでとても立派だ。思わず感嘆の声を上げるほどに。
俺も初めて見たときは驚いたものだ。
馬車は砦の前まで進み、停車する。
俺とルナは馬車から降り、砦に向かう。
砦の近くについた俺はスキル「飛行」を使い、砦にいるメイドに指示を出す。
砦が開き、 次々と馬車が砦の中に入っていく。
そして、馬車を止め、ルナの指揮のもと、作業が始まったのを見て、俺は連れてきたオークの代表であるエナリオスと城に向かう。
「割と立派なところじゃなぇか。」
「見てくれだけだよ。」
サキュバス国が栄えていたころの建造物でそう見えるだけだろう。
城と砦、あとは鍛冶場がある建物が立派なくらいだ。
「……それでこれから会いに行くのは鍛冶屋なんだよな?」
「…………ああ。変わったやつだから会っても気にしないでくれ。」
これから会いに行くのはアネットだ。今は一応ここの責任者になっている。城の入り口で見かけたメイドに聞いたところ謁見の間で待っているらしい。何考えてるんだあいつ。
億劫な気持ちになりつつも謁見の間に到着し、中に入る。
「よく来たさね!!アタイの城へ!!!」
王座に座っていたアネットが満足そうなで言う。
「そういうことしたいのはわかったが、時と場所を選べ。」
俺は文句を言うところから始める。
ここでオーク国と戦うときに行った面接でのアネットへの対応に合点がいっただろう、そう――こいつは鍛冶師などとしての腕はあるのだが、いわゆる残念な人なのである。
「今日はオークたちも来てるのによくそんなことをする気になったな。」
「いや~そんなこと言われても……照れるさね。」
「褒めてないぞ。」
こいつは賢い。俺の性格も加味して、注意で済ませられる範疇にかまってちゃん的な行動をとる。今回も外交などの場でもないから許せる範囲だろう。
しかし、ギリギリを攻めすぎだろ。
「それにしても、よくメイドが止めなかったな。」
「掃除の便利グッズであっさり買収出来たからね。」
そんなことしてたのか。
「……まあ、不安だったがうまくやっているようで何よりだ。」
「そうだろう? もっと褒めてもいいよ。」
こいつ褒めると凄い喜ぶのだが、返しがウザくて褒める気をなくす。
「それで本題だが。」
「聞いているさね。アンタが今回のオークの代表かい?」
「ああ、エナリオスという。」
「アタイはアネットだ。よろしく。」
そうして、今後の話などを簡単に済ませた。
その後、俺は馬車で運んできた材料を使ってメイドたちに手伝ってもらい、料理を始めた。
ルナはオークたちと荷物の管理など色々作業があるから、別行動だ。
「何を作るのですか?」
メイドの1人が尋ねてくる。
「ああ、ピザを作ろうと思う。」
この世界でピザは存在しているのか俺はわからないが。
「名前は聞いたことがあります。」
1人のサキュバスが言う。「鑑定」を使いステータスを覗き見るとかなりの年齢だった。見た目は若いが人生経験豊富なのだろう。
……リーゼさんもこれぐらいなのかな?
俺はサキュバス達とピザ作りを始めた。
旧オーク国からはチーズを持ってきたので。これでピザを焼くつもりだ。
生地作りには時間がかかるのであらかじめ用意してある。林檎で作っておいたドライイーストを使ったものだ。この林檎は前の世界の物に比べると幾分甘さが少ないと感じる。
現在、「品種改良」を使って新たに林檎の木を育てているから楽しみだ。
基本はトマトソースをベースにして、魔物の肉や、色々育てていた野菜を使い、生地に乗せていく。
「具材が色々あって、色々組み合わせてみたり、沢山の種類の料理を簡単に作っているようで楽しいです。」
普段は城にいる人数分だけでも同じ料理を大量に作らないといけないからな。反復作業も多く、ずっと楽しい作業というわけではないのだろう。
後はチーズを乗せて、メイド達と後は焼くだけの状態にしたものを大量に作った。
ここにはオーク達も含めてそれなりの数の人がいる。作るのには骨が折れた。
そして、それらを火耐性を付与したレンガで作った大きな窯に入れていく。
俺も前の世界ではこんなことをする機会はなかったからとても楽しい。
入れ終わったら、窯に火を入れる。火の通り具合にむらが発生しないように魔法で調節する。
普通に焼くとどうしても中央が周りより火力強くなったりしてしまうからだ。
焼肉とか端っこに置いている肉って火の通り悪いよね。
他にもフライドポテトを作ったりした。
そして夜になり、城の前の広場を使って、親睦会を兼ねたピザパーティを始める。
「今日はご苦労だった。オークもサキュバスも元奴隷の面々も疲れていることだろう。色々料理も用意したし今日は楽しんでくれ。」
俺が一応挨拶して、料理と旧オーク国から持ってきた酒が運ばれてくる。
酒はオークの貴族が溜めこんでいたものだ。
「へぇ、この皿とかも作ったのか。凄いな。」
「だろう?自信作だ。」
サキュバスとオークの因縁がわかっていない元奴隷も空気を読むほど、ギクシャクしている中、アネットは既にエナリオスと仲良くなっていた。
「それはピザというものだ。手で食べていい。熱いので気を付けてくれ」
料理が運ばれて来たので、微妙な空気がありつつ、皆、料理に手を伸ばす。
「うめぇ!!!こんなにうまいもの初めて食った!!!」
オークがそう言ったのをきっかけにみんな料理を楽しみ始め、酒を飲み、やがて、オークとサキュバスで普通に会話が見られるようになり、親睦を深めることに成功した。
「楽しんでるか?」
「ああ、勿論だ。このピザというやつもうまい!」
しばらくして、皆が軽く酒で出来上がっている中、俺はエナリオスと話をする。
「色々聞いたよ。王様は凄いんだな。」
「みんながいたからだよ。」
「アネットのやつ口を開けばお前の自慢ばかりしてたぞ。お前にしかできないことをやってのけたんだろ? 謙遜するな。」
アネットのやつそんなこと言ってたのか。
俺は他にもオークやサキュバスと会話をした後、皿に料理を乗せて会場から少し離れたところにいたアネットのもとに向かった。
「食うか?」
「貰ってやってもいいさね。」
「全くお前は……。」
呆れ半分で俺は言葉を返す。
「……アタイさ、アンタに感謝してるんだ。」
「何を。」
いつもと違って突然真剣な口調でアネットは言った。
「絶望の淵にいたサキュバス達が、嫌悪感しかなかったオークと笑って食事をしてる。こんな光景思い浮かべてたのはお前ぐらいだってことさね。」
「買いかぶりすぎだよ。俺は割と行きあたりばったりだ。」
「それでも、ここまでこれたのはアンタのおかげさね。」
「これからも期待を裏切らないように頑張るよ。」
「頑張らなくてもいいさね。アタイ達もいる。」
「そうか。」
心地の良い時間が流れる。アネットは基本的にウザいやつだが一緒にいると何故か落ち着く不思議な奴だ。
すみません。遅れました。
最近リアルが忙しいです。頑張りますが今後も遅れるかもしれません。
慌てて書き上げて、このサブタイの投げやり感です。
10/2 慌てて書いて言い回しがおかしかったのを修正




