あたしの恋。
◇◇◇
え!?
「あたしの、瞳?」
「ああ。君の母さんの瞳は何色だった?」
母さん……。
明るい薄めの金色の髪、真っ白な肌。そして、薄い茶色の瞳。
あたしの顔立ちは母さんとそっくりになった、けど。
同じ金色でも艶のある黄金の髪、そして、この青い瞳は、きっとお父様からの遺伝、なのだろう。そう感じていた。母さんの日記にあった、母さんが愛していた、お父様の……。
「母さんの瞳は、薄い茶色、だったわ……」
それだけを呟き、あたしは目を伏せる。
うん。
あたしの瞳がお父様からの遺伝だっていうのは自分でもよくわかっていた。
兄様と、そっくりな瞳の色だってことも……。
だけど……。だから……。
「ごめん、マオ。ちょっと配慮、足りなかったね……。君の母さん、寝たきりだから、瞳の色なんて随分見てないよね……。ごめん、色々思い出させちゃったかな……」
あたしが固まったように物思いに耽っていたからか、アンソニー兄様はそう、謝ってくれる。
うん。兄様はそういう人。ずっと一緒にいたからわかる。優しい兄様。大好きよ、兄様……。
「ごめんなさい兄様。あたしは大丈夫、だから……」
ああ、だめ、お茶が冷めちゃう。
あたしは応接テーブルにお茶のセットを置いて、そしてお茶菓子として用意したクッキーも並べて。
ついでにあたしの分のカップもおき、ポットから並々とミルクティーを注いだ。
「ごめん、兄様。お茶、冷めちゃうからいただきましょう?」
「はは。そうだね。ああ、うまそうだ」
どっかりとソファーに腰掛けると、あたしにも座れとジェスチャーする兄様。
そうして二人きりのお茶会? が、始まった。
「うまいな、このクッキー」
とびきりの笑みでクッキーをいくつも頬張る兄様。あは、なんだかかわいい。
「そうでしょ。兄様の好きな野いちごをラム酒につけて、それをクッキーの生地に練り込んだの。サクサクっとした食感と、じわっとくるラム酒の香りが絶品よね。我ながらよくできたと自画自賛してるのよ」
「ああ、本当に。マオは菓子作りが上手だな」
喜んでもらえて、嬉しい。微笑む兄様のお顔を見たくて頑張った甲斐があった。
「えへへ。なんとか料理長に頼み込んで、兄様のおやつ係にしてもらったから」
ふんわりと微笑むアンソニー兄様のお顔が、ちょっと真剣な瞳に変わる。
「さっき僕が言ったこと、冗談とかじゃ、ないから」
「え?」
「真剣に、愛してるよ。マオ。僕は、結婚するなら相手は君しかいないって、そう思ってるから」
ええ!!
「だって、兄様……」
「父様にもそれとなく打診してみた。本気だって、そう」
「旦那、様、に?」
「反対はされなかったよ」
え、だって、でも、それじゃぁ、でも……。
涙が、一雫落ちた。
あたしが泣いて俯いてしまったから、兄様はそれ以上話すのをやめた。
ああ。
兄様はどう思ったのだろう。
それだけが、不安、だった。
あたしの「好き」は、隠さなきゃいけない。
絶対に。
叶わない、のもわかってる。
だって……。




