あなたが好き。大好き。
◇◇◇
侍従長の知らせに、あたしは嬉しさを隠しきれなかった。
母さんが、目を覚ました。
本当に、どれだけその言葉を待ち侘びた事だろう。
あたしが心を込めて回復魔法を祈っても、びくりともしてくれなかった母さん。
でも、いつの日にか目を覚ましてくれるんじゃないかって、そう願って、毎日の祈りを止めることはできなかった、けど……。
呪詛返し。
あの時。
イライザ夫人は放心したまま意識ここにあらずの状態で、しゃがみ込んでしまっていた。
お父様曰く、「マオが石化の呪いを跳ね返したからかもしれないな」と。
闇魔法である石化魔法、石化の呪いは強力すぎる反面、こうした代償も、あったのだろう。
もしかしたらそれで?
母さんの呪いも、とけたの?
だとしたら、本当に嬉しい……。
「フローラ!」
病室に入るなり、そう叫んだお父様。
あたしは、お父様の後ろ。
もう10年も経っちゃったんだもの。
母さんにあたしだってわかってもらえなかったら、悲しい。
臆病だ。あたしは。
「エドワード、さま……」
ああ、母さん。ベッドで身体を起こして、こちらを見て。
しゃべってる、母さん。もう動いてる母さんの姿なんか、忘れかけてた。
ああ。母さん……。
あたしはもう我慢ができず、涙が溢れてとまらなかった。
会えたのに、せっかく会えたのに、声をかける事もできず、泣き腫らして。
「マオ? そこにいるのは、マオ、ね。わたしの大事なマオ。大きくなったわね……」
「母さん、母さん、かあさーん!!」
あたしは母さんのすぐそばまで駆け寄って、ベッドに縋り付く。
「ごめんね、苦労をかけたわよね」
「ううん、ううん、よかった。よかった。母さん!!」
お父様があたしの肩に手を置いて、優しく微笑んでくれた。
あたしはお父様と、場所を交代してあげる。
きっと、お父様も母さんとおはなししたいこといっぱいあるだろうから。
「ねえ。エドワード。あなた、老けたわね。でも、だからわたし、マオのことすぐにわかったわ。ありがとう、マオを連れてきてくれて」
「ああ。フローラ。マオのことも、君のことも、もう離さない。覚悟してくれ」
そう、母さんを抱き寄せる、お父様。
あたしの肩をそっと抱いてくれる、兄様。
あたし、しあわせに、なっても、いいの、かな。
そうぼそっとつぶやくと。
「あたりまえじゃないか。マオのことは、僕がぜったいに幸せにするから」
そう兄様が耳元で囁く。
「ありがとう、兄様。大好きよ」
あたしもそう、こてんと兄様の胸に頭をつけて。
もう一度、「あなたが好き。大好き」そう囁いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
なんとか誤解が解けた? のでしょうか。
マオが幸せになれそうな片鱗が見えたところで短編のストーリーは終わっていました。
こちらでは若干加筆修正して本文は増量していますので、変更分もお楽しみいただけたら幸いです。
さて。
ここから先は、
エドワード視点
アンソニー視点
フローラ視点ときて、もう一度マオに戻る予定です。
もう少しだけお付き合いいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
そして……。
何か感じていただけたり、興味深い、面白い、と少しでも思ってくださったなら、何か反応をいただけるとすごく喜びます。
ありがとうございます。




