第十七章 文書偽造の罪
文書偽造の罪というのは、第154条から第161条の2まで規定があるんだ。
この罪は、社会的法益に対する罪とされるんだ。大審院明治43年12月13日判決によれば、文書偽造罪は、文書が持つ証明手段としての信用を害することによって、成立するとされるんだ。その他の判例によれば、昭和51年4月30日最高裁判決によれば、『公文書偽造罪は、公文書に対する公共的信用を保護法益とし、公文書が証明手段としてもつ社会的機能を保護し、社会生活の安定を図ろうとするものである』とされているんだ。文書偽造の文書というのは、大審院明治43年9月30日判決によれば、文字や文字に代わる符号を使って、永続すべき状態の物体の上に記載した意思表示ということになっているんだ。さらに言えば、前に出した昭和51年4月30日最高裁判決は『文書偽造罪の客体となる文書は、これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく、たとえ原本の写であつても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り、これに含まれるものと解するのが相当』として、コピーであったとしても、原本と同じものであれば文書偽造罪として成立することがあるとされたんだ。
さて、文書偽造というのは、そもそも、『他人の作成名義を偽り新たに文書を作成するということ』とされるんだ。これは、大審院明治43年12月20日判決によるものだね。同姓同名であった場合であっても、他人格とされて、有印私文書偽造、同行使罪が成立するとされた最高裁平成5年10月5日決定があるね。ちなみに、有印というのは、印鑑が押してあるということなんだけど、ここでは、刑法第159条第1項中にある『他人の印章もしくは書名』ということになるね。
偽造というのは、有形偽造、無形偽造と呼ばれる二つがあるんだ。単に偽造とだけ言うのであれば有形偽造のことを指すよ。有形偽造というのは、無権限の人が権限があるように見せかけて文書を作るということ。無形偽造というのは、権限がある人が内容が偽物の文書を作るということ。有形偽造の文書を偽造文書や不真正文書、無形偽造の文書を虚偽文書と呼ぶんだ。偽造の判例としては、例えば大審院大正15年5月13日判決の『郵便貯金通帳の記号番号、貯金者名義、預金・払戻金額欄の記載を変更する行為』がこう文書変造ではなくて、根本的な文書の変更とされて、偽造とされたんだ。
偽造に近い概念で変造というのがあるんだ。変造にも有形変造、無形変造の二つがあるよ。そもそも変造というのは、大審院明治44年11月9日判決で借用証書の金額の増減の行為だったり、大審院昭和2年7月8日判決で『登記済証の抵当権欄の登記順位番号の変更』が変造とされているんだ。有形変造というのは、無権限者が文書を改変することをいって、無形変造は権限がある人が文書を改変するということをいうんだ。変造は、正しい文章の一部を改変するということ、偽造は文書そのものをでっちあげるということで大きな違いがあるね。
[作者注:以下のサイトを参考にしました。
・Wikipedia>文書偽造の罪
https://ja.wikipedia.org/wiki/文書偽造の罪
また、以下の判例を参考にしました。
・最高裁判決>事件番号:昭和50(あ)1924、裁判年月日:昭和51年4月30日
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51105
・最高裁決定>事件番号:平成5(あ)135、裁判年月日:平成5年10月5日
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50138
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