表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/64

第62話:ネイルの効果と模擬戦!

 アリスたちは住居不足の解決策として、ストーンハイムのドワーフたちに協力を依頼するために特別なネイルアイテムを作ることを決意し、それぞれが素材を集めるために動き出した。


まず、マーチが真っ先に教会に戻ってきた。彼の顔には疲労の色が浮かんでいたが、その瞳には希望の光が宿っていた。手に持った大きな袋には、狩猟したフォレストディアーの角が詰まっている。

「アリス、これ、今まで狩猟したフォレストディアーの角だよ。これには力の増強効果があるんだ。増強薬として使われるから、きっとネイルの素材としても役立つはずだよ。」


マーチは角をアリスに手渡しながら、自分が役立てたという満足感を感じていた。かつては臆病だった自分が、今では村のために貢献できることを誇らしく思う。


アリスは角を受け取り、その硬さと質感を確かめた。彼女は微笑み、マーチに感謝の意を込めて言った。

「ありがとう、マーチ。これならきっとネイルの効果を高められるね。」


マーチはその言葉に、胸の奥で暖かい何かが広がるのを感じた。彼の中で、『自分もこの村に貢献できるんだ』という自信が確かなものとなっていった。


次に、エースが籠を抱えて戻ってきた。籠の中にはいくつかの特別な果実が入っている。彼もまた、遠くまで足を運んだためか、疲れた表情をしていたが、その表情には満足感が漂っていた。

「アリス、これ、ローズからもらってきたんだ。疲労回復と再生能力をもつ特別な果実なんだって。元々は弱っている森の動物達に与えるものらしいけど、事情を話したら分けてくれたんだ。」


エースはアリスに果実を手渡しながら、かつての自分を思い出していた。かつては力の使い方を誤り、多くの人を傷つけてしまった自分が、今ではこの村の発展に貢献できるなんて……彼は畑を耕すことで、人々のために役立っている実感を持ち、そのことに深い感謝を感じていた。


アリスは果実を手に取り、その香りを嗅いだ。新鮮で甘い香りが漂っている。

「ありがとう、エース。疲労回復と再生能力の効果は、きっと怪我をしているドワーフ達の助けにもなるね。」


エースはその言葉に静かに頷いた。

『今度こそ、俺は人々のために役立つんだ……』その決意が、さらに強くなっていくのを感じた。


続いて、ブラックビショップが重厚な瓶を持って現れた。彼の眼差しには決意と誇りが込められていた。

「これは教会の裏の森に生えているエルダーツリーの樹液を集めたものです。身体機能の向上に役立ち、薬としても使えるものですが、少しでもお役に立てればと。また、長い年月をかけて発酵させ、大切に守り抜いてきたものです。その純度と効果効能は私が保証いたします。」


ブラックビショップは、アリスにこの貴重な素材を手渡すことで、自分がこの村のためにできる最大の貢献をしていると感じていた。


アリスは瓶を受け取り、その中身を確認した。樹液は黄金色に輝いていた。

「ありがとう、ビショップ。こんな貴重なものを……大事に使わせてもらうね。」


ブラックビショップはアリスの言葉に深く頷きながら、自分の選択が正しかったことを確信した。彼もまた、この村での役割に誇りを感じていた。


最後に、ハッターが森の精霊の結晶を手にして戻ってきた。その顔は自信に満ち、胸を張ってアリスの前へと降り立った。


「我が君、森の精霊と交渉して参りました。これには集中力を高め、精神安定の効力が認められます。これは大変希少なものですし、肉体労働で疲弊しているドワーフたちの助けになるでしょう。」


ハッターは、この結晶がどれだけ貴重であるかを理解しており、アリスがそれをどう受け取るのか内心で期待していた。


アリスは結晶を受け取り、その美しい輝きに見とれた。

「ありがとう、ハッター。これで準備は整ったね。早速ネイルの生成に取り掛かろう!」


ハッターはもっと褒めてもらえると思ったのか、意外とあっさりと受け取られてしまったことに、悲しげに肩を落としていたが、すぐに表情を引き締めた。


その時、リリーが教会の中で古びた扉の奥に粉砕機を見つけた。彼女は急いでアリスの元へ駆け寄った。


「アリス様、古い粉砕機を見つけました!まだ使えるかもしれません!」


アリスはリリーに感謝し、早速粉砕機を確認しに行った。

「ありがとう、リリー。これなら硬い素材も加工できるし、小麦が採取できた時には小麦粉にもできるね!」


アリスはリリーの頭を優しく撫で、感謝の意を込めて微笑んだ。リリーはその言葉に得意げな笑みを浮かべ、嬉しそうに微笑んだ。その様子を一人羨ましそうに見つめるハッターの姿があった。



