表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/63

第26話 日常

「貿易大国がこんなに忙しいとは思っていなかった。」


 俺はオーク城の執務室で頭を抱えていた。



 ノワール国の建国から1週間が過ぎた。


 サキュバスとオークは未だ少しぎこちないながらも、国は順調に発展の道を歩き始めた。


 元々オーク国の評判がよくなかったことや、軍事力の優れたオーク国をほぼ無傷で制圧したこちらの保有する軍事力のこともあり、他国がすぐに実力行使のようなことをしてくることは今のところない。



 しかし、各国の大使と迅速に今後の貿易のことで対処するよう話し合いの場を持たなければならないのでやることだけは山のようにあるのだ。



 ノックの音が聞こえた。


「ロイ様、輸出品のリストを作りましたので目を通してくださいますか。」


「ああ、分かった。」


 また机に山積みの資料が置かれる。



 オーク国では大部分の輸出入が中継貿易の形を取っている。


 農民は農作物を作る片手間に、輸入品の簡単な加工なども行っていた。加工貿易というやつだ。なので、農民といえど職人のスキルを持っている人も多い。勤勉な人たちだ。


 基本的に貴族が行っていたのは交渉と管理。


 したがって、農民からは代表や、兵士を志すものが抜けるが、商品なら今までと変わりなく作り続けられる。つまり貴族が行っていた人的資源を除けばなんら変わりなく貿易を続けることは可能ということだ。



 俺は輸出品リストとにらめっこしながら、各国との対応を模索する。



 ――(かね)てより考えていた方策を取れればいいのだが……。



 俺は膨大ともいえる作業をこなす片手間に、ある事業に着手する準備もしていた。



 この国の宝物庫にあったドラゴンの幼生体の魔石を使い。空間転移できるゲートの魔道具を作り、魔力を毎日注ぎ込んでいた。


 空間転移には膨大な魔力が必要で密度を高めた俺の現在のMP10日分を注ぎ込むことでこの元オーク国王都からサキュバス国の領土の端まで数秒空間を開けるようになる計算である。


 今のところ基本的には実用的でない。



 だが、これで俺はこの国で動くことが出来る。


 いざというときに俺がすぐ指示を出したりできない状況では困るので、俺が動くために、これは必要なことなのだ。




「あーこんなもんでとりあえずいいんじゃないか?」


 俺は決断した。――今日はもうサボろう。


 重要な部分は俺の方でやっておいたから後はリーゼとかに身を粉にして働いてもらおう。


 むしろ今までが異常なほど頑張りすぎていたのだ。適当に過ごしながらも好成績などを治め、親が文句を言わない大学に進学した。

 興味のある分野の勉強や、趣味の読書などには全力で打ち込んでいたが、基本的に活力のある人生を送ってきたわけでもない俺は、この世界に来て今までの生活が嘘のように全力で生きてきた。


 それは不謹慎かもしれないが、楽しかったからである。


 今も楽しいことは楽しいが、前の世界でのだらけ癖が発動した今、目の前の作業を進める気にはなれなかった。




 執務室を出てサボれる場所を探す。


 無駄に長い廊下を歩いていると、中庭で訓練をしているヴァイスとマリーの姿が見えた。


 マリーは驚くほど早くヴァイスと馴染んだ。


 面倒を見ろと言ったが、馬が合ったのだろうか。最近は何をするにも一緒にいる。


 まあ、ヴァイスと同じような戦闘狂にならないで欲しいなぁとは思うが。




 ――ガッシャーン!!


 近くで何かが割れるような音がしたので見に行ってみるとメイドが廊下に飾られていた壺を割ってしまったようであたふたしていた。


「ああっ……どうしよう……。あっ!ロイ様!あのこれはですね!!」


 凄い速さで言い訳をしようと頭を回転させているようだ。


「大丈夫か?怪我してないか??」

「え?」


 メイドがどう答えていいかわからないようで困惑している。


「あの、私、壺を……。」

「そんな壺の価値なんて俺わからんし、気にしなくていい。…………まあ、サキュバス城に残ってた壺は凄かったけど。」

「はい?」

「いや、なんでもない。」


 風属性魔法で欠片を一か所にまとめてやる。


「指切らないように気を付けて片づけておいてね。」


 焼き物を治す魔法なんて思いつかない。時間魔法で逆行させるとかか?


 多分俺の魔力量じゃ無理だし、そんな魔力、密度を高めてもドラゴンの幼生体の魔石に入りきらないんじゃないか?


「あのすみません。本当にありがとうございました。」

「感謝は貰っとくけど謝る必要はないよ。お仕事頑張ってね。」




 メイドと別れた後、俺は改めて、サボる場所を探す。

 サキュバス城ならば城の裏のすぐ近くに花畑があったのでサボりに行きやすかったのだが、ここは城から出ると貴族の住んでいた住宅街である。今はオークの代表達が共同生活で使っていたりする。ここに行ったら勿論バレる。


 しばらく彷徨っていると、とうとう見つけた。


 城の上にあったスペースである。


 この上ならば隣接して城から伸びている塔のおかげで多少飛んでも発見される可能性は低く、塔の窓がはこちら向きについてはいない。



 昼寝でもするか。



 俺は周囲を軽く魔法で綺麗にした後、昼寝を始める。


 住宅街のど真ん中と言っても、前の世界よりは幾分空気も美味しい。



「ロイ様こちらにいらっしゃったのですね。」


 しばらく昼寝をしていると突然声がかけられた。


「ん……。」


 目の前に太陽を背にして立っているミーナの姿が見えた。


「なんでここがわかったんだ?」

「それはサボりのプロであるこの私に掛かればたやすいことなのですよ。」


 ミーナがない胸を張って言う。俺は欠伸をしながら起き上がる。


「んで?俺に仕事しろって??」

「いえいえ、リーゼさんにロイ様を探して来いと言われましたが、私もサボりに来ました。」

「さいですか。」


 サボり仲間が出来てうれしい限りだ。


「隣、いいですか?」

「勿論。」


 ミーナが隣に座る。

 そしてなんとなしに2人で空を見上げながら会話をする。ミーナが基本的に話し手で俺は聞き手だ。


「そういえばさっき、さっちゃんを見かけました。壺を割ってしまったようです。」

「そっか。」

「ロイ様に親切にしていただいたと感謝していましたよ。」

「そっか。」


 空を見ている。雲がゆっくりと流れていく。


「平和だな。」

「平和ですねー。」



 俺とミーナはそんな感じで午後を過ごした。


 帰ったらミーナと一緒にルナにお叱りを受けたのはいうまでもない。

ヒロイン回をやって2章に突入の予定でしたが変更しまして、ヒロインに多少焦点を当てつつ国を発展させよう。的な2章をやることにしました。


当初やる予定だった2章は3章になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