第32話:ネイルの生成と旅支度
次の日、私は先生に昨日採取した素材を見せるように言われた。
机の上には大きな瓶いっぱいの青い液体、リリーパール、巨大魚の鱗、ミスティックブルーム、そして精霊からもらった宝石のような石を並べた。
「凄いな……昨日だけでよくこれだけ集めたものだ。」
「私、採取が大好きなんです。ゲームでもよく採取ばっかりしていて……」
「げい、む?」
「ああ、いえ、なんでもありません!とりあえずこれが昨日採取してきたもの全部です。」
先生はまず精霊から貰った宝石を手に取り、光にかざしてキラキラと輝くその光景をしばし見つめた後、私に向き直って言った。
「これは水の精霊の精霊石、アクアクリスタルと言って、精霊から何かしらの恩恵を受けて与えられる特別な素材だ。とても貴重なものだ。精霊からの加護と祝福が付与されているため、どこでも水魔法を使うことができるぞ。」
「す、すごい!そんな凄い代物を私がもらっちゃったんですね……。」
「泉の主を倒してくれたことへの感謝の証だ。ありがたく受け取っていい。」
「わかりました。」
萎縮してしまう私の背中を、先生は優しく撫でてくれた。私は先生の支えに感謝し、心が温かくなるのを感じた。
「こっちの液体はどうやらミスティックウォーターだな。ポーションや薬にも使われるものだ。これだけ大量にあるのは珍しいし、非常に純度も高い……含まれている魔力量も相当だ。」
先生は大瓶に並々注がれた青い水を見てそう言った。次に先生は巨大魚の鱗に手を伸ばした。
「この鱗にも水魔法の力が含まれているな。色味も七色に輝いて綺麗だし、乾燥させてから粉末にしてみよう。心臓と目玉は……ミスティックウォーターで煮込んでみるか?」
「ええ!?」
「水性生物の素材は液体に溶けやすい。乾燥させるよりそのまま溶かす方が高い魔力を抽出できるとはずだ。」
「わ、わかりました……やってみましょう。」
私は先生に教わった火の魔法陣を机にチョークで描き、鍋を置いた。そこにミスティックウォーターを注ぎ、泉の主の心臓と目玉を入れる。しばらく煮込むと、素材はすんなりと溶けて綺麗に消えてしまった。
「本当だ、消えた……。」
「生の鱗も入れてみるか。料理で余った素材だが、これにも水魔法の魔力が含まれている。相乗効果が期待できそうだ。」
料理で余った鱗を鍋に入れると、虹色の輝きが水に溶け出し、美しい青い液体に変化し始めた。
「わぁ……綺麗ですね。」
「そうだな。まるで泉の透き通る青のようだ。ここにアクアクリスタルを少し砕いて入れてみるか?」
「はい!」
私はアクアクリスタルをナイフで削ろうとしたが、短剣に持ち替えた。
月光の短剣の方がより細かく削れるし、素材の魔力を引き出してくれると思ったからだ。ゆっくりと少しずつクリスタルを削り、中に注いでいく。
すると青い液体は輝きを増し、徐々に透き通るような水色に変化していった。
「あれ?少し色が変わってしまいましたね……」
「だが、水属性の加護が付与されているし、魔力も強化されているようだぞ。」
「本当ですか?」
「ああ、本当だ。よく観察してみろ。」
私は銀の匙に液体を掬い、よく観察した。
確かに魔力量も申し分ないし、水魔法の力も強化されている。色が薄いからといって効力が薄くなったわけではなさそうだ。
「本当ですね。効果に問題はないみたいです。」
「色の薄さが気になるならミスティックブルームを足してみるといい。色も戻るし、花自体の効果で精霊魔法も使いやすくなるかもしれん。」
「なるほど、わかりました!少し足してみます。」
ミスティックブルームの花をいくつか足すと、液体の色が徐々に濃くなっていった。そこでルナツリーの樹液を少し加え、さらに混ぜ合わせた後、液体をガーゼで濾しながらクリスタルの瓶に詰めていった。
キラキラとした日の出の海辺のような美しい青の水の精霊のネイルが完成した!
よし、これはアクアクリスタルにちなんでアクアネイルと名付けよう。
「今日は他にも採取していたもので一気にネイルを作ってしまおう。試すのは簡単だからな。」
「はい!」
その後、私たちは様々なネイルを試作した。
フラッシュフェアリーの粉を使って作った素早さを上げる『ラピッドネイル』。
ルミナスフラワーとヒーリングハーブで作った回復効果のある『ヒーリングネイル』。
ミントリーフとヒーリングハーブ、ミスティックブルームで作った精神を癒す『リラクゼーションハンズ』。
そしてムーンリリーとその他の希少素材を惜しみなく使った最高品質の『ムーンリリーネイル』など!
こうして私は魔力ベースコート、ムーンリリーネイル、シャドウネイル、アクアネイル、ラピッドネイル、ヒーリングネイル、リラクゼーションハンズ、強化トップコートの計8つのネイルを手に入れた。
その後さらに数日間。先生と共にシルヴァーベアという大型の魔物の狩猟を行い、大量の肉を燻製や塩漬けにして保存食として加工した。
先生が寂しそうにするのでストックのジャムを作ったり、石鹸を作ったりもした。
先生は旅の疲れを癒せる様にとヒーリングハーブとミストリーフを入れた石鹸を私にくれた。
また、火打石の採取や応急薬の調合、ヴォイドリーフでの水筒作りも行い、旅の準備を万全に整えた。
先生にもらった地図でルート確認し、森の抜け方を記して準備を進めていった。
そうしていよいよ、私の旅支度は整ったのだった。




