第13話 ホワイトウルフ
『なあ、お前自身でこの「翻訳魔法」使えないか?』
『そうですね。出来ればいいのですが……。』
『お前のその白い毛並みのおかげで魔法使えるっぽいぞ。多分出来る。』
『本当ですか!?』
『ああ、俺はそういうのがわかる。これは内緒だからな。誰にも言うなよ。』
こいつは信頼できるという勘がある。ある程度話しても大丈夫だろう。
『まずは魔力を出してみろよ。血のように体を巡るイメージを体外に伸ばすイメージだ。』
『はい。やってみます。』
自分が魔力を放出できたときのイメージを伝える。
『出来ました。こんな感じですね。』
『え、凄いなお前。』
すぐに魔力を放出することが出来た。才能あるな。
『それで魔力の密度を上げるイメージをしろ。その方が魔法の威力なども向上する。』
『そうなんですか?』
『そうだ。だが、これも秘密だ。誰にも言うなよ。』
『なるほど。魔力の密度の話はみんな知ってることではないのですね。』
『ああ、理解が早くて助かる。』
そして少しだが魔力の密度を上げることに成功する。
『練習の必要はありそうだが俺の感覚から言ってその程度でも「翻訳魔法」はそれなりの時間は問題なく使えるだろう。魔力にはイメージを伝える力がある。それを使って俺と意思疎通をするんだ。魔法はイメージが一番大切だ。これぐらい説明したら後はお前次第だ。やってみろ。』
『ありがとうございます。やってみます。』
『ああ頑張れ。俺は「翻訳魔法」を止めるからな。』
翻訳魔法を解除する。
しばらくホワイトウルフの魔力が揺らめくがそれほどうまくいかない。
速く習得させるためにも俺から「翻訳魔法」はかけないでおこう。
歩いていないほうが集中して練習できるのだろうが俺の目的もある。ホワイトウルフにはしばらく歩きながら頑張ってもらおう。
そしてしばらく森の中を探索していると頭の中に声が響く
『聞こえますかご主人!』
『ああ、聞こえる。ご主人とは俺のことか?』
『はい。ダメでしょうか?』
『構わんぞ。それにしても早かったな。』
『はい。ご主人の魔力の密度のお話が凄い役立つことを実感しました。アレのおかげです。』
『そんなことはないぞ。謙遜するな。でも魔力の密度の話はくれぐれも内緒の方向でな。』
『わかってますよ、ご主人!』
それにしても魔法の習得が早すぎないか?
『お前のことを何と呼べばいい?』
『ご主人に決めていただければ。』
『そうだな……ヴァイスでどうだ?』
何のひねりもない「白い」という形容詞である。ネーミングセンスのなさを実感させられるが仕方ない。
『はい。ヴァイスとお呼びくださいご主人。』
ホワイトウルフに名前を付けるのも終わり、ひと段落したところで俺は再び「魔力ソナー」を放つ
『湖を見つけた。そこに向かおうと思う。』
『はい、ご主人!』
『だが湖の周辺にかなり大きなブラックベアーの反応がある。』
『あ、それはここら一帯で一番強いと言われているやつですね。片目に傷を負っているやつです。』
そんな強そうなやつがいるのか。
『お前が倒せ。』
『ええっ!?無理ですよ。俺そんなに強くないですし……。』
『お前には水魔法の才能もあるようなんだ。まずは使ってみろ。そのブラックベアーに有効な攻撃も出来るかもしれんぞ。こんな感じだ。』
俺は水で刃を作り木の枝を切ってみせ、氷柱を作り木に当てて穴を空ける。
『こんな感じだ最初のが水で、後にやったのが水を冷たくした氷だ。これも魔力の密度とイメージが大切だ。』
『凄いですねご主人!僕もやってみます。』
そうは言ったが明確なイメージができないと発動しない。水は出来ても氷魔法を使うのは難しいだろう。
『ご主人!氷は出来ましたが水ができません!』
あれぇ?
『氷の方が難しくないか?』
『氷柱は見たことがあります。水の刃はないです。』
あ、この国は四季があるって言ってたな。
ウォーターカッターなんてないわな。こちらの習得は時間がかかりそうだ。
『氷柱を飛ばすときは先を鋭くして回転させながら飛ばすと威力が上がるぞ。基本の氷柱が出来たら好きな形にできるだろ』
『わかりましたご主人!』
しばらく試しに撃たせてみたあと、「身体強化」の魔法も教え、湖の方に向かう。
『この匂い、あのブラックベアーに間違いないです。』
『そうか。』
ウルフはやはり嗅覚が鋭いのか。
種族の特徴はスキルである場合とそうでない場合がある。種族名を「鑑定」すればわかるのだが。
オークの生殖能力の高さはスキルでは表示されていなかったし、スキル表示されていないものは取り込めない。
そして湖の近くまでいくとそいつがいた。目に傷のあるブラックベアーだ。
鑑定をかけるとステータスは今まで見た魔物とは段違いに高い。その変わり大したスキルは持っていないようだ
『まあ、死ななければ治してやるから頑張れ。』
『が、頑張ります……。』
ヴァイスが前に出る。ブラックベアーがこちらに注意を向けてきた。
だが注意を向けただけで警戒心は薄い。この辺りの魔物でこいつに戦いを挑むやつはいないのだろう。
ヴァイスがじりじりと近寄る。
そして「瞬速」による先制攻撃をしかけた。
速い。「身体強化」も上乗せされているので今まで見たグレイウルフとは全然速さが違う。
ブラックベアーの喉を噛みちぎって終わりだと思ったが、ブラックベアーがこれに素早く反応する。
……これに反応するのか。この辺りで勝てるやつがいないわけだ。
しかしヴァイスの速さも中々のものだブラックベアーは回避しきれずにその肩に牙が突き刺さった。
「ガァァッ!」
ブラックベアーは泣き声をあげてヴァイスを振り払った。
ヴァイスは噛み付きを解き冷静に着地する。
いい判断だ。あのまま意地になって噛み続けていたらブラックベアーから爪の一撃を貰っていただろう。
そしてヴァイスは氷柱を、爪で攻撃しようとしているブラックベアーの軸足に向けて放った。
ブラックベアーもまさか魔法を使ってくるとは思わなかったのだろう。反応が遅れたこと、軸足を狙われたこともあり、氷柱が足に突き刺さった。
ヴァイスは攻撃の手を休めない。片足をやられて、怯んだブラックベアーの首元に正確に噛み付く。
ブラックベアーは手を首にやって、ヴァイスを攻撃しようとしたが。
そのまま力尽きた。
俺はヴァイスのもとに向かう。最後、ブラックベアーが首に手をやろうとしたところで介入しようか迷った。
戦いで迷いは命取りだ。俺も戦いでの課題は多そうだ。
『よくやったな。ヴァイス。』
『はい。ご主人!!』
俺はブラックベアーのステータスを取り込んで、死体をインベントリに放り込む。
なんか手柄を横取りしたようで悪いがこのスキル持ってるの俺だけだしね。しかたないね。
ブラックベアーを回収したあと、湖に向かうのであった。
文章の改行などいろいろ見直しました。
ストーリーに変更はありません。
そのうちお酒の話もやりたいと思ったので主人公の年齢を
18→22に変更しておきました。
9/13主人公がブラックベアーに鑑定をかける文を追加




