友情でさえ恋となる。作品という名の墓標
芸術において私は一度もあいつに勝てなかった。
最も得意な分野である芸術において……だ。
それはつまり、私には才能がないということ。
少なくともあいつより。
そんなある時、私はふと一つの方法を思いつく。
勝つことは無理かもしれない。
だけど、引き分けなら……。
*
大成功!
あいつはもう私から目を離せない。
ざまぁみろ!
もうあんたは一生私から離れられない!
ざまぁみろ!
ざまぁみろ!!
ざまぁみろ!!!
**
「少し、予想外だったな」
思いの外、早くこの場所にやってきたあいつに私は声を漏らす。
「まだ若いのに」
「それはお互い様だろ」
ぶっきらぼうな言葉が黄泉の国に響く。
「僕の前で自殺するなんて」
「『上手いだけ』の作品じゃ、あんたに勝てないからね」
だから私は『付加価値』をつけたんだ。
天才に負けた画家の『悲劇的な末路』という付加価値を。
競い合っていた同世代の画家。
戦いの末の一つの結末……これ以上ないほど作品を彩り、人々の目を曇らせるもの。
「私の作品、どんな評価だった?」
「中々評価されていたよ。君の目論見通りね」
あんたの言葉に少しだけ胸がスッとした。
勝利宣言さえしたいほどだった。
――だけど、私は状況が分からないほど愚かじゃない。
「……で、あんたも自殺したから私の価値は下がったわけね」
「さてね」
言葉を吐き捨てると同時に彼は地面に絵を描く。
道具は指と地面だけ。
少しだけ面食らって。
とっても腹が立って。
そして、これ以上ないほどに納得する。
あんたに勝てないわけだ。
この場所でさえあんたはもう芸術に向き合っている。
私はここに来た時には勝利を確信して舞い上がっていたばかりだったのに。
「描かないのか?」
「描いてもいいの?」
「誰も止めないだろ」
短いやりとり。
それに救われた。
「もう反則技は使えないぞ」
「うるさいな。分かっているよ」
生前と同じように軽口を叩き合いながら、私達は黄泉の国で今再び競い合った。
***
とある時代を共に生きた二人の芸術家。
共に芸術に向き合い、競い合い、そして共に自殺をした。
二人はこの時代を象徴する画家として、まるで一つの作品として紹介される事が多い。
そして、彼らが異性であることもあり、現代ではしょうもない色事を絡めた質の悪い恋愛物語が二人を象徴する『作品』として世界に広く伝わっている。