 アリスは教会の地下室に魔力の泉の水を汲み、早速ネイルの生成に取り掛かった。まず、フォレストディアーの角を粉砕機で細かく砕く。


次にエースが持ってきた果実をすりこぎで丁寧に潰し、ガーゼで濾しながらエキスを抽出した。


「エース、この鍋に魔力の泉の水を入れてくれるかな?」


「おう!」

エースはバケツの水を鍋に入れ、アリスがその間に火の魔法陣を床に描いて大鍋をその上に置いた。煮え立つ泉の水に、砕いたフォレストディアーの角、抽出した果実のエッセンスを加える。


さらに、ブラックビショップから提供されたエルダーツリーの樹液も少量ずつ加え、慎重に混ぜ合わせた。

「この樹液は貴重なものだから、慎重に少量ずつ加えていこう。」


最後に、ハッターからもらった精霊の結晶を慎重に砕き、粉末状にして混ぜ込んだ。


すべての素材を混ぜ合わせて一煮立ちさせると、濃い琥珀色の塗料が完成した。その塗料は高級感があり、見るからに特別なものだとわかる。


「これで完成だね。」


アリスはテストを兼ねて、その塗料をネイルブラシでエースとマーチに塗布した。魔力の泉の水を使った塗料は輝きを増し、生きているかのように光を放った。


「すげぇ!力がみなぎってくるぜ!今ならなんだってできそうだ!」

エースは拳を握りしめ、その力強さを確かめた。


「僕でも感じるよ、すごい力だ。今ならどんな獲物も仕留められる自信があるね。」マーチも弓を構え、その集中力の高さに驚いた。


仕上がった塗料を見て、ハッターはしげしげとそれを眺め、二人に告げた。


「では、このネイルの効力を確かめるために、二人で模擬戦でもしていただきましょうか。」


「模擬戦!?」

エースとマーチは驚いた声を上げた。


「これから交渉する相手は大国、ハーランド王国の奴隷商です。中途半端なものを献上し、トラブルになっては今後の情勢に影響を与えかねません。テストは必ず必要です。ですよね、ご主人様?」


「そ、そうだね……効果は確かめたいけど……模擬戦じゃなくてもいいんじゃないかな。」

アリスは少し心配そうに答えた。


「最も手っ取り早く効率的に効果を確認できる方法は模擬戦です。それに、彼らの力量も知っておきたいでしょう?さあ、では早速教会の庭で模擬戦を行っていただきましょう。」


ハッターの言葉に、全員が顔を見合わせたが、確かにこれが最も効果的な方法だと考え、異論は挟めなかった。アリスは心の中で彼らの安全を祈りつつ、模擬戦の開始を見守る決意を固めた。



 アリスたちは教会の庭に集まり、エースとマーチの模擬戦を見守っていた。庭は広く開けており、周囲には教会の住民たちが集まって、二人の戦いに注目していた。アンデットたちは警戒態勢を整え、緊張感が漂う中、エースとマーチは互いに向き合った。


エースとマーチは、それぞれの戦闘準備を整え、互いの顔を見つめた。二人は戦友として仲間として共にここまでやってきた。しかし、この瞬間だけは、互いに絶対に負けたくないという強い決意がその瞳に宿っていた。


エースは『俺はインフェルナの戦士だ、ここで負ける訳にはいかない……贖罪の日々の中でも、剣の練習は怠らなかった。成長した自分を見せつけてやるんだ。昔の俺とは違う!』と自分の心の中の炎を激らせた。

マーチは『アリスが見ているんだ、ここで負けて情けない姿は見せたくない……あの頃の、一人ぼっちだった自分とは違うんだ。絶対に負けない!』と自分を奮い立たせた。


エースの手には双剣が握られており、その刃はネイルの魔法によっていつも以上に鮮やかな炎を纏っていた。彼は自分が強化されたことを感じ、心の中でその力を試す覚悟を決めていた。一方のマーチは、弓を構えながら自分の集中力と冷静さが通常よりも研ぎ澄まされていることに気づき、これまでにない自信を感じていた。


