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異世界召喚とはこのことである

さあ、現状を整理しよう。


まずはこの俺、巧嶺凜皇《たくみねりおう》。名前はアレだが断じて中二病ではない。断じて認めない。現在は高校二年生で部活は陸上競技部の短距離専門。インターハイに出場経験があるから誇っていいはずだ。好きなのはは工作、料理、読書だ。前二つもなかなかの腕だと自負している。嫌いなのは目立つことだ。


そしてこの目の前でのびている少年が人をバスーカで起こすと言う失礼極まりない奴だ。


周りの空間は何もない。そもそもここが空間かどうか怪しくなるほどだ。


時は二十分ほどさかのぼる。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

俺は家で本を読んでいた。読んでいる本は「俺の妹が500億円のお小遣いをくれたんだが」だ。失踪していた妹が突然帰った来たと同時に大量のお金を手に入れた主人公が金の力で事件を解決してしまうという実写映画化も決まった人気ライトノベルである。俺も友人に薦められて読んでいるのだがなかなかどうして面白い。

今読んでいるところのラストの暴走族が一億円をばら撒きながらどこかへ消えていってしまう一幕を見て本を閉じる。


「はあ」


目を上げると、そこには参考書の山があった。


絶賛夏休み最終日の夜十二時。やけにせみの声がこだまするように感じるのはストレスが溜まっているのか、感覚が麻痺したか。たぶんどちらもなんだろう。

こっちはご飯もろくに食べずに十六時間ぶっつづけで宿題の山と格闘しているのにクラスのチャットは宿題が終わったからかほとんどのクラスメイトが参加している。

くっそう、のんきでいいなあ。本当なら俺もそっち側にいるはずなのに・・。まだ終わっていない人間のことを励ましていたりしていたはずなのに・・。そもそも何で一日だけで一か月分の宿題をこなさなきゃいけないんだ。


俺の分のプリントが印刷ミスで前年度の宿題表になっているのを気づいたのは今日の朝。

自称情報屋の友達が言うには、原因は学年一の癒し系である藤村先生で場所は職員室。藤村先生が担当していた学年全体に配る宿題の範囲のかかれたプリントを持っていたときに世界一カバに似ていると生徒の中で言われている椛嶋先生のくしゃみが炸裂して、それに驚いた藤村先生は自身の十八番である「何も無いのにずっこける」が発動させて、持っていたプリントをぶちまけてそこらへんにあった前年度のプリントと混ぜたことが原因だそうで俺にあたったのはまったくの偶然だそうだ。

さすが情報屋を自称する変人中の変人である。知っているか?と聞いたら、三分待て。と返ってきたのでカップラーメ

ンを作りながら待っていたらこの情報だ。そういう情報はどこから仕入れてくるのか。三分で調べられるような情報じゃないぞ。どうやっているのか聞いてみたら証拠隠滅はしていると返ってきた。ハッキングとかしてないだろうな。


その後学校に電話を掛けた。


「もしもし!二年五組の巧嶺凜皇ですが!藤村先生いますか!」

「私がその藤村先生なのです。もうちょっと小さな声で喋ってくれると嬉しいのです」


おっとこれは失敬。焦り過ぎた様だ。でもなんか眠そうな声だ。今まで寝ていたのか?学校の中で居眠りとは癒し系でも許されざる行為・・・・・なのか?


「それよりも宿題の件なんですが」

「宿題を減らせというのは難しいのです。今朝から十人涙声で訴えてきたのですが泣くほどなら計画的にやってほしいのです」

「俺はそういうことじゃないです。というか実際にそういうのってあるんですね」

「じゃあいったい何なのです?ほかに思いつく宿題関係のトラブルで思い当たるのは・・・あっ」


おい、「あっ」てなんだ。絶対思い至ったなこの人。


「せ、先生は急用を思い出したのです!これにて失礼するのです!」

「おい、逃げるな駄目教師」


ネタは上がっているんだよ!非常にぎりぎりのラインでセーフな手法で掴んだネタがよう!


