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第52話:ネイリスト、アンデットを従える!

 翌日から、アリスたちはアンデッドたちと共に墓地の整備や教会の再建に取り掛かっていた。骨ばった手で墓石を整え、雑草を引き抜くアンデッドたちの姿は、見る者に不気味さと同時にどこか哀愁を漂わせていた。しかし、その動きには確かな決意が感じられた。


「この地を整えることで、我々の魂も浄化されるように感じます。」

リーダーが言葉を発すると、その声には穏やかな響きが宿っていた。アリスは微笑み、彼に近づく。


「あなたは本当に頼りになるね。この地を守るために尽力してくれてありがとう。」アリスの言葉に、リーダーは深く頭を垂れた。


「いえ、アリス様。我々がこうして動けるのも、全てはあなた様のおかげです。」

彼らの忠誠心は揺るぎなく、アリスはその姿に胸を打たれた。特に印象的だったのは、アンデッドたちが食料も休息も必要とせず、昼夜を問わず働き続けることだった。彼らはまるでアリスのために生きる喜びを見出しているかのように、生き生きと作業を続けていた。


その日、リーダーがアリスの元へやってきた。

「我らが神、アリス様。お願いがございます。どうぞ私に新たなる名前を授けてくださいませんか?」


アリスはきょとんとした表情を浮かべた。

「名前? あなたには生前の名前があったんじゃないの? その名前はいいの?」


リーダーは少しの間沈黙し、穏やかに答えた。

「私は既に死せる者です。そして、私はかつてベリアルス様に仕え、この地で司祭としてその名を使っていました。ですがその名は捨て、新しく救われたこの魂であなた様にお仕えしたいと存じます。この願いを、どうか聞き入れてはくださいませんか?」


その時、ハッターがふわりと現れ、頭を下げて言った。

「我が君、新しい名を冠すれば彼らも貴方の庇護下に入り、新たなる力を得る事もできます。必ずやアリス様のお役に立たれる事でしょう。」


アリスは考え込んだ後、彼らの願いを受け入れることにした。彼女は目を閉じ、リーダーに相応しい名前を考え始めた。彼女は一瞬、名前を授けることの責任の重さに押しつぶされそうになったが、それでも前に進むことを決意した。

アリスは彼に名前を授ける決意を固めたが、内心では迷いもあった。『本当にこの名前でいいのだろうか……?』それでも、目の前のアンデッドたちの切なる願いに応えたいという思いが、彼女の心を押し動かしていた。

彼の姿は白骨化した骸骨の姿で、かつて司祭であったことを示す高貴な服装も今ではボロボロだった。やがてこれだけの数のアンデッドを束ねる者として相応しい名前が浮かんできた。


アリスは深呼吸するとゆっくりとその名を告げた。

「……『黒の司祭ブラックビショップ』という名前はどうかしら?」


その瞬間眩い光がアンデットたちを包み込み、リーダーであったブラックビショップが骸骨姿のまま聖職者らしい黒の祭服を見に纏い威厳ある姿で目の前に現れた。


以前にも名前を授けたことはあるが、今回はその場にいたアンデットたち全員にその影響が行き渡ったようだ。

アリスは何気ない自分の言葉の効力に驚きながらも彼らの仲間全体が変化した様子をハッターに尋ねた。

「ねぇ、ハッター。彼だけに名前をつけたはずなのに他のアンデットたちも服装や様子が変わったんだけど……」


ハッターは冷静に分析しつつ告げた。

「おそらく彼らは“群れ”として全体が進化を遂げたのではないでしょうか。彼がこのアンデットのリーダーで、それに付き従うものも貴方の庇護下に置かれたということです。よって、この場にいる120体のアンデット全てがアリス様の配下となられたのです。」


「え、ええ〜!!」

アリスは驚きのあまり大声をあげたが、リーダーの目も驚きで見開かれ、その顔に深い感謝が表れた。


「黒の司祭ブラックビショップ……このような名前を授かることは誠に光栄でございます。ありがとうございます、アリス様。」


アリスは戸惑いながらも優しく微笑み、彼に手を差し出した。

「これからも、私たちと一緒に頑張ろうね。」


ブラックビショップはその手を握り、跪いて誓った。

「はい、アリス様。この地をあなた様のために守り続けます。そして、我らが新たなる神を崇め敬い、信徒を増やすことにこの魂を捧げましょう。」


「別に信徒は増やさなくてもいいんだけどな……」

アリスは困惑した様子で呟いた。しかし、ハッターとブラックビショップは互いに盛り上がっている様子で、アリスの偉業を賛美し続けた。


その後も、アリスたちはアンデットたちと共に墓地の整備を続けた。雑草はすっかり取り除かれ、墓石は整然と並び、教会の修繕も順調に進んでいった。アンデッドたちはアリスを新たなる神として崇め、その信仰心に基づいて、彼女のために全力を尽くしていた。


