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柴犬転生〜柴犬に転生したけど異世界で最強を目指します

作者: 砂糖 琥珀

俺の名前は佐藤悟。30代半ばの平凡な会社員だ。日々の仕事に疲れ果てながらも、愛犬の「レオ」と散歩する時間だけが心の癒しだった。


だが、そんな日常は、ある日の事故で突然終わりを迎えた。


「レオ、危ない!」


いつものように散歩をしていた俺とレオ。だが突如、暴走する車が目の前に現れた。俺は反射的にレオを抱きかかえ、自分の体で守るように覆いかぶさった。


それが俺の最後の記憶だった。


***


目を覚ますと、見知らぬ森の中にいた。


「……ここはどこだ?」


見上げると、濃密な葉の隙間から淡い光が差し込んでいる。肌に当たる感覚は湿った土の冷たさ。だが、何より異常だったのは、自分の体に違和感を覚えたことだ。


「え? なんだ、この短い足……この毛?」


周囲を見渡すと、水たまりがあった。そこに映った自分の姿を見て、思わず叫んだ。


「嘘だろ……俺、犬になってる!?」


そこに映っていたのは、紛れもなくレオそっくりの柴犬だった。


***


新しい体に慣れる間もなく、異変はすぐに訪れた。


「……なんだ、あれ?」


茂みから現れたのは、巨大なウサギのような生き物だった。だが、その目には明確な敵意が宿っている。


「やばい、襲われる!」


ウサギ型の魔物が跳びかかってくる。咄嗟に地面に転がって避けると、たまたま落ちていた木の枝が目に入った。


「これでも食らえ!」


枝を咥えて突き出すと、偶然にも相手の急所を捉えたようで、魔物はその場に倒れ込んだ。


その瞬間、頭の中に不思議な声が響く。


《レベルアップ!》


視界に浮かび上がるステータス画面。


【名前】:不明

【種族】:柴犬

【レベル】:1 → 2

【力】:3 → 6

【敏捷】:5 → 10


「……ゲームみたいな世界なのか?」


状況はまるで理解できないが、俺は本能的に悟った。この森で生き延びるためには、戦い続けるしかないのだと。


「やるしかない……最強の柴犬になってやる!」


***


数日が経ち、俺はこの世界のルールに慣れつつあった。魔物を倒せば倒すほど、レベルが上がり、体が強くなる。


最初はウサギ型の魔物だけだったが、今では狼型の魔物や飛び回る巨大な鳥型の魔物にも勝てるようになった。


「俺の成長速度、意外と悪くないな」


とはいえ、この生活が楽ではないことは確かだ。水場を探し、食料を確保し、常に魔物に襲われる危険と隣り合わせ。それでも、転生早々にこの体で死ぬわけにはいかない。


「この世界で最強になって、あの神をぶん殴るんだ!」


そう、この状況を作り出したのは神だ。転生する際、何者かの声がこう告げてきた。


「気まぐれで君を選んだ。ただ、それだけだよ」


その理不尽さに怒りが湧き上がる。


「この世界で最強になって、絶対に神に文句を言ってやる!」


***


森での戦いの日々が続く中、俺は一人の少女と出会った。


「……犬?」


彼女は薄汚れたローブをまとい、杖を握りしめていた。長い髪が乱れ、明らかに旅の途中で迷子になったような雰囲気を漂わせている。


「おいで、怖くないよ」


彼女が差し出した手は震えていたが、その声には優しさがあった。


***



俺は彼女の手を見つめた。警戒心はあったものの、この世界で初めて会う人間だ。慎重に近づき、彼女の匂いを嗅いでみる。


「ふふ、良かった。優しい犬さんだね」


少女の名前はミリア。見た目は十代半ばといったところで、旅の途中で迷子になり、森に迷い込んだらしい。


「こんな森で一人なんて、大丈夫なのか?」


もちろん俺が言葉を話せるわけもなく、ただ首をかしげてみせた。だが、彼女はそれを賢い反応と受け取ったのか、微笑みを浮かべる。


「あなたみたいな犬が仲間なら、なんとかなるかも……」


俺は彼女を守るべきかどうか迷ったが、結果的に彼女と行動を共にすることにした。


***


ミリアは魔法使いだった。


「見ててね、この呪文であの木を――」


彼女は呪文を唱え、小さな火の玉を作り出した。それは大きな木に向かって飛び、勢いよく燃え広がる。


「おお、やるじゃないか」


しかし、彼女の魔法には致命的な欠点があった。それは、使った直後にへたり込むほど魔力消費が激しいことだ。


「はぁ、はぁ……これが限界なの」


俺はミリアの隣で見守りながら、再び心に誓った。


「俺がもっと強くなれば、この子を守れる。いや、守るべきだ」


***


そんなある日、森の奥で異変が起きた。


「レオ、危ない!」


ミリアの叫び声が響く。振り返ると、そこには巨大な熊型の魔物が立ちはだかっていた。


鋼熊アイアンベア

体長3メートルを超え、鋼のような硬い毛皮を持つ化け物だった。


「おいおい、これはヤバすぎだろ!」


逃げろ、と言いたいところだが、ミリアの足はすでに震えて動けない状態だ。


「仕方ない、やるしかない!」


俺は熊に向かって吠えた。それはただの威嚇ではなく、全力の咆哮だった。


《スキル発動!『咆哮』》


俺の声が響き渡り、熊が一瞬動きを止める。だがそれも一瞬のことだ。すぐに我に返った熊が、巨大な爪を振り下ろしてくる。


「くっ!」


間一髪でかわし、熊の腹部に跳びかかる。牙を剥き出しにして噛みつくと、硬い毛皮を貫いた感触があった。


熊は苦しそうに吠えながら暴れるが、俺はその場を離れず食らいつく。


《レベルアップ!》

【力】:20 → 30

【スキル『連続噛撃』を獲得しました】


「これが……新しい力!」


スキルの力を借りて連続で攻撃し、ついに熊を倒すことに成功した。


***


戦いが終わった後、ミリアが俺のそばに駆け寄ってきた。


「レオ、本当にすごい! あなた、ただの犬じゃないよね……?」


俺は彼女を見つめ、心の中で誓う。


「この世界で最強になって、この理不尽な運命をひっくり返してやる。そして、神に言いたいことをぶつけてやる!」


ミリアとの旅はまだ始まったばかりだ。だが、俺の中に燃え上がる決意は、誰にも止められない。


「覚悟しろよ、神……柴犬の逆襲はこれからだ!」

需要があれば連載か続編書きます

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