初めてのお留守番
日曜日の朝。
学校がお休みなので、いつもより少し遅めに起きました。
2階のわたしのお部屋から下へ降りていくと、お家の中はしんと静まりかえっています。それもそのはずで、パパとママは親戚の結婚式に出るために、朝早くからお出かけしているのです。
せっかくの日曜日で良いお天気なのに、今日は一人でお留守番です。
つまんないの。でもしっかりお留守番しなくちゃ!
居間のテーブルの上に、ママが書いたメモが置いてあります。「朝はパンとヨーグルト、お昼は冷蔵庫の中のお弁当をチンして食べること」とか、あとは、今日わたしにしてほしいことが書いてあります。
ママからお洗濯を頼まれてて、洗濯機の使い方が書いてあります。自分でするのは初めてです。パパは「さとみにはまだ無理だろう」なんて言ってたけど、見返してやらなくちゃ!それに、全自動だから、そんなに難しくないんです。ママの話では、梅雨の晴れ間で、また月曜からお天気が悪くなるから、どうしても今日のうちにお洗濯しておきたいんだって。
ママのメモのとおりに、洗剤を入れて、スイッチを押すと、洗濯機に水がたまってきて動きだします。わたしは張り切って、何か他に洗濯するものがないか、家中のお部屋を一つ一つ探していきました。パパとママの寝室の枕カバー、キッチンにあったママのエプロン、わたしが学校にかぶっていく帽子、洗面所のタオル。
せっかくだから、何かもっと他に洗濯するものないかな…
夜7時頃、パパとママが帰ってきました。
わたしは2階の自分のお部屋から玄関へ降りていきました。
「お帰りなさい」
「ただいま。ちゃんと一人でお留守番できた?」ママが聞いてきます。
「うん。洗濯もちゃんとできたよ」
「お利口さんね。一日中一人でつまらなかったでしょ」
「うぅん…そうでもなかったよ」
「今日は家で何してたのかな?」今度はパパが聞いてきました。
「えっとねぇ、まず起きてすぐお洗濯して、それからお庭の植木と芝生に水撒きして、それから、テレビ見たり、宿題したり、ピアノの練習したり…」
わたしは、今日したことをひとつひとつ思い出しながら答えました。
でも実は…パパとママにひとつだけ言わなかったことがあって…
朝洗濯するとき、洗濯する物を探し歩いているうちに、ふと思いついたんです。今わたしが着ているものもみんな洗濯しちゃおうって。それで、パジャマも下着も全部脱いで洗濯機に入れて、ハダカになっちゃいました。そして、一日中ずっとそのままの格好でいたんです。
だって、天気予報では気温が30度以上になるっていうから、ハダカでいる方が涼しくて気持ちいいし、どうせ今日はどこにも出かけないで、ずっとお家で一人でお留守番しなきゃだし。
それに…お家でハダカでいるのって、なんだかドキドキしてちょっと楽しいっていうか…。特に、お庭で水撒きするときはすごくスリリングでした(お庭のまわりは塀で囲まれているので、外からは見えないはずだけど…)。
一人でお留守番なんて最初はいやだったけど、ハダカでいたおかげで退屈しないですみました。でも、一日中スッポンポンで過ごしてたなんて、パパとママには絶対知られたくないから、二人が帰ってきたとき急いでお洋服を着て、玄関に降りていったんです。
「ちゃんと一人でお留守番できて、お手伝いもしてくれて、さとみは良い子だね」パパがほめてくれました。
「うん、一人でお留守番できるから、二人でお出かけしても全然大丈夫だよ。それに、お洗濯の仕方も覚えたから、今度二人でお出かけするときも、またいっぱい洗濯してあげるね」
わたしはにっこり笑って答えました。