「エース、準備はいいかい?」

マーチが低い声でエースに問いかける。


「もちろんだ、マーチ。いつでも行けるぜ!」

エースは力強く応え、双剣を軽く回しながら、すでに全身にみなぎる力を感じていた。


「では、始め!」

ハッターの合図が響くと同時に、エースは爆発的な速度で地面を蹴り、双剣を構えてマーチに向かって突進した。その瞬間、エースは自分の身体が以前とは違う感覚に包まれていることに気づいた。動きがまるで羽のように軽く、そして力がみなぎっている。


『これは……!』

エースはその感覚に内心驚きながらも、双剣を全力で振り下ろした。炎が刃を包み、熱気が庭全体に広がった。その力を最大限に活かして攻撃を仕掛けた。双剣が空を切り裂き、燃え上がる熱が周囲を包む。


アリスは息を飲み、その場に立ち尽くして二人の戦いを見守った。エースの動きは信じられないほど速く、強力だった。

「エースってこんなに強かったんだ……?」

彼女の心には、彼がさらに強化されていることへの驚きと誇りが交錯していた。彼の体が地面を蹴るたびに、砂埃が舞い上がり、まるで嵐の中で戦っているかのような錯覚を引き起こす。アリスの心臓は激しく脈打ち、彼女は思わず祈るように手を胸に当てた。


『マーチ……大丈夫……?』

彼女は心の中でそう呟きながら、二人の動きを一瞬も見逃さないように目を凝らしていた。

エースの双剣は炎を纏い、燃え盛るような光を放っていた。彼の動きはアクロバティックでありながら、いつも以上に力強さが増していた。ネイルの魔法によって、彼は自分の限界を超えた力を発揮していた。しかし、その圧倒的な力にも、マーチは冷静さを失わずに対抗していた。


一方で、ハッターは冷静に二人の戦いを観察していた。彼はエースの猛攻を見つめながら、その動きの精密さに感心していた。だが、その一方で、エースの戦闘スタイルに潜む弱点をも見逃さなかった。

『力と速度は申し分ないが……エースには隙がある。やはり、エースは勢いに任せすぎていますね。』

ハッターは心の中で冷静に分析を続けた。


しかし、そんな猛攻の中でもマーチも冷静さを失うことなく、静かに矢を放ちエースの攻撃をかわし続けた。彼は自分の集中力が限界以上に高められていることに気づき、エースの動きを正確に読み取ることができていることを実感していた。


『この集中力……ネイルのおかげか?』

マーチは内心でそう考えながらも、目の前のエースに全神経を集中させていた。彼の動きは、まるで時間がスローモーションになったかのように鮮明に見えていた。


「俺の攻撃をすべてかわすとは……!お前やるな!」

エースは驚きながらも、さらに力を込めて双剣を振り下ろした。だが、マーチはその攻撃を冷静にかわし、エースの背後に回り込んで弓を引き絞った。


「まぁね……これでどうだ!」

マーチは三本の矢を同時に放ち、エースの動きを封じ込めた。矢は精確にエースの足元に突き刺さり、彼の動きを封じた。


マーチはエースの攻撃を巧みにかわし、彼の隙を狙って次々と矢を放って反撃した。彼の動きは冷静で、計算されたものであり、一瞬の隙も見せない。ハッターはその姿を見ながら、マーチの判断力と集中力の高さに感銘を受けた。


『さすがマーチ、冷静さと正確さが際立っている。しかし、持久力が問題ですね。エースのパワーに対抗するには、さらなる体力が必要でしょう……』

ハッターはそう思考しながらも、二人の成長に期待を寄せていた。


「これで終わりだ!」エースが力強く叫び、全身の力を込めた一撃をマーチに向けて放った。その瞬間、地面が震え、炎が大きく燃え上がった。アリスはその激しさに驚き、手を握りしめて祈るように見守った。


だが、マーチはその瞬間を見逃さなかった。彼は冷静にエースの攻撃を見極め、最後の一歩を踏み出した。彼の矢は、エースの攻撃の隙間を縫うように放たれ、正確にエースの足元へと突き刺さった。


