第14話 森から帰還
湖で俺は思わぬものを手に入れた。
稲である。
ルナに「この世界の主食って何があるの?」と尋ねたところ麦とかとうもろこしとかはあるらしいが米の存在は確認されなかった。
大きな湖の傍の小さい湖でこれを発見して、もしやと思い「鑑定」した。
「黄金の稲」・・・自然環境で長い年月をかけて空気中の魔力により進化してきたことで生まれた稲。凄くおいしい。ちなみに短粒種。
魔力で進化したらしい。
それにしても「凄くおいしい」ってなんだ。前の世界にもタラバガニの項目を開くと「カニに似た甲殻類。食べると美味い。」とか書いてある国語辞典があったがああいうノリなのか。
そして短粒種だった。ふっくら炊きあがるお馴染みのやつだ。ということはこっちの小さい湖は季節によっては水が干上がるのか。
「黄金の稲」はそれなりに量があったので一本取り込ませてもらった。
《「黄金の稲」を取り込みました。ユニークスキル「品種改良」を獲得しました。》
詳細
ユニークスキル「品種改良」・・・種子、卵にこのスキルを発動後パラメーターををウィンドウで決定し、魔力を種子に付与することで品種改良が出来る。
便利で強力なスキル獲得しすぎなんだよなぁ。
それにしても稲か。うちの国、川もあるし、気候も良さげで水引けば栽培できそうだしな。
いくつか持っていき、まずは種子を大量に作るために育ててみよう。
そして「鑑定」でポーションの材料になると出ていた薬草などを採取した後、ヴァイスと川魚を取り始めた。
靴などを脱ぎズボンの裾を捲って湖に入る。
俺は「神速」ヴァイスは「瞬速」を使って熊が川魚を取る感じで魚を取った。
「爪術」で速さに補正かかってる気がする。
そして気が付いたら魚の山が出来ていた。
やりすぎた……。
俺とヴァイスは焼き魚を堪能した後、森からの帰路についていた。
今回狩ったグレイウルフを食料として配る予定だったのだが、グレイウルフの変異種のホワイトウルフが仲間になったのでちょっと食糧にしにくい。
その旨を伝えたところ。
『構いませんよ。私たちの世界は弱肉強食ですし、他の群れのウルフを食べることもありました。』
と言ってくれたので食べよう。もったいないし。
ヴァイスの目の前で食べないぐらいの気づかいはするけどな。
帰りも歩いて帰る。
森林浴っていいなぁ。自分は読書が趣味なのもあり、冷房が苦手という人が全く理解できない域に達するほど文明に身体が適応していたけど、それでも自然の空気はいいと感じる。
『そういえば、ご主人はどんなところに住んでるんですか?』
あ、それ全く話してなかったな。
『この辺の土地の国の王をしている』
『王ですか?』
いまいちぴんと来てないらしい。
この辺を統治しているって言っても魔族と人族の間の話だし、魔物にとってどこの土地だとかは知ったこっちゃないしな。
『魔族と人族っていう違う種族でも意思疎通できるやつらで国って呼ばれる縄張りを主張してるんだよ。意思疎通できない魔物は全く関係なく。』
『そうなんですか。』
あまり理解していないようだが仕方ないな。
『それで、この辺りとかは俺がボスで縄張りを主張してんの。』
『とりあえずご主人は凄いんですね!!』
なんか納得したらしい。
『まあ、この国も1年後に戦争……隣の国が「この国も俺のだ」って言って戦いを挑んでくるし結構切羽詰ってるんだけどな。』
『ご主人様がいれば余裕で追い払えるのでは?そんなに強いんですか??』
む、こいつ理解してない癖に鋭いな。というか俺の強さをちゃんと把握してるのか?凄いな。
『俺が全部追い払うこともできるけど、そうだな、「例えばお前に子供がいたとして、何時まで経っても成長しなくて、もしお前がいなくなったらどうするんだよ。」って感じか?』
『さっき切羽詰ってると聞きましたが、ゆっくり成長を促せばいいのでは?』
『それがな。あいつら長い年月成長せずに今まで来てるんだよ。多少荒療治しないと変わらないレベルで。』
『そうなんですか。王というのも大変ですね。』