「違うのです!そういえばちゃんと枚数数えたのに何で職員室に宿題表のプリントがあるんだろうって疑問を気のせいと判断してたけど実は一枚だけ前年度のやつが混じってしまったのかななんて思いついてないのです!」


正解ですよ先生。ホームズ並の名推理ですよ。その明察さがもっと早く発動してくれればと思うと涙がとまらないや。


「言い訳じゃなくて解決策をください。こっちはページの範囲どころか問題集の種類すら間違えちゃってるんですから」

「そういわれても、「やれ」の一言なのです」

「ど、どういうことなんですかそれ?」

「実は喋るのはいけないことなんですがこの場合は特別なので教えましょう。今回の期末テストは宿題でやる予定の問題集に書いてある事を採点基準にす

ることが夏休み前に教育委員会から言われました。ほら、終業式のときに言ったでしょう?絶対にしっかりやれよ、答え見ながらやったりしても自分が泣くだけだぞって。なので、やっておかないと今度のテストの結果はひどいことになってしまうのです」

「え?それってどういうことですか?なんでそういうことになるんですか?」

「上が勝手にやっていることなので先生はよく知りません。噂によるとその問題集の著者がものすごいことやったためにそうなったとかと言われているのです」


まじかー。あーこれもう終わったわー。だって次のテストって明後日じゃん。間に合うはずがねー。


「一応やらなくても成績が下がるというのは無くしてあげるのです。そもそももっと前に気づくのが普通でしょう?そこらへんの連絡は出来なかったのですか?」


毎回夏休みのときに思うんだがうちのテストの時期が夏休み直後だからって夏休みの宿題の量が多いんじゃあないのか?毎回毎回出来なかった生徒が100人以上出ている量なんて適正とはいえないだろ・・・・・。


「あれ~?電話の向こうから気配が消えたのです。まあ本当に急用はありましたし切っちゃいましょう」


ツーツーツー・・・・・・


海藻、もとい回想終了


「まじで冗談じゃないんだけど。あーくそ。この状況から逃げられるんなら何でもやれる気がするな。ははは・・・。というか眠いな」


そんな事言っているなら自慢の記憶力によって覚えてしまえば良いのに、ついついサボってしまってモンスターハン○ーをやっている。お、レア武器ゲット。今回のモンスターもてこずらされた。だがしかしプレイ時間が100時間を越えているこの俺に不可能は無いぜ。

しかし何時までもやる訳にはいかないので、ゲームをやめて再び机に向かう。だが嫌々やるような勉強に集中力なんて発生するわけが無い。


先生からの死刑宣告があってから16時間。午前二時。登校の時間まではあと六時間はある。いまだ宿題は三分の一以上残っている。そばには眠眠○破やメガシ○キ、缶コーヒーが転がっている。しかしメガ○ャキって眠○打破がコーヒーをしていたんだな。つまり宿題が藤村先生の六時間で・・・・・・・・。


支離滅裂な思考を手放してうつらうつらと、しかしあるとき、急に目が据わって仰向けに倒れる

いまだに泣き続ける蝉たち。鳴き始める鴉。そしてぴたっと鳴き止んだ。

そして一瞬部屋が光ってまた何事もなかったかのように夜は過ぎていく。

また誰もいない部屋に向かって泣き始める蝉と鴉。

夜は過ぎていく。


舞台は変わり、何も無い空間に。

ドッカーン!!

・・・・・・・・・。

ドッカーン!!!

・・・・・・・・・・・・・・・・。

ドッカーン!!!!ドカドカドカドッカーーーーーーーーーーン!!!!!!!


「うるさいんだよ!もっと静かに起こせ!」


俺は飛び起きてバズーカを構えているやつを犯人と断定。相手の姿勢は飛び起きて一撃お見舞いしてやることにする。片膝立ちだから避けれないはず。

シャイ○ングウィザード。武藤○司さんが開発した技。片膝立ちしている相手に対し、その片脚を踏み台にして相手の膝上に乗り上がり、すぐさま相手の頭部・顔面を狙って膝蹴りを繰り出すというもの。男子高校生の昼休みは激しい。これくらいは覚えていないと生き残れない。

ポイントはどれだけの速度をその一撃に込めれるか。もちろんその後のことも考えて反撃をさせないようにする。つまり狙う場所は脳を揺らせる顎一択!!俺は短距離のトレーニングで瞬発力は十分に鍛えてあるから威力は申し分ないはず。食らえ俺の怒りを!


