03
『――』
ノイズ。
無線の向こうから送られてくる声に、雑音が混じる。
四方が金属で出来ているため、反響で雑音が入るのだろう。
辛うじて電波を拾えるだけでも儲けものか。
『……ぃ………おい、聞いているのか、ショウ』
レシーバー越し。
サイモン・マックウィーン警部に自分の名を呼ばれ、ショウははっと我に帰った。
「ああ、聞いていなかった。何の話だったっけな」
『しっかりしてくれ』
サイモンのため息に、ショウは「すまない」と小さく呟く。
『―――それで、応援の件だが、今からだと一番近くにいたハワードでも、最低二十分はかかる』
「……なんだって?」
『……次はもう言わんぞ。応援には、二十分かかる。早くても十七分だ』
「おいおいおいおい、本気か?」
『こちらもなるべく急ぐつもりだ、何とか粘ってくれ。以上、通信終わる』
ザッという一際大きなノイズとともに、通信は途絶えた。
ショウは再びため息をついた。
「主任はなんだってよ?」
「応援は二十分後、それも最速で、だと」
ショウの言葉に、ケニーは眉間のしわを深める。
「よりによって、ハワードかよ?」
「ああ、ゲイのハワードだ」
ショウは苦笑いを零す。
「くそ……狗の連中のほうがまだマシだった」
そう言って、複雑そうな表情をするケニー。
大方、思い出したくもないことを思い出したのだろう。
「俺達だけで何とかしちまおう。アイツに借りを作ってケツを掘られるのはごめんだ」
そう言って、背中を預けた鉄骨の影から反身をさらし、ケニーはトリガーを引く。
ショウは苦笑いを浮かべながら、それに続いた。