アリスはその光景を見つめながら、心からの感謝を抱き、新たなる決意を胸に秘めた。アンデッドたちと共に、この地を守り、再び繁栄させるために尽力することを誓った。



 その後、アリスは教会に張られていた結界の解除に向かった。アンデッド達にも教会の中に入ってもらうためだった。ハッターに抱えられ天井まで向かい、月光の短剣で防御壁を張っている魔法陣を解除すると、教会内部にアンデッドたちがぞろぞろと入り込んできた。


カイルは、アンデッドが教会内に入り込む光景を見て、背筋が凍る思いをした。アンデットたちが一歩、また一歩と教会に足を踏み入れる度にカイルの心臓が鼓動を早め、手が震えた。

「これ、本当に大丈夫なのか……?」

彼の声には、不安と恐れがにじみ出ている。


オーリンも同様に、目の前の異様な光景に冷や汗をかきながら、アリスに対する信頼を胸に抱いていた。

「これは流石に……すごい光景ですね……」

彼の声は震えているが、アリスを信じようとする意志が見え隠れしている。


ブラックビショップは祭壇に飾られた棺を見つめ、不思議そうに首をかしげた。

「あの棺は一体……」


すると、ハッターが自慢げに答えた。

「これは我が主、アリス様の寝台です!アリス様は毎夜この寝台でお眠りになられているのです!」


「おおお!」

「なんと素晴らしい……!」


アンデッドたちの間で歓喜の声が広がった。アリスをはじめとする仲間たちは、その盛り上がりに戸惑いを隠せなかった。


「流石は我らが女神様!」

「素晴らしい棺だ!」


賛美の声が次々と上がる中、ハッターは満足げに頷くと、アリスを抱き上げ、彼女をその寝台……もとい棺に横たえた。

「これがアリス様のお眠りになるお姿です!」


「おおお〜〜!!」

再び歓声が上がり、アンデッドたちは跪いて手を結び、祈り始めた。


「なんと神々しい……!」

「お眠りになられるお姿まで聡明であらせられる……!」

「なんとお美しい……!」


アリスは棺に収められ、歓声を浴びながら複雑な心境でいた。

これって信徒がアンデットだから私が死んでる様に祀られてる姿に感動して喜んでいるわけじゃないよね……と一抹の不安を抱えつつ、横たわる。そっと視線を仲間に向けるが誰も助けてくれそうにはない。


何故か自慢げなハッターと喜びに咽び泣く信徒達の為、アリスは暫く棺から出ることができなかった。



 二日目の晩。食料が底を突きかけていた。アンデッドたちは食事や睡眠を必要としないため、食料事情の改善には知恵が回らないようだった。


エレオノールは、わずかに残る食料を見て考え込んだ。

「このままだと食べ物がなくなるわ。町で仕入れるのは難しいし、何か方法を見つけないと……」


カイルがオーリンに尋ねる。

「お前、一人だった時はどうやって食料を確保してたんだ?」


オーリンは少し戸惑いながら答えた。

「僕は弓が得意だから、狩猟で賄っていたよ。でも、この辺りで獲れるのはフォレストラビットくらいだから、全員分となると厳しいかも……」


エレオノールは眉をひそめた。

「狩猟だけでは限界がありそうね。森の中で採取できる場所はないかしら?」


その時、ブラックビショップが名乗りを上げた。

「この先にドライアドが管理する花園があります。森は豊かで、恵みが多いはずです。」


カイルが疑わしげに呟く。

「300年前の情報じゃねぇだろうな……」


「ドライアドは長寿の精霊ですから、問題ないでしょう」とハッターが補足した。

「私が偵察して参ります」


「お願いできる?」

アリスが頼むと、ハッターは一礼をしてからふっと姿を消し、数分後に再び現れた。カイルはハッターのあまりの仕事の早さ驚き、手元が狂い、椅子から転げ落ちた。


「果物をつけた木々がありました。おそらくドライアドの庇護下にある森です。」


アリスはホッとした表情を見せる。

「果実があるなら、食料問題は一時的に解決できそうだね!」


しかしハッターがすぐに制止する。

「お待ちください。ドライアドは自然を守る精霊です。彼女たちの許可なく採取することは非常に危険です。まず少数で話し合いに行くべきです。」


アリスは考えを巡らせる。

「自然の精霊か……どんな代価を求められるのかな。」


ハッターは自信を持って答えた。

「おそらく豊かな水でしょう。アリス様なら提供できるかと」


「うん。エレメンタル・グレイスが使えるから、何とかなると思う。」

その言葉に、ハッターとアンデッドたちは歓声を上げた。アリスは少し照れくさそうに笑い、頷いた。


「じゃあ、ハッター、カイル、それからオーリン、一緒に行こう。帰り道で狩猟もできれば、少しでも食料事情が良くなるよね。」


オーリンは少し戸惑いながらも、アリスの頼みに頷いた。アリスの指示に従うことが、彼にとって唯一の安心だった。

「う、うん。僕でよければ……」


「じゃあ、このメンバーでドライアドの花園へ行こう!」

アリスの決意が固まり、一行はドライアドの住む森へと向かった。

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― 新着の感想 ―
なんだかものすごい集団に…。 祀られるアリスに笑いました!
2024/12/13 21:45 退会済み
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