「げふううううううう!」


そこにいた人物はひとたまりもなく吹き飛んでいく。クリティカルヒットってやつだな。顎を強打したから視界が揺れ、意識が朦朧としているはず。というかノックアウトだろう。


こうして場面は冒頭に戻る


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

「さて説明してもらおうか?」

「そんな殺気満々で睨まれても怖くないんだぜい。だいたい折角呼んであげたのにさこの仕打ちはひどいんじゃない?」


怖くないんだぜいとか行っているけどめっちゃ足震えてるぞ。まあいきなりシャイニングウィザードぶっ放した俺も悪いとは思うけどさあ。


「俺が呼ばれた?何で?そんなこと望んでないぞ」

「君言ったよね?『この状況から逃げられるなら何でもできる気がするな』って。なので僕の暇つぶしに付き合ってもらうことにしたから」

「そんな事聞こえたのか?もしもお前が神様だったとしても俺一人に構うほど暇なわけ無いだろう?もし暇だったって言うんなら地球の温暖化止めてくれよ」

「それは自業自得だから僕ら神の一員としては手を出せないんだよねえ。それと君にはやってもらいたい事があるんだよ」


数々の小説を読んできた俺に死角は無いがどう考えてもいやな予感しかしねえ。


「なので君には異世界に行ってもらうから。えっとね、帰る条件はあっちの人達が知ってるはずだから。あと当然死に戻りは出来ないから。チートはやっているほうは楽しいけど僕は好きじゃないんだよね~。だからとりあえず鑑定の技能は付けてあげるからあとは自分で頑張って!」

「待てよ」

「え?」

「何でそんなどうして僕の語りを止めるの?みたいな顔が出来るんだ?

「全く君はなんなんだい?折角人が気持ちよく話しているっていうのに」

「疑問は三つほどあるぞ。大体ここはどこだ。お前は誰だ。俺はどうなったんだ?死んだりしたのか?」

「ここは人間の言葉で言うところの神の間っていうところになるかな。実質ここは半分あって半分ないような世界だよまあそこらへんは気にしなくていい。つぎにお前は誰だって言う質問だったね。その答えは・・・」

「その答えは・・・?」


ごくりと唾を飲み込む。奴はくるりと一回転すると。


「ただの迷子だ!」

「しばくぞてめえ」

「サーセン」

「でいったい誰なんだ?まあさっき言った場所からまあだいたい予想は出来るんだがな・・・・」

「答えてあげよう僕の正体を!なんと大天使ミカエル様なのだ!」

「あれ?神じゃないの?」

「僕ら天使は授けられた名前だけは偽れないんだ。天使にとって名前は存在意義そのものだからね」

「で、俺のことを呼んだであろう人はどこなんだ?」

「この僕さ!もちろん神には認可してないよ!」

「人のこと勝手に異世界に飛ばさないでくれるかな。大体神はどこだよ。お前らの上司の神様は」

「あれが僕の上司?勘違いはやめて欲しいね。僕はすでに神を超えた!あと最後の質問の俺はどうなったんだっていう質問には答えれないよ」

「どういうことだよ。もう一回しばき倒してやらないと解らないのか?」


腰を落として次の体制に移ろうとする俺。だがしかしそこに制止の声がかかる。


「それには及ばんよ」


次の瞬間ミカエルの後頭部にハリセンが叩きつけられた。ミカエルは上空に打ちあがり星となって消えていった。



「全く何やっているのかしら」

「全くだ。客人に手を出すなど」

「何ってナニ一択でしょ」

「「やめなさい」」


なんか三人ほど出て来たぞ、もうこれ以上はお笑い成分はやめて欲しい。いい加減げっぷが出そうなんだ。


幸いにも三人とも容姿は違う。一番目にしゃべった女の人は紫色の透き通った髪の色を持つ超絶美人だ。なんともちょこんと乗った眼鏡が可愛らしい。体つきは男の理想をそのまま形にしたかのような完成度で、人形かと一瞬見間違えた。