『まあな。俺もヴァイスのこととか聞きたいんだが。嫌な思い出は抜きで。』
そんな感じでヴァイスと雑談しながら帰路についた。
俺は城に戻って目の前に積まれた紙とにらめっこしていた。
城に帰ってリーゼに報告してとっとと寝る予定だったのだが。
「足手まといとか言って私を連れて行かなかったのだから、資料作りもご自身でおやりになるんですよね?」と凄まれてしまって何も言えなかった。
くそう。みんなはヴァイスをモフモフして愛でているのに何故俺は資料作りなんだ……。
俺は美味しいものは最後に食べる派だが、やりたくないことはギリギリまでやらない人間なんだぞ。今は魔王だけど。
ぐだぐだしながらやっていると扉がノックされた。
「ロイ様。お茶をお持ちしました。」
「ありがとう。入って。」
ルナさんがお茶を持ってきてくれた。そうだルナに手伝ってもらおう。
口調はこっちに来て1か月ぐらいは敬語っぽく距離を測りかねる感じで話してたが、「さん」づけを止めたころから自然に話すようになった。
「ルナ。資料作りを手伝ってくれないか。」
「はい?ロイ様は私が最後までついていくと言っていたにもかかわらず承諾してはいただけませんでした。リーゼ様があれぐらい怒っているのだから私はもっと怒っているとはお思いになりませんか?」
あ、そうだった。でもお茶持ってきてくれたんだからそれほど怒ってないんじゃないか?
「すまなかった。でも頼む、手伝ってくれ。」
「そうですね……。頼みごとをするときはそれ相応の対価を払っていただきませんと。」
「俺にできることなら考えるぞ。」
ここで「なんでもする」とは言わない。言質を取らせたらますます状況が悪くなるかもしてないじゃないか。
そしてルナはいつもの下ネタを言うような感じではなく真剣な顔で言った。
「それなら私を抱いてくれませんか。」
「お断りします。」
「……何故ですか?ロイ様は私の乳房に興味を示されているではありませんか。好きにしてもいいのですよ!」
オークとの初陣の後、リーゼからも誘われたが断っている。このお誘いを受けたいのは山々だ。
だが俺はそっち方面で問題を抱えている。
問題と言っても戦闘状態になれないとか小さいとか包まれているとかそういうことでは全くない。
そう「性技Lv10」である。
初陣で死んでしまったサキュバスから特に考えなしに取り込んだ、熟練度が上限に達したスキルなのだが――
色々なスキルは熟練度を高めると強くなるが「手加減」もできる。だが俺には性交渉の経験がない。
なので「手加減」の仕方がわからない。サキュバスが相手でも下手したら相手が死んでしまうか廃人になってしまう可能性もある。
だから俺は現時点では性交渉が出来ない。無念である。
ちなみに俺は割と整った顔立ちをしているし、前の世界でも結構モテて、異性と接していると好印象は得られるが、そのうち何故か恋愛対象から外される。
高校のクラスの女の子曰く「カッコいいし人当たりもいいのに何故か彼女がいるのが全く想像できない。」だそうだ。不思議だ。呪いにでもかかってるんじゃないだろうか。
「すまない。リーゼにも言ったが、俺はこの国が落ち着くまでそういうことはしないと誓っているんだ。」
ユニークスキル「真の王の器」は切り札でもあるのでこれだけは誰からも隠しておきたい。
スキル数が増えるとごまかすのが大変そうではあるが。
「……そうですか。ではオーク国との戦争が終わったら。私を抱いてくださいね。」
ルナは俺の返答を待たずに資料作りの手伝いを始める。それにしてもステータス的にルナって処女なんだよな。あんなに積極的になるのには勇気がいることだっただろう。
「ルナ。ありがとな。」
「なんですかいきなり。資料作り早く終わらせましょう。私も眠いです。」
そうして今日も夜は更けていくのであった。
(※編集であとがきを追加しています)
予約投稿ミスって2話あげてしまいました。
書き溜めがほぼないのになんてミスをやってしまったんだ(絶望)
10/19 少し表現を変更




