⑥七世が俺の峰不二子と称する女性
・マンションの一室、部屋の前(午後)
マンションの前で七世がインターフォンを鳴らす、その様子を撮影している撮影陣
ピンポーン、インターフォン越しに峰不二子が答える
峰不二子『はい』
七世『あ、、おれ、あのケーキもらってきたよ』
峰不二子『、、、』
七世『不二子氏?ケーキもらったから、もしよかったら食べてよ』
峰不二子『、、、あのいつものつぶれたやつ?』
七世『うん』
峰不二子『え、それで人が喜ぶと思ってんの?それだれか齧ったやつでしょ』
七世『いや齧ってるところは別にわけてあるから』
峰不二子『いらないんだけど』
七世『、、、ごめん』
峰不二子『それだけ?、、、じゃあ、帰って』
七世『いや、いいじゃん、普通になんかさあ、ケーキとか食いながらなんかさあ、話とかしたくてさあ』
インターフォンが切られる、返答はない
七世『不二子氏?、、、じゃあケーキ置いてくから、よかったら食べて』
七世、ケーキを扉の前において移動する、扉の死角にしゃがんで待機している
ディレクターは七世に語り掛ける
ディレクター『、、、あの、、、まあ、帰ります?』
七世『いや、あいつ、いっつも出てくるから、ちょっと待って』
~カット割る~
七世、峰不二子が出てくるのを待っている
峰不二子、ケーキを廃棄する為に部屋からでてくる
七世『よお』
峰不二子『えなに、これゴミにするから持って帰ってくれない』
七世『、、、』七世、ケーキを拾い上げる
峰不二子『かえって』
七世『あの、久しぶりに寄ったんだからちょっと顔見せるぐらいいいじゃん』
峰不二子、イラっとして部屋から出てくる
峰不二子『あのさあ、もうこういうことでいちいち来るのやめてもらっていい?私には私の生活があるわけそれをいちいち干渉されたくないわけ、なんかそういうゴトとか依頼があるなら話ぐらいは聞いてもいいけど、わざわざ用もないのに来られたくないわけ、今、あんたそんな浮いた話がないことぐらい知ってるから、わからない?そういうの?』
峰不二子、カメラが盗撮していることに気づく
峰不二子『え、なに、なにこれ撮ってんの、ちょっとなに』
七世『依頼で、その怪盗の仕事を取材してもらってて』
峰不二子『はあ、あんたなに言ってんの、ちょっとやめなさい、ちょっと消して』
峰不二子、カメラマンの撮影を止める
カメラマンはカメラを下に向けて撮影を中断しているように見せかける
~カット割る~
峰不二子『え、なんでこんなことしてるの?あたまおかしいの?』
七世『だから、その、怪盗もいろんな人にそういう仕事があるって知ってもらわないと依頼もこないし、それにおれ以外にも怪盗がいないとその本当にやる人いなくなっちゃうから、そういう仕事があるって世の中のみんなってわけじゃなくてもそういうのを一部のひとだけにも興味持ってもらって知っていってもらわないといけないわけじゃん、昔は口コミだけで使ってもらってたけど、それにこの人たち自身も怪盗を撮りたいって言って依頼して来てるわけで』
峰不二子『あんた、怪盗でしょ、人目につくようなことしたらダメでしょ』
七世『いやだから、あとでモザイクとか入れてもらって声も変えてもらって、その直で俺ってわかんないようにしてもらうから、そのマーケティングなの、マーケティング、今の時代って、こういうことやんないと意味ないのよ、だからこれも必要なんだって』
峰不二子『怪盗をその辺の仕事と一緒にしちゃダメでしょ、自分がやってることわかってんの?』
七世『いや、その、時代が変わってるってこと不二子氏こそ知らないんだって、その歌舞伎とかもなんか変な漫画とコラボとかしてるじゃん、怪盗にもそういうのが必要で、だからさあ俺本当は不二子氏にも取材とかもお願いしたいわけ、、その俺の事をさあ、ちょっと知ってるわけじゃん不二子氏は、俺の仕事のさあ、仲間みたいな人の取材とかもさあ、依頼になるんだってだからさあ、不二子氏に頼みたいわけよ』
峰不二子『なんで私がそんなことしないといけないわけ、、、だから撮るなって勝手に!』
カメラマン、後半、ゆっくりとカメラを上げてだんだと峰不二子の顔を撮影していく、そのことに気づいた峰不二子がカメラを制止して
~カット割る~
・マンションの一室(午後)
峰不二子『これモザイクとか声変えたりとかしてもらえるんですよね』
ディレクター『あ、はい、大丈夫ですよ、完全にプライバシーが守られる形になりますから、そういう編集ですから、』
峰不二子『え、、その客商売をしてるんで、私も、本当にその、そういうことに関わってるっていう噂があったら、本当に困るんで、ちょっとそれは気を付けてくださいね』
ディレクター『あ、はい、それはもう絶対大丈夫ですから』
峰不二子『じゃあ、お願いします』
ディレクター『えっと、それでは、はい、いきますね、、、それではええと、Mさんですね、怪盗の七世さんのことについて詳しい方ということで取材のほうお願いします、、、それではMさんのご職業をお伺いしてもいいですか?』
峰不二子『あ、言いたくないです』
ディレクター『、、、ああ、すいません、えっと、ご職業はその怪盗といいますか、そういったことと関与してるわけではないんですよね』
峰不二子『はい、そうです、盗みとは関係ない仕事をしてますね』
