第25話 建国
マリーという少女は主にヴァイスに任せることにした。
俺はスキル「隷属操作」を使い、マリーの首輪を外して、後から到着したヴァイスに会わせ、面倒を見るように言った。
マリーに力をつけさせるためにもヴァイスに面倒を見させるのがいいと考えた。
というのも、ヴァイスと訓練していてわかったが、高いステータスの者と戦闘訓練をするとステータスの数値が上がりやすいことがわかったからだ。
そのため今後は、俺も魔力の密度の話をした人たちには個別に訓練をつけてやるつもりだ。
ついでにマリーにもアニマルセラピーのような効果があるといいな的なことも考えている。
ヴァイスの方も弱者を痛めつけて楽しむ部分がある。これは精神的に幼く、子どもがアリを殺して遊ぶぐらいの感覚なのだろうが精神的にも成長してくれた方が望ましい。マリーと過ごすことでヴァイスにもいい影響を期待している。
よって、上手くいけば双方メリットがあるし、ベストだという判断だ。
「俺らとしては何も文句はねぇ。前の政治よりは生活はよくなりそうだしな。」
そして俺は今、オーク国の王城で、リーゼ達と合流した後オーク国の農民をまとめて、その長に決定した人物と話をしている。
「そうか。まあ、文句が出るとしたらサキュバスからだろうからな。ある程度は抑えるつもりだが、サキュバス達はこの国の貴族などには嫌な思いをしていた。同じ種族だから最初からうまくはいかないだろう。すまんな。」
今話しているのはオークの農民たちの長に決定した人物――名をラインハルトというらしい。
名前カッコよすぎるだろ。俺がその名前にしたかったわ。
ラインハルト曰く「伝説の[勇者]と呼ばれている英雄から名前をとった」らしい。「勇者ラインハルト」ってカッコいいな。
「ある程度、目下のお前たちの仕事は前もって割り振ってある。細かいところは現場で調整してくれて構わない。」
リーゼが紙束をラインハルトに渡す。長にはある程度周りから信頼を得ている人物。文字を読める人物。から厳選したので問題はないだろう。
ちなみにラインハルトは王都近くの村で村長をしていた男だ。王都では商店街のようなところもあったが、店員も客も貴族で本当に農民とは隔離されていたらしい。農民は重税を収めるときか、軍に所属する試験のときにしか王都に入らなかったのだとか。
しかし、軍も幼いころからしっかりとした訓練を受けていた方が有利なので、「軍人の子供は軍人」といった感じで貴族とあまり変わらない感じだったとか。
「わかった。家族は離れ離れにならないようにとか恋人で離れたくないとか考慮して割り振っても構わないということか?」
「ああ。勿論だとも。」
ラインハルトが退出する。
「あ~疲れた。この後やること多すぎるだろ。もう嫌だ。」
城の客間でソファにもたれかかって楽な姿勢を取る。
愚痴りたくもなる。基本的に前の世界で俺はなるべく楽に生きようと怠けた生活を送っていたのにも関わらず、今はやることが多すぎる。これからも増えていくに違いない。
「お茶美味いな。流石金持ってる国なだけあるわ。」
「そうですね、ですがここも私たちの国になります。多種属の国になるのですからサキュバス国でなく、国名も変えねばなりませんね。」
リーゼが答える。この部屋にいるのは俺とリーゼ。お茶を持ってきてくれたルナである。
「俺ネーミングセンス底辺なんだよなぁ。なんかいい案ない??」
「そこはロイ様が決められることです。センスがなくとも構いません。」
構わないって言われてもなぁ……。
「ルナは何か案はないの?」
「私もロイ様が決めるべきだと思いますわ。」
う~ん難問である。
そうしてダラダラしているとノックの音が聞こえ、ミーナが部屋に入ってきた。
「そろそろ時間になりますよ~。」
「わかった。行こうか。」
俺は到着したサキュバスのもとに向かう。
広がる光景は1年前とあまり変わらない。皆勝利に歓喜していた。
