『読みたいところ』と『書きたいところ』
初出:2007年5月2日
二次創作ならまだしも、オリジナルの小説となると、かなり色々な設定を前もって作っておく必要があるというのは、小説を書いたことのない方にも理解して頂けると思います。これがファンタジー小説なら、なおのこと。
で、そういう設定って、可能な限り小説内でキャラに語らせたかったり、地の文で説明したかったりするんですよね。だって、せっかく作った設定ですし。正直、お蔵入りにはしたくありません。
でも、ちょっとストップ。その設定を延々と地の文で説明しまくるのはマズいです。ものすごくマズいです。
主人公たちの家族の設定とか過去とかなら、まだ物語にも繋がる可能性があるのでいいのですが、ファンタジーの魔法の原理とかの設定は延々と説明してはマズいのですよ。
はっきり言って、読んでいて退屈な作品になっちゃいます。そういう設定を練るのが(あるいは読むのが)大好きな読者さん相手にやるのならいいのですが、プロを目指してる人がこれをやるのは本当にマズいです。
ライトノベルを愛読している読者さんが注目して読むのは、キャラの掛け合いや結末までの流れであって、作者の作った設定や世界観そのものに面白みを見いだしてくれる方はごく少数なのですよ。
かといって、設定をおろそかにしてキャラの掛け合いばかり書いていると物語として成立しにくくなってしまうというのもまた事実。
要は、さじ加減なのです。
シリアスなシーンとギャグシーンをひとつの作品に同時に入れるが如く、設定をある程度語り、必要でない部分は物語やその世界に説得力を持たせるための『基盤』として使う。更に設定はなるべく掛け合いの中で説明させる。
これがベスト、とは言いませんが、かなりベストに近い形だと僕は思っています。
……まあ、このやり方は『設定を練り込んでいて、そこをこそ重点的に書きたい人』からすると、けっこうな欲求不満になるのですけれどね。
でも魔法に関する『火の玉を出す術は、辺りの酸素を集めて球体にし、そこでわずかに火の精霊の力を借りて、火花を起こして着火している』みたいな感じの『うんちく』を延々と書かれたって、面白くもなんともないどころか、ただうざったいだけでしょう? 物語の本筋とまったく関係ありませんし。
それが新しい術が出てくる度に語られるとなれば、なおのこと。
結局、このさじ加減を上手くできた人がプロになれる可能性を持っているのでしょうね。僕は……はてさて、どうでしょうか。
あ、話は変わりますが、プロットをいくつも作るより、一話分のプロットであっても出来上がったなら、作品の執筆に入るべきだと僕は思っています。
プロットは割と短期間で出来ますが、本編はけっこう書き上げるまでに時間がかかりますし、それになにより、言っちゃなんですけど、プロットばかり書いている状態って、マンガ家を目指している人でいえば『ラフ絵ばかり書いていて、まだ一度もペンを使ったことのない状態』だと思うんですよね。
この状態でプロになるのは不可能でしょう。いくらなんでも。
それにプロットばかり練っていても、地の文や会話を書くわけではない以上、やはり腕は上がらないだろう、とも思うのです。