ディレクター『ではなにかそのどういう関係なんでしょうかね、その七世さんとのご関係は?』
峰不二子『関係ってどういう、』
ディレクター『あの、七世さんが怪盗をされてることをご存知でなにか関係されているんですよね?』
峰不二子『はい』
ディレクター『ということはMさんもやはりなにか、Mさんご自身が盗みに関わるような、何かその盗みの依頼をされたとか、その怪盗の依頼にご協力されたとか、そういったことがおありなんでしょうか?』
峰不二子『わたしが盗みに関わったかどうかっていうことをこういう形でお聞きになるのでしたら、それは関わったことはないとお答えしますね、だってそちらが期待するようなことがあったとしたら、それこそ絶対に言わない方が私の為になりますよね、そこはこちらにケアしてほしいですね、あくまで私は協力してる立場なので、』
ディレクター『すいません、失礼しました、そうですよね、すいません、こちらの配慮がたりませんでした』
ディレクター『そうですねえ、あの、もっとシンプルに、その七世さんとのご関係っていうんですかね、プライベートなイメージで、そのMさんから見た感想みたいなことで良いんですけど、事実がどうこうとかじゃなくて、印象って言うんですかね、その七世さんとどういう普段の向き合い方、お付き合いのしかたをされてるんでしょうかね』
峰不二子『いや、私は別にあの人と関わりたくないんだけど』
ディレクター『関わりたくはないけれど、でもやっぱり取材についても協力して頂いてるわけじゃないですか?だからやっぱりその関係を切るつもりならスパッと関係を切って、もうこういう取材とかも協力されないほうがいいじゃないですか?だからなんでなんだろうって思いまして、関わりたくはないけどなにか関わらないといけなくなるようなことがあるっていうなんか脅されてるとかそういう契約があるとかっていうことなんでしょうかね?そういうことがあればまあ言えないと思うんですけど、、、』
峰不二子『まあ、そうですね、そういう少しでも私がグレーに思われるようなことは答えたくないですね、でもあの人が私になにかを強制できるような事は何もないですね、そういう関係はないんで』
ディレクター『はい、ありがとうございます』
峰不二子『その、なんていうんだろう、今って、確かに別に関係を切ろうと思えば簡単に切れて、それでまあ、もう二度と会わなくなるようにもできるじゃないですか?別にそれはそれでいいじゃないですか、うざかったら実際、そうするんで、でもなんていうんだろ、それをするほどでもないというか、そういうことを簡単にしすぎるのはなんかわがままかなって、しょうがないじゃないですか、知り合ったんだし、そういう人と知り合っちゃったことも含めて私の人生みたいな、、、あの人は微妙に嫌は嫌ですよ、なんかこういう干渉されるのももう結構嫌なんで、正直いなくなってくれて構わないんすけど、まあそんなに実害が出てないうちは、まあまだ、良いかなって、まあ、そのごみを持ってくるぐらいしか害のあることはしてこないんで、』
ディレクター『はあ、なんかそういうご近所付き合いみたいな感じなんでしょうかね』
峰不二子『まあ、そういう感じが近いかもね、そういう相手って私あんまりいないんで』
~カット割る~
ディレクター『ではその、七世さんのご職業についてはどう考えておられるんですか?実際にそういう免状があって七世さんはその怪盗という職業に就かれてやられてるわけじゃないですか、それについてはどう思いますか、』
峰不二子『怪盗の職業うんぬん、っていうか、あれはなんかだらしないだけじゃないですかね、あの、別に仕事が他にないっていうことはないと思うんですよね、だってなんかいろいろアルバイトとか探せばあるじゃないですか、結局、盗みって儲かんないんで、もう今の時代、そんなんを万引きおばさんみたいに趣味でやってるとかならまだしも、仕事にしてるっていうのは、まともな仕事に就くことすらめんどくさがるやつがやってるってだけなんですよ、ごめんなさい、まともな仕事っていうか、まともじゃない仕事?も含めて、だって、普通にいま、お水とかでも全然稼げるんで、まともじゃない仕事も含めて、そのただなんもしたくないっていう理由だけで怪盗やってるんだと思いますよ、自分のこと怪盗だって思っとけばとりあえずなんもしてなくてもなんか許される感があるじゃないですか?だからあの人、サボってるだけ、人生を、だからたしかに害はない人なんですけど、まともに相手するだけ時間の無駄なんですよ、免許使って儲かるとかってことは確かにたまにあるんですけどね』
ディレクター『はい、すいませんありがとうございます』
~カット割る~
・マンションの一室、(午後)
峰不二子のインタビューを終えて部屋から出ていく撮影陣の二人
ディレクター『すいません、ありがとうございました』
扉を開けて出ていく、二人
外には七世が待っていた
ディレクター『あ、すいません、、終わりました』
七世『、、、お疲れ様ー』
七世、その場を動かずに撮影陣が帰るのを待っている(撮影陣が帰ったら峰不二子の家に入りたいと考えていそうだ)
ディレクター『あの、七世さんを家に入れないようにって言われてるんで』
七世『あ、そう』
ディレクター『いきましょうか』
七世は不服そうについてくる