第2話 幻想三姉妹長女 その2
しばらく境内で掃除を続けていると、向こうの空から誰かが向かってくるのが見えた。
(あれは……魔法使い?)
私が考えている間に、その人物は鳥居をくぐり地面に降りた。
金髪に黒い服と帽子を被った女の子のようだ。
「おーい霊夢、いるか?」
そう言うと彼女は家に入っていった。
急いでいるのかこちらには気づいていないようだ。
私は気になってゆっくり家に近づいて覗いた。
すると霊夢と魔法使いの子は机を囲んで雑談をしていた。
「霊夢聞いてくれよ、最近すごいことが起きたんだ」
「すごい事って何よ」
「外の人間が迷い混む異変っていうのが、私の家の近くでもあったんだ」
「それ私もあったわよ」
「霊夢もか!? 詳しく聞きたいな!」
「魔理沙の後ろにいる子に聞くといいわ」
「え? うわっ!」
「ひゃっ!」
私は思わず驚いて声を出してしまった……魔法使いの子も驚いていたが霊夢にはお見通しだったようだ。
「もしかして保護してるのか!?」
「保護というかこの子からそう頼んできたのよ」
「お、おおそうか……。私は霧雨魔理沙、魔理沙でいいぜ! みての通り魔法使いだ」
「初めまして、来夢といいます」
「来夢……もしかして霊夢の知り合いか?」
「違うわよ」
「そ、そうだよなぁ……」
家族と間違えかけるのも無理はない。
私はとっくの前に親から与えた名前を捨てたのだから……。
名字も名前も捨てて生きる。
恵まれない世界から自分を切り離すように。
「おーい、聞こえてるのか?」
「あっ、ちょっと考え事を……」
「あんまり考えすぎるのもよくないぞ、たまにはゆっくりすることも大事だ」
「そういえば外の掃除は終わったの?」
「はい、ある程度は」
「ふーん、来夢もこっち来て」
「はい……」
私は手招きする霊夢に言われるがままに机を囲む。
「そういえば来夢はどうしてここに迷いこんだんだ?」
「それは……」
私は今ここで真実を話すべきかを悩んだ。話したところで彼女達を驚かせるだけだろう。でも妹達は無事なのか……様々なものが頭を巡った。
フラッシュバックのように辛い出来事が脳をよぎり……。
「お、おい来夢!?」
「無理して言う必要はないわ、どんなことがあったか知らないけど私に弟子入りを頼んだくらいだし」
「ちょっと待て弟子入り!? もしかして博麗の巫女も継がせるのか!?」
「それはないわよ」
「あの……ごめんなさい」
「悪いのは私だ! いきなり聞いて……ごめんな」
私は涙を拭うと大きく深呼吸をした。
「また……落ち着いたらお話しますね」
私は精一杯の笑顔でそう答えた。彼女たちもそんな私を見て安堵しているようだ。
「そういえば魔理沙」
「なんだ霊夢?」
「さっき言ってた異変のことなんだけど……」
「ああ、さっき言ってたやつだな」
「もしかして魔理沙の家にもいたりするのよね?」
「うん、森で女の子が倒れてたんだ。 今は私の家で安静にしているぜ」
「そう、医者に見てもらったの?」
「いや……私、キノコにはうるさいからな。森の毒キノコに当たったみたいだけど、軽いもんだったぜ」
「それなら良かったわ」
私は魔理沙の話すことが気がかりではあったが、聞くのはその時が来てからで遅くはないだろう。
「さてと……来夢ちょっといいか?」
「はい?」
私は魔理沙に呼ばれ部屋を出た。
「実は……彼女からこれを来夢お姉ちゃんに渡してほしいって頼まれたんだ」
「これは……!」
私の妹理沙が大事にしているキノコのキーホルダーだった。
「霊夢の前だと渡しにくいからな……色々首を突っ込んできそうだし」
「ありがとうございます」
「確か理沙って名前だったぜ、これは倒れてるのを助けたときに託されたんだ」
魔理沙はそう言うと指で鼻の下を擦った。
「来夢っていいお姉ちゃんだな」
「私の大切な家族ですから……」
「へへっ、大事にするんだぞ」
間違いない、今頃理沙は魔理沙の家にいるということだ。
残るはあの子だけだが無事かどうか……。
私は妹達を守らなければいけないのに。
そう考えながらキーホルダーをギュッと握り締めた。
「みんな……お願い無事でいて……」




