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やっと言えたねッ

作者: chaboh
掲載日:2026/03/26

ぼくのなまえは、にしかわさとる。

小学校4年生。

ぼくは、いま悩んでることがあるんだ。

それは、昨日の放課後教室で残って宿題をやらされた帰り、遠足の天気のことが気になって、

「あーした天気になあれ!」

と、くつをとばしたら、ガシャーン・パッリーンと、大きな音がして校長室の窓ガラスを割ってしまったことなんだ。

 大きな音にびっくりしてか、怒られるのが怖かったか理由はわからないけど、ぼくは靴を片方しか履いていないまま、逃げ出してきたんだ。

今日は、ぼくの一番楽しみにしていた遠足…

青空は、雲のドレスを着て、太陽のネクレスをして笑っているけど、ぼくの心は笑えない。

ぼくの靴だって校長先生わかるかなぁ。

困ったなぁ。

よし、ぼくだって男だ、いさぎよく謝りに行こう。

そう考えると勇気が出てきたぞ!

体操服を着ると、

「いってきまーす」

 学校につくと朝の会が始まっていた。

 校長先生が、遠足の注意事項を長々と説明していた。

 いつもは、友達とおしゃべりばかりして、校長先生の話なんか聞いたことがなかったけど、今日はしっかり聞いた。

 校長先生は、窓ガラスの割れたことなんかぜんぜん言わなかった。

 もしかして、気が付いてないのかもしれないぞっ。

 謝りに行かなきゃわかりゃしないや。

 ぼくは、そう考えた。

 遠足は、バスに乗って高原の原っぱまで行った。

 ぼくは、窓ガラスを割ったことなんかすっかり忘れて友達と、いろんな事をして遊んだ。

 帰り道、バスの中で先生が、ぼくの靴を手に持って

 「この靴誰のか知っとるひと!」

と言った。

 みんな、あっち向いたりこっち向いたりしてたんで、ぼくも知らん振りして、隣に座っていたみっくんに、

「誰のじゃろうのう」

と、いってみた。

 先生は、昨日の校長室の窓ガラスが割られた事件のことを、みんなに説明した。

 バスの中は、寝とるもんもおりゃーしゃべりょーるもんもおって、先生の話を聞いとったのは、ぼくぐらいのもんだった。

 胸がドキドキして心臓が爆発しそうだった。

 学校について、ぼくは今度こそ本当に、謝りに行こうと思ったんだ。

 それで、バスから降りるとすぐに校長室のほうに向いて歩き始めた。

「おーい、にしかわ」

 後ろで先生の声がした。

 ぼくは、てっきりばれたと思って、

「先生、ごめんなさい」

と言った。

 先生は、ニコニコ笑って、

「今から終わりの会じゃ、まだ帰るのは早すぎじゃ」

と言った。

 ぼくは、なんだかホッとして教室に入った。

 終わりの会は、今日の遠足の反省会だった。

 女子のやつ、いつも長々と文句ばかり言うて・・・

 早う、終わらんかなぁ。

「きおつけー、れい」

 学級委員の声がして、終わりの会は終わった。

 さぁて、校長室に行くかぁ・ぼくがそう思ったとき、

「さとるー帰ろうやー」

 仲良しのまさるがやってきた。

「今日は、ちょっと用事があるんじゃ」

 ぼくがいうと、まさるは

「用事いうてなんなー」

 と聞いてきた。

ぼくは、困ってしまった。 

まさるに、あのことを言うと、みんなに広まるからなぁ・こう考えると、

「まぁええわ、かえろうや」

 と、一緒に帰ってから、

「ただいまぁ」

というなり、ランドセルを玄関に投げて、まさると裏山にクワガタを探しにいった。

 夜になった。

 ぼくは、校長先生の家に電話をかけて、謝ることにした。

 ぷるぷるぷるーぷるぷるぷるー

 やっぱり怖くなって切った。

 明日学校に行って謝ろう。

 そう思うと、急に眠たくなって、眠ってしまった。

 へんてこりんな夢見たんだ。

 校長先生と、ほかの先生たちが、怖い顔してぼくを追いかけてくる夢、走っても、走ってもなんだか前に進まないんだ。

 今日は絶対謝るぞー!

 朝の会がすんで、校長室のほうを見ると、割れた窓ガラスに紙が貼ってあった。

 まだ、ガラス屋さんが来ないんだなぁ。

 勇気を出してぼくは、校長室まで行った。

 トントン、ドアをノックしたら中から

「どうぞ」

と言う女の先生の声がした。

 ぼくは、誰も見ていないのを確かめてから、中に入った。

 中には、校長先生と、見たこともない先生たちがいっぱいいた。

「ご用はなぁに?」

と女の先生が聞いた。

 ぼくが、何にも言えずにだまっていると、女の先生は、

「今、会議中だから・・・」

「会議?」

 何の会議か、ぼくはたまらなく気になった。

 窓ガラスを割った犯人探しの会議かもしれない・そう考えると、いてもたってもいられなくなって、

「しつれいしました。」

と、丁寧に頭を下げて、走って教室に戻った。

 1時間目の国語の時間、ひょんな話から、窓ガラスを割った犯人が、まだ見つからないことを先生が言い出した。

 窓ガラスが割れたとき、先生も校長室にいたそうだ。

 ぼくの心臓は、はれつすんぜんだった。

 また、クラスのおせっかいの女子たちが、自分たちの手で犯人を捕まえると言い出した。

 先生は止めたが、女子たちはやる気満マンだった。

放課後、ぼくはまた校長室に行った。

そこには、ガラス屋さんがきていて、汗をかきながらガラスをはめる作業をしていた。

ぼくは、なんだか気の毒になって、ガラス屋さんに、

「どうも、ごくろうさまです。」

と言って、持っていたノートで、あおいであげた。

ガラス屋さんは、ぼくをたいそう気に入って、校長先生のまえでぼくを思いっきりほめてくれた。

僕は、だんだん謝るチャンスがなくなっていくような気がした。

ガラス屋さんが、きれいにガラスをはめて帰ったあと、校長先生は、ぼくにごほうびだといってアイスクリームを買ってくれた。

ぼくは、校長室のいすに座って校長先生とアイスクリームを食べながら、今がチャンスだと思った。

「校長先生、ごめんなさい!」

ぼくがそう言うと、校長先生は、ぼくのもう片方の靴を持って、ニコニコしながら、

「やっと言えたねっ」

といった。

ぼくは、何だかうれしくなって、今直したばかりのガラスごしに外を見た。

きれいな青空が、雲のドレスを着て、太陽のネクレスをして笑ってた。

ぼくも、校長先生も、いっしょに笑った。

                                    おわり


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― 新着の感想 ―
男子小学生の気持ちの変化が面白く書かれている 起承転結がうまくまとまっていて広島弁もとてもいい!
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