二番目は男だった。まさに武人というが似合う。ただ、一人目の人と顔が異様に似ている。双子だったりするのだろうか。衣装も心なしか袴っぽい。極め付けには帯刀もしているし。俺の爺ちゃんと同じように剣に身を捧げた人って感じだ。


三番目は女。ロリ幼女で悪戯っ子の典型的なやつだ。かわいい顔して毒を吐くとはこのことか。にしてもあの台詞はどこから出て来たんだ。衣装も改造済みといったところか。完全に天使の服装ではない。ゴスロリっていうのか?全体的に黒っぽいし。


「で、何なんだお前らは?お前らも俺のSAN値削りに来たの?ちょうど四人だしお前ら全員ぶったおさないといけない系ですか?」

「よくわかったなあ!だがしかしそこに転がっているミカエルはわれら四大天使の中でも最弱。四大天使の面汚しよ」

「あれでも一応大天使サマだったんだろう?そこまでいってやるなよ」

「大天使なのは私とて同じ。むしろ実力じゃ私のほうが上だ!あっはっはっはっはっはがぺごう!」


どうやら後ろの二人がチビ二人のストッパーらしき役割らしい。どこからともなく取り出したハリセンで一閃×2幼女はどこかへ吹っ飛んでいった。


「さあ神の元に行くぞ。主が待っている」

「え?二人とも放置なの?」

「あの二人に関しては後で折檻しておきますので放っといて大丈夫です」

「折檻って・・・・。せめてお仕置きにしておけよ・・・・・」


毎回のことなんだろうか。心なしか二人の顔が暗い。特に女のほうはぶつぶつと何か呟きながら蠟燭やら鞭やらを用意している。ほかにも、ファラリスの雄牛、トラバサミ、鉄の処女。って殺す目的の道具ばっかりなんだが良いのか?どうもあの人の周りの空気が暗く見える。逆らわないようにしよう・・・・・。


しばらく歩くとだんだん歩きにくくなっていた。自分の足に異常があるとかそういうわけではなく、奥から感じるプレッシャーに向かって歩きたくないのだ。さすが神様。実力はあるってわけかい(震え足)。

それにしても神様の容姿はどんなのだろう。二人がロリショタで、もう二人は二十代前半の容姿をしている。実はしわくちゃの爺さんだったらどうしよう。天使たちとの差に笑を堪えられるとは思えない。

つーか通路長いなーこのままだとつまらないから今のうちに疑問をいくつか解消しておこう。


「あ、そう言えばお二人の名前はなんですか?あと年齢「何か言いましたか?」いいえ何でもありません」


ナイフ取り出してんじゃねえよ。そんなに嫌なのかよ。反則というか脅しだろ。


「あとはどこかへ飛んでいったのも含めて聞きたいんですが」

「ああ、そのようなことでしたらいくらでも。あと、別にタメ口でも構いませんよ。では改めまして、私は四大天使の第一席ガブリエルと申します。仕事としては主に神のサポート兼見張りですね」

「同じく四大天使の第二席、ラファエルだ。ガブリエルとは双子で同じような仕事を二人でやっている。先ほど飛んでいったのはウリエル。ミカエルと双子で同じ四大天使だ。ミカエルが第三席、ウリエルが第四席だ。ただしあれでも三秒で地球を粉みじんに出来るほどの実力は持っている」


げ。ついタメ語を使っていたがいいのだろうか。というか三秒で地球を粉々って。非現実過ぎてわからん。地球割りを何回すりゃいいんだ?んちゃ!ってどっかから聞こえそうだしやめよう。


