第21話:ネイルの力
その後、私たちは夕方までに様々な準備を整え、夜になるのを待った。
月が昇る頃、私とセシルさんは月光の短剣、ルナリスを持って外に出た。
「月の光が強い場所で試してみよう。森は木々が生い茂っているから月の光もなかなか届かない。」
「そうですね、開けた場所で試した方がいいですね。」
森の中を歩き始めると、私の爪先がキラキラと輝き始めた。まるでラメの粒子が夜の闇を照らしているかのようだ。
「やはり、夜になると光るのはムーンリリーの効果なのか……先よりも大幅な魔力の増幅も感じる。」
私にはまだ魔力を感知する力はないが、そんな私でも指先から何か温かな流れを感じていた。これが魔力の流れなのだろうか……。
短剣を月光にかざすと、刃が徐々に輝きを増していく。先生もその神秘的な光景に目を奪われていた。
「先生、見てください!月光の短剣が光り輝いています!」
「確かに、この力は本物だ。凄まじいほどの魔力を感じる……流石エルフ王の秘宝といったところか。」
セシルさんは驚きを隠せない様子で、冷静ながらも興奮を隠しきれない目をしていた。
月明かりに照らされたネイルと、月光の短剣の刃は眩く光り輝き、まるで月光を集めたかのように暗い森を明るく照らした。
私もその光景に魅了され、短剣を振り下ろした。
ズパンッ!!
ドゴォォン…!!
突然の轟音と共に、大地が割れ、木々が薙ぎ倒された。
私は呆然と立ち尽くしていると、後頭部を思い切りセシルさんに叩かれた。
「いったぁあ!……わ、わ、ご、ごめんなさい!!」
「ごめんなさいじゃないだろ!なんだこのぶっ壊れた力は!!こんな破壊力があるなんてどの文献にも記されていなかったぞ!!」
後頭部を押さえながら手元の短剣を見つめる。確かに、この短剣自体にはそこまでの破壊力はないはずだ。月の加護があるとはいえ、傷を癒す力や精神を研ぎ澄ます力程度のはずなのに……。
「先生……もしかしたら、このネイルが月光の短剣の力を増幅させて、ここまでの力を発揮したんじゃ……。」
「だとしたら災害レベルの危険物だぞ……。確かに、加え満月の力もあって通常よりも力が増しているとはいえこれは……」
先生は無惨に切り裂かれた大地と薙ぎ倒された木々を見て頭を抱えた。
「魔法が使える使えない以前に、この威力は凄まじすぎる。やはりお前には魔力の操作と魔法の使い方を教えなければならない。そうしなければこの森が消滅してしまう。」
「森が消滅……!?」
私はその言葉に恐れを抱き、月光の短剣を鞘に納めた。
「そうだ、もはや災害レベルの力だ。その短剣自体は神話級の秘宝といったが、お前が使うとそれ以上のものになってしまう……。そういうものは本来国で管理し、封印される代物だ。そんなものをほいほい使ってみろ……どの国でも指名手配になるぞ。」
「し、指名手配……。」
私は今更になってとんでもないものを継承してしまったことに気がついた。
「これいりません!先生に差し上げます!!」
咄嗟に先生にルナリスを投げた。先生は冷静にキャッチしたが、次の瞬間、短剣は先生の手から消え私のベルトへと戻ってきた。
「え!?えええ〜!?」
「ふむ……選ばれた者にしか使用できず、他者が触れると短剣は自動的に所有者の元に戻る習性を持っている……か。文献の通りだな。諦めろ、それはお前が持ち、お前が魔力をコントロールして扱うしかない。」
「そ、そんなぁ……」
「では、明日からは魔力コントロールの修行に入ろう。徹底的にしごいてやる。森を痛めつけた罰もかねて、な。」
「ええ〜!!」
「ほら、今日はもう帰るぞ。明日は早い。今のうちにしっかり体を休めておけよ。」
「ううう……」
肩を落としながら、明日から始まるであろう地獄の修行に顔を青ざめさせるのだった。