「何だ!?」

エースは足を止めた。だが、その瞬間に自分のミスに気づいた。

『普段ならもっと速く反応できたはずだ……ネイルの効果で力が強化されたからこそ、動きの予測が難しくなったのか……?』

エースは自分の動きの変化に驚きつつも、放たれた矢のせいで動きを止めざるを得なかった。


その隙を突いて、マーチはさらに追撃を加え、エースの喉元に矢を突きつけた。


「チェックメイト。」

マーチは冷静に言い放った。その瞬間、エースは自分が完全に敗北したことを悟り、悔しそうに笑いながら剣を下ろした。


「参った……お前の勝ちだ、マーチ。」

エースは息を整えながら、普段とは違う自分の動きに驚きを隠せなかった。


マーチも微笑みながら矢を下ろした。

「ありがとう、エース。でも、僕も驚いているよ。こんなに冷静に集中力を切らずに戦えるなんて……ネイルの魔法が、僕の集中力をここまで高めてくれたんだ。」


二人の動きを見ていたハッターは冷静に分析を始めた。彼は戦闘中、エースとマーチの動きが普段よりも圧倒的に速く、力強くなっていることに気づいていた。そして、それがネイルの魔法によるものだと確信していた。


「エースの力がこれほどまでに強化されるとは……まさに驚異的な効果です。だが、力に頼りすぎたことで判断が鈍ったかもしれない。マーチは冷静さと判断力を保ち、エースを圧倒しました。彼らの力がどれだけ強化されたか、これで十分に証明されましたね、我が君。」

ハッターは微笑みながらアリスに告げた。


アリスも安心し、笑顔を浮かべて二人に歩み寄った。

「本当にすごかったよ、エース、マーチ。怪我はない?ネイルの効果を実感できた?」


エースは大きく息を吐きながら、力強く頷いた。

「ああ、俺は普段よりも圧倒的に力がみなぎってた。でも、その分、動きが少し大雑把になったかも知れねぇな……」


マーチも頷きながら答えた。

「僕もだよ。集中力が高まりすぎて、エースの動きをすべて読み取れるような気がした。これがネイルの力なら、俺たちはもっと強くなれる。」


二人の感想に、アリスは満足げに頷いた。

「二人のおかげでネイルの効果が十分に確認できたよ、ありがとう。これで、ドワーフたちとの交渉にも自信を持って臨むことができるね!」


ハッターが拍手をしながら二人の元にすーっと近づいていった。

「お疲れ様でした。両者共に素晴らしい試合でした。しかし、いくつか課題も見えました。聞く気はありますか?」


エースとマーチはその言葉に一瞬驚くもすぐに頷いた。ハッターは微笑みながら確信をつくアドバイスを送った。

「まずエース、あなたのパワーと派手な動きは敵を圧倒する力がありますが隙が多すぎます。動きが大きくなればなるほどそれだけ破壊力も増しますが、相手にも攻撃のチャンスを与えることになることになります。もう少し冷静な判断ができていたならマーチに負けることはなかったでしょう。」


エースはまさに感じていた点を的確に指摘されて図星をつかれた気分になった。悔しそうに奥歯を噛み締めながら小さく頷く。

「分かった……そうだな、戦況を見極める冷静さは必要だと俺も思う。気をつけてみるよ。」


そしてハッターはマーチに向き直った。

「それからマーチ。あなたは冷静に戦況の判断ができており、攻撃も全てが的確でした。実に素晴らしい。しかし、もっと長期戦に持ち込まれていたならあなたに勝機はありませんでした。あなたの今後の課題は基礎的な体力づくりと持久力だと思います。」


マーチも痛いところを突かれて苦笑いをした。確かに体力のなさは戦闘では命となる。分かってはいたけど避けられない問題だと痛感し彼は小さく頷いた。

「わかりました、ハッターさん……もっと体力をつけるための鍛錬に励みます。」


「結構。両者とも素晴らしい活躍でしたよ。これに慢心することなく精進を続けてください。」


周囲からは拍手と歓声が上がり、アリスも自分が作り出したネイルの効果に確信を持ち、次の一歩を踏み出す準備が整ったことを感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
久々のネイル生成!やっぱりこれがないと!
2024/12/13 23:01 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