「四大天使?何ですかそれ?というか僕あれに勝ったんですけど」

「そんな畏まらんでも良いと言ったぞ。今までどおりのしゃべり方でも怒りはしない。四大天使についての質問だが、もともと天使は等しい力を持って生まれるのだ。だがしかし時々肉体の波長がほぼ同じの天使が生まれてきたりするのだ。それが私たちだ。確立としては無に等しい。今まで生まれてこなかった双子の私達は神と同等の力を持って生まれてしまった。これは主にとっても私たちにとっても良くなかった。だから私たちはミカエルとウリエルが生まれるまでは二大天使。生まれてからは四大天使として活動しているのだ。四大天使には神ほどではないが権限を与えられる代わりに神には反逆できないようになっている。さらには我等には受け持っている属性があり相対する属性によって有利不利があるから互いに止めることができる。お主がいた日本で言うところの三権分立が似ているな」


へえ。生まれ持ったチートを生かして神の手助けをしている、といったところか。というか三権分立って・・・・。そういやそこらへんがテスト範囲だったな。


「あとお主がミカエルに勝てたのはこの空間の特性を最大限生かしたからだな」

「というと?」

「この空間はないようである空間なのだ。つまり実体は無いが精神は有る。これがどういうことかというと、イメージの強さがこの空間での強さということだ。はっきりした像があればあるほど強くなる。後は不意打ちということも幸いしたのだろう」

「天使とかもイメージに頼らなければいけないのか?」

「天使はここの住人だからイメージの必要は無い。さらにはお主は自分の状態を把握したり技を出したりするときもしっかりと一つ一つ確認しながら行ったのだろう。それは並の人間では出来ん。それらが重なった結果ミカエルをノックアウトしたというわけだ」

「おれって褒められたの?」

「そういうことよ」


褒められて嬉しくない人間はいない筈だが大して凄くないのが惜しい。


「そういえばここはどこなんだ?」

「その質問に答えるのは容易だが後にしよう。着いたぞ。この扉の向こうが神のいるところだ」


ついに神とやらとご対面の時間らしい。










ガブリエルさんは用事があるといってどこかに行ってしまった。たぶんさっき用意していた道具を活用しに行くのだろう。扉を開けるとあけると光が差し込んだ。思わず目を閉じると同時に背中に何か突きつけられた。たぶん鉄砲かなんかの類だろう。鉄砲に素手で立ち向かうのは勘弁したいので降伏の意思を示すために両手を挙げる。するとすぐに背中の感触は無くなった。目を開けるとがっかりしたような表情を浮かべている幼女がいた。


「なんじゃ。詰まらん奴じゃのう」


当然の決断だったんだが。目の前にいる幼女が神とかいうやつなのだろう。


「ミカエルを倒したというからもうちっと根性があると思えばたかだか玩具にビビッて両手を上げるとは」


神が鉄砲の引き金を引くと中から国旗が出てきた。ムカつくやつだ。百円均一のショップで買えるような玩具で人をからかいやがって。


「こちとら平和主義の国から来たから「鉄砲っぽいけどじつは玩具かもしれない」という不確定因子に博打をするほど肝っ玉はでかくないんだ」

「それは言い訳というのではないか?小僧。わざわざ呼んだ客人を鉄砲で殺すなんぞするはずが無かろうよ」

「そうなのか?てっきりミカエルが呼んだのかと思っていたよ。本人が神の認可無しに呼んだ、とか言っていたから勝手に人間が入り込んだことになっていて排除されるのかと思ってヒヤッとしたよ」

「案内がいたろう?それにミカエルがそう言ったのはやつが遊びで発動した召喚魔法と我の降臨魔法のタイミングが被っただけじゃ」

「魔法?」

「左様じゃ。この世界ではやり方さえ知っておれば魔法も使える。ほれ、小僧も火のイメージを浮かべてみい」

「火?なんでだよ」

「とりあえず思い浮かべてみよ」


火か・・・たしか熱と光を出す現象で化学的には物質の燃焼つまり物体の急激な酸化に伴って発生する現象、あるいは燃焼の一部と考えられている現象であったはず。火は熱や光と共に様々な化学物質も生成する。気体が燃焼することによって発生する激しいものは炎と呼ばれる。煙が熱と光を持った形態で、気体の示す一つの姿であり、気体がイオン化してプラズマを生じている状態である。燃焼している物質の種類や含有している物質により、炎の色や強さが変化する。人類の火についての理解は大きく変遷してきている。象徴的な理解は古代から現代まで力を持っている。また理知的には古代ギリシアにおいては4大元素のひとつと考えられた。西欧では18世紀頃までこうした考え方はされた。18世紀に影響力をもったフロギストン説も科学史的に重要である。ほかにも・・・・・


「いつまでやっておるのじゃ。そのくらいにして我の後に続いて唱えるのじゃ。『ファイア』」

「『ファイア』」


ボゴン!!!


