回りくどいな
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
こういうダウナーなツンデレが好きなんです。
見掛けから人を寄せ付けない美人で、見掛け通り冷たい人だった。流氷の様な声で話されると、首元にナイフを突き付けられている気分になる。けれどもそれだけではないと知ったのは、彼女の彼氏について話している時の事だった。
「ああ、彼。君の友人。さてね。この時間は図書館にでも居るんじゃない?」
「そ、彼に会いたいのだね。……回りくどいのは嫌いなんだ。次からは単刀直入に頼むよ」
ぶっきらぼうな物言い。『回りくどいのが嫌い』と言いながらも、本人自身が回りくどい事を言い方をしているのに気が付いているだろうか?
「……何を笑っているの? 傍から見ると気味が悪いから辞めた方が良いよ」
短気な彼女はただそれだけ釘を刺すと、僕を置いて去っていた。
彼女の予想通り、彼は図書館にいた。僕の姿に気が付くと、にっこりと微笑む。広げた本を一纏めにして先に外に出ていった。
「探したよ。君の恋人に会ったから、居場所を聞いたんだ。はいこれ」
僕は頼まれていたお菓子を彼に渡して、隣にちょこんと腰掛ける。
「そう。君から見てどう感じた?」
「……なんと言うか、率直じゃない。回りくどいと言っても良い」
先程の会話。今話している彼女の恋人である君の事を『君の友人』と示した。名前でもなければ、『私の恋人』という訳でもなく。恐らく『そう形容するのが気恥しいから』だと思う。
けれどもきちんと彼が何処に居るかを把握していた。この広い構内で、言い当てて見せた。
「そして普段は君の事を呆れて見るだろうけれども、多分、悪く言う奴が居たら潰すと思うよ」
彼と彼女が普段どのような関わりをしているか、手に取る様に分かる。きっと彼が小さな間違えを起こす度に、白い目で見詰めて来るのだろう。けれどもきっと見捨てられず、なんやかんで面倒を見てしまうのだろう。
「短気なのは本当だろうけれども、君を目詰める心の余裕はある。愛されてると思う」
「やっぱり良い観察眼の持ち主だ」
「なにそれ」
彼と別れた後、見計らったかのように彼女が現れた。僕が持っているお菓子に興味を持ってくれた様で、熱心に見詰めている。
「君が案内してくれた彼から貰ったんだ。大袋だから半分こしよう」
袋の両端を摘んで、左右に引っ張ると、力を込め過ぎたのか、辺りに飛び散ってしまった。幸い個包装なので大事には至らなかったが、散らばったお菓子を見ていると虚しくなる。
「……回りくどいな……」
ちっと舌打ちをし、苛立ちを込めながらも、共に散ったお菓子を拾ってくれる。そうして全て拾い終わると、彼女は踵を返して去ろうとする。
「まだちゃんと半分に……」
「ちゃんと半分だけ持ってる。……君、拾いながら数える技を覚えた方が良いよ」
普段の彼女ならば、相手の名前を呼び捨てにすると思うんです。でもわざわざ『君の友人』って表現するんです。
この時点で無駄を省きたがる彼女らしくない。非常に回りくどい。
なんでそんな面倒臭いことするかって言われたら、『恥ずかしいから』だと思うんですよ。
でも彼の事大好き。何処に居るかも把握して、多分本人の知らないところで見守ってそう。
だからタイミング良く姿を現してますしね。
最後の『回りくどいな……』は『渡してくれたら私から彼に渡したよ。何であの時、渡さないんだよ。“回りくどいな”』、『力加減間違って散らしてんじゃねぇ。面倒臭ぇな。私に渡してくれたらちゃんと分けたわ』です。
惚れた相手にだけ、若干ツンデレになるのが好きなんです。近いのだと渡のお友達。
あの子、彼氏の前だとツンデレなので。