心 配 で す
僕か心配性な時は周りに気持ち悪いと言われます。
心配性でないときは周りに気持ち悪いと言われます。
糞短編書いてみました。
朝がやってきた。
男はゆっくりと起き上がると、周りを見渡して一言呟いた。
「よかった。昨日の夜も何もなかった」
別にこの部屋がイワクつきの物件であるわけではない。
ましてや過去に悪事をしでかしたわけでもなかった。
男はテレビを付けた。
どうでもいいバラエティのない朝のテレビは、男にとって最高の情報収入の場である。
ニュースがやっていた。最近オレオレ詐欺も巧妙化しているそうだ。
男はおもむろに立ち上がると電話の受話器をとった。
プルルルル…
「ん?誰だい?」
「母さん?一郎です。」
「なんだいこんな朝早くから電話してくるなんて、何があったんだい」
「いや、最近オレオレ詐欺が巧妙化してるらしいから、母さんも気をつけてほしいと思って電話したんだけど」
「全く、そんなことで電話してきたのかい?」
「そんなことって…心配じゃない?」
男の名は石田一郎。
彼はひどく心配性だった。
今日も朝起きてもカーテンを開けず、鍵はずっと閉めたままである。
仕事の時間になった。
いくら外に出るのが怖くても、そればかりは休むわけにはいかない。
石田は家から出て、ドアに鍵をかけた。
そして、鍵をかけた。
さらに、鍵をかけた。
最後には、7重にまで鍵をかけ、それらのキーをしっかりとバッグの奥にいれた。
「これで空き巣も大丈夫かな…」
石田はそう独り言を言うと、会社に向かった。
駅に歩いて向かっていると、
公園で子どもが遊んでいる。
見ると親戚の凖であった。
「そこで何をしてるんだ?」
「ドロケイだよ!一郎兄ちゃん」
石田はドロケイが嫌いだ。
ケイでもない人物か犯人を追いかける
なんて危ないことこの上ない。
もしドロがいた場面に出くわして、追いかけたりしたら大変だ。
犯人がブスリと一発かますかもしれない。追いかけてて道路に飛び出すかもしれない。盛大に転んで大ケガでもしたらどうするんだ。
しかしそれよも石田は伝えたいことがあった。
「もし俺になにかあったら助けてくれよ」
「うん、わかった!」
なんとも恥ずかしい会話である。
だが、石田はいざという時にきっと助けてくれると思ってこのような言動がクセである。
石田は駅にまた向かった。
電車に乗り、最寄りで降りる。
それだけの行動だが、石田は常に周囲に警戒をしていた。
周りの乗客が驚くほど挙動不審な状態であったが、いつものことであった。」
仕事中もガタッと音がするだけでいちいち心臓が止まりそうになる。
これだから仕事は嫌いなんだ。
石田は早めに上がることにした。
電車に乗った。
最近周囲を気にしすぎてひどく疲れているが、その代わり安全なんだから幸せだろう。
いや、ドアの鍵を8重にしようかな。
そう思っているうちに電車最寄りにつく。
とにかく、俺はこれだけ心配をかけてるんだから、きっと安全な一生を送れるだろう。
石田は静かに笑みを浮かべた。
改札を出ようとしたところで、後ろから声をかけられた。
「あなたが"いちろう"さんですか?」
「えっ…はい…?」
振り返ると黒服の男が立っている。
こんな怪しい男とつながりなんかあるわけがない。
「人違いです」
石田が言うとほぼ同時に男から一言。
「やっと会えたな。今までの借りは全部ここで返してやるよ」
そして、男が取り出したものを見て、石田は絶叫した。
それはナイフだった。
人違い、どう見ても人違いなのだが、
そう弁解している暇は…ない。
ただ1つわかったこと。
殺 さ れ る
石田は全速力で駆け出した。
男はその刃物を持って追いかけてきた。
石田は逃げた。もしもの為に逃げられる用に足は鍛えている。
角を急に曲がる。そして座り込む。
よし、男は俺を見失ったようだ。
逃げる瞬間階段で転んだキズが痛い。
そこで少し休むことにした。
男は俺に気づいていない。足を鍛えておいてよかった。
石田がホッとため息をついたと同時に、
聞き覚えのある声が聞こえた。
「一郎兄ちゃん!!大丈夫!?」
大丈夫なわけがない。
準の威勢のいい声に反応したのは石田だけではない。
「まてやぁ!!」
男の声と石田の声が重なった。
石田は息を切らしながらも、住んでいるマンションの中で上手く撒いた。
階段を音をたてずかけ上がり、すぐに部屋に入……れない。
厳重で、安心この上ない7重の鍵が石田の前に大きく、グロテスクなものに見えた。
急いで鍵を開けはじめる。
男の階段を上がる音がした。
1つ、2つ3つ4つ…
震える手で鍵をはずしていく。
そうして、7つめの鍵に手をかけようとしたと同時に、石田の肩に男の手がかかった。
「まってくれ!俺は今まで人に恨まれるようなことをした覚えがない!!」
石田は必死に弁解した。
「いや、これはお前のものとわかっている」
男はそう言うと、一枚の紙を取り出した。
何かの契約書だった。
宛名は…
田中一朗…?
「まて!俺は田中じゃない!石田だ!しかも一朗の字が違う!」
「証拠も無いくせに足掻くんじゃねえ!」
「まて、今証拠を出す!」
石田はバックの中に手を入れたと同時に気づいた。
ひったくり防止のため、必要最小限のものしか持ち歩いていない…
バックの中にあったものは、小銭、電車の定期券、FRISK、タオル…
そして汗でベトベトの7つのキーだけだった。
「足掻きは済んだか?」
男はニヤニヤしている。
石田は田中こいう奴を恨んだ。
石田は閃いた。
「そうだ!俺の…俺の家族に聞けばわかる…!!」
石田はガチガチになりながら言うと
「ふん、最後の足掻きをみてやるよ」
と男は言った。
ポッケから携帯を取り出し、震えの止まらない手で実家に電話をかける。
ボタンを押すところまで見られていたから、110番に電話するわけにはいけない。ましてや今警察に電話したところで意味はない。
プルルルル…
「もしもし?誰かしら?」
母さんの声だ。俺はもう 大 丈 夫 だ と 思
「お…俺です…一郎です!母さん助けて!」
「…ははーん、あんた、最近流行りの詐欺士だねぇ?」
「なに言ってるんだよ母さん!助けてよ!このままだとこ…殺される!」
「んなこと言ったって通用しないよ?そういう手口が流行りなのね?」
「違う!俺は本物の一郎だって!ねぇ、信じてよ!助けてよ!い…今前にいる男の人に説明するだけでいいから…ねぇ…」
「私を騙すなんて100年早いわ。本物の(笑) 一郎に言われたときはバカにしてたけど、これで勉強になったわね。やっぱり、『心配』はするべきものね。」