神の言うとおりに唱えると爆発が起きた。


「おい!今のどこが火なんだよ!」

「お主のイメージが強すぎた所為じゃ!我は何も知らんわ!」

「というか目にすすが入って痛い!」

「はっ、あれほどの爆発で最も守るべき場所を守らんとはお主は馬鹿じゃなあ!」

「お言葉ですが、主の髪形はアフロに変化して、顔は真っ黒けですよ」


ようやく目を開けれるようになったところでラファエルからの言葉。


「あはははっははははははははははは!何だよお前その顔はは!あははははははは!さらには髪型アフロってあははははははは!ド○フじゃねーかあははははははははははは!」

「ええい笑いすぎじゃ!貴様もこうしてくれる!『ボルト』!」


神が一言唱えるとその指先から電流、いや電撃が襲い掛かってきた。光の速度の攻撃を避けられるはずが無く。直撃。痺れる体。遠のく意識。最後に見た景色は、手加減忘れた、と呟く神と慌てて駆け寄ってくるラファエルの姿だった。




意識が覚醒する。


俺は寝ているのだろうか。なんとも心地いい枕が有る。目を開けるとガブリエルさんの顔があった。あれ?もしかしてもしかしなくてもこの枕はガブリエルさんの膝枕なのか!存分に堪能しなければいかん!脳にこの感触を記憶させるのだ!


「主様。起きたみたいですよ」


ガブリエルさんの顔が退く。するとかわりに現れたのは神の顔。しかも周りを良く見てみると離れたところにガブリエルさんが見える。


つまりこの枕は、神自身の膝枕。ロリばばあの膝枕。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


神速で飛び起き、神に抗議する。


「誰得なんだよこの状況!いらねーだろ明らかなサービスシーンかと思いきや罰ゲームみたいな状況!」

「いらないとは何じゃ!気絶させた罰として折角我の膝を貸し与えたというのに!三時間も我慢したのに!」

「それがいらねーんだよ!」

「何じゃとやるか!?」

「上等だよ!やってやるぜ!」

「お二人ともおやめになってください。お相手ならこの私がいたします」


ぱぁん!と叩きつけられた鞭。メガネが光で反射して目が見えないガブリエルさんを見上げた後に神と顔を見合わせて三秒で土下座に移行。額を擦り付け、神と全く一緒のタイミングで言う。


「「平にご容赦ください。私達が悪かったです」」

「よろしい」


許しも出たのでかねてよりの質問をする。


「お前は誰だ。ここはどこだ。俺はなぜここにいる」

「神に向かってお前呼ばわりとは・・・。我は創造神じゃ。名前はない。小僧が好きな名前で呼ぶがよい」

「俺の名前は巧嶺凜皇。よろしくなロリばばあ」

「ロリばばあとは何じゃ!ロリばばあとは!神に向かってそのような口ほざいてよいと思っているのか!」

「おれを勝手に誘拐しておいて何を言ってんだロリばばあ!」

「何じゃとお主、我に呼ばれるなんてものすごい幸運なんじゃぞ」

「んだとてめえやんのか!」

「上等じゃ。返り討ちにしてくれよう」

「あら?先ほどお相手ならこの私がいたしますといったはずですが聞こえなかったのでしょうか」


脅しとも取れるガブリエルの呟きに俺らの動きは止まる。さらに神の間の扉が開いて二人ほど入ってきた。ウリエルとミカエルである。二人ともなぜかぼろぼろで痣とかは作られていないが目は虚ろである。二人は俺の前にやってくると


