338/338
終わりに
「……で、刑法は終わり。どうだった」
俺は彼女に尋ねる。
彼女はというと、どうにか話を理解しようとして頭の上にでっかい?マークが出ているのがアリアリと分かった。
俺はため息をつきつつ、彼女に言う。
「刑法は面倒だからな。民法よりは具体的な話だから、まだ分かりやすいとは思うが」
「それでも、まだ表面をなぞったぐらい、っていうんでしょ」
「その通り。刑法も明治以来、さらにはそれ以前の話が出てきたりするから。その頃の理論や今の理論などいろんなものがあるんだ。そのあたりも勉強しないといけないよ」
「はーい」
そして、日も暮れかかっている事務所に鍵を閉め、彼女とともに帰る。
今度は、いったい、なにを教える羽目になるのだろうか。
楽しそうに大学の話をしてくれる彼女を見ながら、そんなことをぼんやりと考えていた。




