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12話

 次の日の朝。部活のお蔭で良い睡眠が取れたのか俺は珍しく目覚まし無しで目を覚ます。俺は上半身を起こすと、ベッドのヘッドボードに置いてある携帯を手に取った。


「七時か……」


 俺の両親は共働きで、会社も遠いためこの時間帯にはもう居ない。ショートホームルームが始まるのが8:40分だし、いつものように5分前にはついてれば問題ない。出かける準備をしたって、まだ時間がある。


 さてどうするか──俺はとりあえずベッドから下りてパジャマ姿のまま部屋を出た。廊下を歩いていると、微かに何かを焼いている良い匂いがする。

 

 ん? 何だ? 母さんはもう居ないはず……もしかして今日は休みだったのかな?


 ──ダイニングのドアを開け、中に入るとキッチンで作業をしている千秋の姿が目に入った。


「チー、今日も朝ごはんを作ってくれているのか?」と、俺が声を掛けると、千秋は俺が早起きしたことにビックリしたのか、目を見開いて驚いた。


「悠ちゃん……珍しく早いね」

「うん。なんだか勝手に目が覚めちゃって」

「そうなんだ。久しぶりに部活をしたからじゃない?」

「かもね」


 俺はそう返事をして、洗面所に向かう──妙に千秋が目で追ってくるのが気になり、キッチンへと足を進めると、千秋は「ちょ……悠ちゃん。朝ごはんを食べるんだったら手を洗ってからにしなさい!」と、子供の様に怒られる。


「はーい」


 俺は言われた通り引き返し、台所に行く──フリをして千秋に近づいた。千秋はビクッと体を震わせ、慌ててカウンターに置いてあった俺がいつも使っている青色の御弁当箱と、千秋がいつも使っている赤色の御弁当箱を手で隠した。


「な、なに!?」

「チー……俺の御弁当も作ってくれたのか?」

「まさかぁ……おばさんが作ったやつだよ」

「じゃあ、お前の御弁当箱は?」

「──おばさんが、余ったおかずは使って良いよ言ったから……」

「ふーん……」


 俺が疑いの眼差しで千秋を見つめると、千秋はやましいことがあるのか目を泳がせる。とりあえず──。


「ありがとう」

「だから私じゃないって」

「いや、朝ごはんの方」

「あ、あぁ。そっちね」

「めっちゃ焦げてるけどな」

「えぇ~!!」


 千秋は慌ててガスコンロの火を消す。そんな姿が凄く可愛らしくて俺は思わず笑みを零していた。


「あちゃ~……」

「はははは」

「笑うな」

「はいはい」


 俺はダメダメねって言われる前に洗面所へ避難する──やっぱりあの時の御弁当は千秋が作ってくれていたんだな。俺は顔を洗いながらそう思う。


 でも何で恋人でもない俺なんかの為に? 世話の掛かる弟だとしても、そこまでするだろうか? 顔をハンドタオルで拭きながら考えていると、美沙と別れた日の事を思い出す。


「そういえば──」


 あのとき千秋は案外、その人は近くにいるかもねって言ってた。それがもし自分のことを言っていたなら──いや……まさかぁ……人気者の千秋だぞ? そんな事があるはずない。


 俺はそう答えを出し、鏡に映る自分を見つめる──そんな事があるはずない、その答えを出したのは自分だぞ? なのになんて顔をしてるんだお前……。


 スッキリしている所か、眉間にシワを寄せ、納得いかない表情をしている自分をみて、情けなくなる──分かったよ。


 俺は持っていたハンドタオルを元に位置に戻すと、ダイニングに向かう──皿を並べてくれている千秋に近づき「──なぁチー。今日の夜、予定とかある?」


「夜? 特にないよ、どうしたの?」

「一緒にゲームしないか? またパズルゲームしようぜ」

「そっかぁ、あの時からしてないもんね。分かった」

「楽しみにしてるよ」

「うん」


 ダメでも良い……覚悟を決めて前に進むぞ、俺!

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