誤字、発見して落ち着く
来る早期選考に備えて対策を進める。業界研究などと称して、PC画面上で新聞の目を通しては、目を引く記事の見出しと内容を書き写す。
ふと、志望する企業の名が目に付く。
某有名メーカーに肩を並べている其れ。
私はこの企業で働くことができるのだろうか。
漠然とした不安が私を襲い、作業が手につかなくなる。
検索エンジンを起動し、企業名を入力。検索履歴として表示される「就職難易度」の文字。
一番上に表示される記事を開けば、「学歴フィルター」「採用倍率」など、就活生の不安を煽る言葉が所狭しと並んでいる。
20☓☓年度の採用倍率は「○○倍」、次の年は…。
いかにもインターネット上のフリー素材サイトから転載してきたであろうという女性キャラクターが喋る「脂肪度が高いならば…」
脂肪度、とは。
なんとも判りやすい誤字である。
恐らく、クライドソーシングか何かで雇われたライターによって書かれ検閲もないままサイト掲載となったのだろう、と容易に想像がついた。
選考への不安のためにPC画面を見つめていた自分が一気におかしくなった。
「選考倍率」「学歴フィルター」「就職難易度」などと銘打っているが、結局のところ企業とのマッチングに失敗したという理由付けを行うための鎮痛剤に過ぎない。
そんなものへ時間を割くならば、読書に勤しんだ方がよっぽど自己研鑽につながるだろう。
私は読みかけのヘミングウェイを手に取った。