伏線は小説を面白く読ませる工夫
初出:2007年1月13日
常日頃から、どうすれば小説を面白く読んでもらえるのだろうかと考えている僕なのですが、その答えはなかなか出てくれません。
で、小説を書いているのなら誰だってそうなんじゃないかなと思い、とりあえず僕の思う『読者に面白いと思ってもらえるかもしれない物語の構成(連載であることが前提)』をここに書いてみることにしました。
まず、僕は小説を『シリーズ』という枠組みの中で書いています。
例えば『スペリオルシリーズ』の場合、『ザ・スペリオル』で明らかにならなかったことを『スペリオル』で明らかにし、そこでも明らかにならなかったことを、今度は『ロスト・スペリオル』や『在りし日の思い出』で明らかにしよう、と画策しているわけです。
また、一話ごとに伏線を張り、その次の話でそれを回収する、という構成にすることで、多少であっても、読者を飽きさせないようにしようともしていますし、話の展開をゆっくりにすることで、読者が物語の展開を理解できない、なんて事態にならないようにも注意しています。
そして、可能な限り『偶然』や『なんとなく』の要素を排除しています。事件を起こす前に悪役の心理を描き、『どうして事件が起きたのか』を明確にしようとしているわけです。『ただ、なんとなく事件を起こしてみたかった』という展開はできる限り避け、起こった出来事に『必然性』を持たせようとしているのです。起こるべくして起こった、という展開に持ち込みたいのです。
また、その事件の解決の際に、主人公たちの心情を描き、『事件が解決したあとも残る疑問点』を明確にしようともしています。
実はこれらの手法は、『スパイラル~推理の絆~』(スクウェア・エニックス刊)などで使われているものです。そしてこれらの手法が用いられた作品は、例外なくワクワクしながら読めました。
僕が思うに、人間というのは、充分な手がかりが与えられていて、それでも真相(ラストの展開)があと少しのところでわからず、再読してみたら『あ、ホントだ!』と、張られていた伏線に気づいて思わず手を叩いてしまうような作品に魅力を感じるのではないでしょうか。
なんの手がかりもなく、いきなりラストになだれ込まれると、なんだか置いてけぼりにされた『面白くなさ』を感じるばかりなのではないでしょうか。
さて、上記を踏まえて(踏まえてないかもしれませんが)、僕の連載作品を例に、一話に大体どのくらいの伏線を仕込んでいるのかを挙げてみようと思います。
1.次回ですぐに回収する伏線。
2.何話か先の話で回収する伏線。
3.その章が終了するときに回収する伏線。
4.次の章で回収する伏線。
5.何章か先の章で回収する伏線。
6.その物語が完結するときに回収する伏線。
7.『同一シリーズの別作品』内で回収する伏線。
8.『シリーズ』が完結するときに回収する伏線。
9.『別シリーズ』内で回収する伏線。
10.『別シリーズ』が完結するときに回収する伏線。
ざっとこんなものでしょうか。
『どの番号のものがどこで使われている』というのを具体的に挙げることは、ちょっとできそうにありません。僕の作品は基本、伏線を張る作業とそれを回収する作業だけでできている、と言っても過言ではありませんので。
要するに、会話や地の文の半分以上が『伏線を張るためのもの』であり、その残りが『伏線を回収するためのもの』なのです。
無駄な会話や展開を、少なくとも『シリーズに属している連載作品』に限っては、決して入れていないのですよ。
キャラのとる行動、口にするセリフ、心の中で思っている地の文。そのどれもが意味のあるものなのです。どんなシーンであっても、基本、抜いたら物語が成立しなくなるのですよ。
なので当然、ちょっと直しを入れようとすると、途端に以前や今後の展開との間に矛盾が生まれます。
僕が『すでに発表した作品』を滅多に修正しないのは、こういう理由があってのこと、ともいえるわけですね。
僕個人はこういうギチギチに詰め込まれている物語が好きなのでこういうスタンスで書いているのですが、あるいはもっとのびのびと書いたほうが、面白い作品になるのかもしれません。書くのも、そのほうが楽そうですし。
まあ、そんなことを言っても、結局このスタンスは変えないんでしょうけどね(苦笑)。