第三十七条 緊急避難
第三十七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
自分の又は他人の生命、身体、自由または財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって発生した害が避けようと従いの程度を超えなかった場合に限り、罰しない。但し、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、または免除することができる。
2、第1項の規定は、業務上特別の義務があるものには、適用しない。
緊急避難というのは、正当防衛よりかは聞きなれない言葉かもしれないね。どちらとも、違法性阻却事由に該当するんだけどね。
自分や他人の命、体、自由または財産に対する現在発生している危難を避けるために、やむを得ずにした行為については、その行為によって発生した害が、避けようとした害の程度を超えない場合に限って、罰することはない。そして、程度を超えたとされた行為であっても、情状によっては、刑を減軽したり、免除したりすることができるという条文なんだ。但し書きのことを、過剰避難と呼んだりすることもあるよ。
よく使われる例なんだけど、例えば、目の前に倒れている人がいる。その人を助けるために、心臓マッサージをして、肋骨を折ってしまったという例。この場合、人の命と肋骨、どっちが大事かと言われたら、命のほうだよね。近くにAEDがなければなおさらね。このように、他にどうしようもなくて行った手段を『補充性の要件』と言って、別の手段があったのにそれを取らなかった場合は、緊急避難に該当しないとされるんだ。また、害と利益を比べる場合、『法益均衡の要件』と言われているんだ。今回の場合を考えてみると、人の命が失われないことが利益、肋骨の骨折が害になるわけだ。命>骨折なわけだから、法益均衡の要件は満たしていると考えるのが妥当だね。そして、AEDなど代替の手段がなかったという場合には、補充性の要件も満たしているわけだ。これによって、今回の行為は、緊急避難に該当して、罰することはない。という結論に至るわけ。
注意して欲しいのは、さっき見た正当防衛よりも、緊急避難のほうが成立できる余地が狭いということ。正当防衛は、『急迫不正の侵害』があって『自己または他人の権利を防衛するため』に『やむを得ずにした行為』に対して成立する。一方の緊急避難は、『自己または他人の……財産に対する現在の危難を避けるため』に『やむを得ずにした行為』は、『生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合』に限って、罰されないということになるんだ。このように、正当防衛が成立しても、緊急避難が成立しないという例はあるということ。これは覚えてほしいな。
ちなみに、業務上特別の義務がある者は、緊急避難が成立しないことになっているんだ。例えば、消防士が避難誘導をしていたりすると、一番最後まで踏ん張る必要があるということになるんだ。このように業務によって特別の義務が課せられている者については、緊急避難が成立する余地はないんだ。
[作者注:以下のサイトを参考にしました。
Wikipedia>緊急避難
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8A%E6%80%A5%E9%81%BF%E9%9B%A3
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