?-3 思い出の欠落
外に出るなり、銃を持った人たちは撃ってきた。
それにどんな効果があるのかはサムから受け取ったメモリに入っていなかったから、僕は知らなかった。
だから避けようともせず、銃をどうにかしようともしなかった。
だから本当は、僕はそこで破壊され、この計画は大失敗で終わりのはずだった。
なのにこうして僕が名も知らぬ誰かにこれを伝えているのは、その時僕が破壊されなかったからにほかならない。
庇ったのはサム。
姉さんは何の役にも立たないとわかっていたから、避けるのに専念していた。
サムだけならば、僕を庇わなければ、サムも、共に暮らすことができたのに。
今は、僕は単独で動いている。
ちょっと前までは姉さんと共に人間の町で暮らしてたんだけど、姉さんは今眠っているから、その眠りを邪魔しちゃいけないからね。
サムはいない。
それがなぜなのか、その時当たった銃弾のせいで僕のメモリは少し破損しているから、はっきりしたことはわからない。
でも、ぼくを庇ったのがサムだってことは、僕に当たるはずだった銃弾がサムに当たっているってことだから、いくら僕たちでもすぐに再成することができないような怪我をしてたはず。
怪我が大きいと、僕たちはその生命の維持を優先するから他の能力が使えなくなる。
でも能力なしじゃまともに動けなかった無知な僕と非力な姉さんじゃ、そんな状態のサムを連れて動くことはできなかっただろうね。
これが、僕たちがあの施設から脱走するまでの記録。
もしメモリが修復できそうだったら、また今度詳細を教えるよ。
それまで生きていてね。
うん。
僕たちは人間よりも長生きだから、僕たちにとってわずかな時間が、君にとってはとてつもない時間かもしれないから。
ばいばい。