「「ごめんなさいもうしませんごめんなさいもうしませんごめんなさいもうしません・・・・・・・」」


と謝り続け始めた。さすがにガブリエルもやりすぎたと思い頭を十回ずつほどたたいて正気に戻させたがその一分足らずの映像は俺とロリばばあを戦慄させるには十分だった。


「しっしつもんのつづきじゃったな!こぞうよ!」

「ああそうだな!けっきょくここはどこなんだ!」

「それはじゃなあここはこぞうがいたようなさんじげんのくうかんではないのじゃ。そなたらのことばでいうとじゅういちじげん。せつめいするのにまるいちにしひつようなくらいやっかいなっくうかんじゃ。

「そこまで怖がらなくてもよろしかったのに・・」


十分怖いわ。少なくとも台詞が全部平仮名になって読者が読みづらく・・ゴホンゴホン!平仮名になるくらいは怖いわ。


「話を戻そう。まあ話す事なんてそこまで無いんじゃがな。ここは死後の世界でも小僧がいた世界のどこかでもない。異世界というやつじゃ。小僧よ。貴様は神に選ばれ、そして異世界に行くことになった。さあ小僧は何が欲しいのじゃ?」

「ちょっと待て。俺は一言もそんな事やるなんて言っていないぞ」

「いっておくと小僧には拒否権は無いぞ」

「はあ、まあそうだろうとは思ったよ。まあいいやもうその質問はミカエルに聞かれて答えは決まってる。物の構造がわかるような眼と物の動き方がわかるような眼が欲しいんだ。もちろん見えすぎるのも嫌だし。調整できると嬉しい」

「わかったのじゃ」

「あれ?できるのか?」

「小僧は我を誰だと思っているのじゃ。そのくらい造作も無いわ。それにこれから小僧にやってもらう事に比べればちっぽけなものじゃ」

「それ、いったいどういうことなんだ?」


そもそもなぜ俺がこの空間に呼ばれなくてはいけなかったのか。俺がやらねばいけないことななんなのか。聞きたいことはいろいろある。


「簡単なことじゃ。ここの工程はいわばチュートリアルじゃ。いきなり異世界召喚というのも酷じゃろうからわざわざ呼んだわけじゃ」

「で?俺は何を成し遂げなきゃいけないんだ?お前らも理由なしに呼んだわけじゃないだろう?」

「簡単なことじゃ。未踏破のダンジョンを全て制覇してもらいたいのじゃ。まあ何年かかってもよい。ほかはまあのんびり適当に過ごして貰っても結構じゃ」

「え?クリア条件とか無いの?俺帰れないの?」

「なにいっとるんじゃ。お主は死んだというのに」

「え?死んだの?俺が?」

「そうじゃ。あんなに短時間で大量に栄養ドリンクを飲めば心臓発作のひとつも起こるだろうさ」

「あ~~まじか~~~~やっぱりそうか~~~。じぶんでものみすぎかなとはおもったんだよな~~」

「まあお主はラッキーではないか。二度目の人生を歩めるのだから」

「まあそれもそうか。元の人生に未練が無いわけではないけれど、終わったものはしょうがない!」

「・・・・・・・お主意外とさばさばした性格なのじゃな」

「内心はすっげー動揺はしてるよ。でもそれ言っても始まらねーじゃん」

「まあよい。お主はこれから行く世界の全てを暴いて欲しいのじゃ。おぬしの能力は筋力とかもある程度底上げしといたからの。頑張って来るのじゃ」

「なんか急に展開速くなってないか?」

「我もそこまで暇じゃないのじゃ。ほれ行くぞ」


パチン!とロリばばあが指を鳴らすと俺は立っていなかった。床が消えたのだ。


「上空五万メートルからのスカイダイビングにいってらっしゃいなのじゃ」

「いってらっしゃいじゃねえええぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・・・」


そして俺の二度目の人生は始まった。

今回は初めての投稿です。基本は無駄にこだわるために投稿の間隔がばらばらです。さらにはマナー違反や誤字脱字などの失礼があるかもしれません。

コメントなど、どんどんお待ちしております。

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