そして、俺は手を上げて場を静かにさせた。
「本日はご苦労であった。これからはこの土地も我が国の領土となる。」
大きな歓声が起こる。
「だが、喜んでいる暇もあまりない。ここは貿易国だった。これからはより一層忙しくなるから覚悟しておけ。」
そう。オーク国は貿易国だった。これから外交も一気に大変になるだろう。自分でも乗り切れるかどうかわからない。
「そして、サキュバス国は新しい国に生まれ変わる。ここで虐げられていたオークを民として受け入れるからだ。」
場がざわつく。俺の真意を測りかねているのだろう。
「確かにお前たちはオークという種族に嫌な思いがあるだろう。だが、おなじ種族だからといって偏った目で見るのは愚かなことである。」
俺は慎重に言葉を選びながら話す。台本でも作っておくべきだったか。
「オークを奴隷にすればいいという考えの者もいるだろう。しかし、俺が作る国には奴隷という身分をなくすとここで宣言しよう。」
場は静かなままだ。俺が言っていることはすぐに理解されないことだろうから。
「確かに奴隷制は悪いことではない。飢饉が起こったとき、奴隷を出すことによって多くのものを救ったりもできる。合理的なシステムであるといえよう。しかし、俺が目指すところは違う。」
そんな中、俺は不器用な言葉を紡ぐ。
「今はまだわかってもらえないかもしれない。でも俺を信じてはもらえないだろうか。」
頭を下げる。受け入れてもらえるかはわからない。この世界に来てからは賭けをすることが多い。
自分でも柄ではないことをしているなと思う。
頭を下げてどれぐらいの時が経っただろう。それは一瞬のことであったかもしれないし、長い時間のことだったかもしれない。
どこからか、声や音が聞こえた。
だんだんとそれは大きくなっていき、場を包み込んだ。
「ここまでこの国を導いてくれた魔王様のことを信じないはずないだろ!!」
そんな声が聞こえた。割れんばかりの拍手と声援。暖かい空間がそこには広がっていた。
ああ、俺は民に真の意味で受け入れてもらえたんだ。
俺が作る国はまた、一歩を踏み出した。
「それで新しい国名だが、[ノワール国]でどうだろうか。」
ネーミングセンスはないが頑張って考えたものだ。
俺の国は出来る限り全ての種族を受け入れたい。共存したいと考えている。
なので全ての色を混ぜた色にちなんで名前を付けた。
全ての色を混ぜると正しくは無彩色になる。異なるのは反射率だけで全ての色を混ぜると白にもグレーにもなりえるわけだが、まあ基本は魔族の国であるし、白より黒でいいだろう。
――絵の具の色に使われる減色混合法を用いると、全ての絵の具の色を混ぜると黒になる。実際は色の反射率の違いで灰色っぽくなることが多いそうだが、目指すのは理想。このゴチャゴチャとしたパレットのような世界で黒を作り出せたらいいな。と俺は思う。
芸術がわからない俺が行っても説得力がないかな。
いっそう歓声は大きくなっていく。
ここからこのノワール国は始まっていくのだ。
「国を発展させるステータス制のファンタジーものが書きたい。」
「毎日更新をやってみたい。」
というだけで見切り発車した処女作である本作。これで一段落になります。
一段落するまでは毎日更新するぞと決めていたので凄いサクサク進んでいたり、「名前付けるの面倒だし名前は出さなくていいや」とか「あーここもっと描写したかったな」とか後悔することも多いですが、もう仕方がないのでこのまま進んでいこうと思います。
この後はサクサク進めすぎておざなりなヒロイン回をやったのち第2章に進んでいきたいと思います。
ここからはとりあえず1日おき更新にしてみます。
初めてのことも多いので更新ペースは明確にしてないのでとりあえずといった感じです。変更する可能性が高いかもです。
章管理は2章が始まったらしてみるかな。




