表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知識0から創る異世界辞典(ストラペディア)~チャラ駄神を添えて~  作者: degirock
メガネスーツ女子とジャガイモとトイレ問題
48/54

頁48:トイレが生まれた日とは

     





 道無き道を暴走カミサマを追いかる事数分。当初の目的だった『川』らしき光景に(ようや)辿(たど)り着いた。

 山間(やまあい)に流れている、という予想から平野を流れる様な大きく(ゆる)やかな川とは違うだろうな、と思っていたが想像通り…いや想像以上だった。


「ウッヒョォォアァァァァ……!! こりゃすげえ眺めだナ…!」


 想像していたのは渓谷・峡谷の様な谷川だったけれど、目の前に姿を現したそれは名称未設定でありながらもその存在を無理矢理に脳にねじ込んで来る程の超激流の大峡谷だった。流石(さすが)は原初の星の姿を色濃く残している異世界…スケールが違う。

 その流れる水の量と勢いのせいで深さは予想もつかないが、昔見た事があるダムの放流よりは遥かに勢いも水量も上だ。向こう岸が水煙の奥に(かす)んで見える。百メートル以上の川幅があるのではないだろうか。

 こういった川が何年も経過してグランドキャニオンの様な秘境になるのかしら。そう空想するとちょっとワクワクする。


神々廻(ししば)さん、絶対に近付いたら駄目ですからね」

「怖い事言わないでヨ! さすがにオレちゃんだってそこまで馬鹿じゃないからネ!?」

「ええっ!?」

「そこで驚かないで!?」


 茶番もそこそこにして、と。


「ここがシシバ達が探していた場所で合ってる?」


 (ほとん)ど息を切らしていない雪之進(ゆきのしん)君が冷めた瞳で我々を見ていた。つらい。


「ええ。ちょっとイメージしていたよりもスケールが凄いですけど…」

「そう? そんなに大きい『  』じゃないと思うけど」


 え。


「マジかよ…コレでも並なのか……」


 異世界風景に慣れていそうな神々廻(ししば)さんさえも圧倒されている。

 ちょっと見てみたいな……この世界における『大河』がどれ程の物なのか。終わらない旅の途中にチェックポイントがあってもいいじゃないか。


「では【承諾(しょうだく)】、と。と言ってもコレを標準の川と言っていいのでしょうかね…」


 システムメッセージの【提案】に表示されたこの川の画像を見て何となく思った。

 目の前を流れる水の集合体が『()』という名を得てその存在感を増す。大地を揺るがす力強い脈動、肌をうっすらと湿らせていく水煙、耳を通り越して全身に響く瀑音(ばくおん)。星の生命力を叩きつけられている気分だった。


「アッチの常識に(とら)われなくたってイイじゃん? なんか異世界()がしてオレちゃんは好きだけどナ」

「確かに。これがきっとこの先も普通になっていくのでしょうね。楽しみです」


 素直な感情を口にしたのを神々廻(ししば)さんは驚いた眼で見た。


「どうしたノ『楽しみです』って…? オレちゃんもしかして何かやっちゃった…?」

「なんでそこで(おび)えるんですか!」


 と言うかやらかした時にこそ反省して下さい…。


「『アッチ』とか『イセカイ』とか、何の事?」


 しまった、雪之進(ゆきのしん)君がいたのをすっかり失念していた。


「あ、いや、それはですね…」

()()()()()()()()()()ってこんなすげぇ風景があんまり無くてサ。同じ地球(ツヴァイ・アス)の上にあるのに違う世界みたいだナって思ったのヨ」


 こういう時の彼の咄嗟(とっさ)の切り替えは本当に感心する。


「ふーん。まあ()()()()()にしておくよ」

「アララ?」


 丸め込めるかと思ったけれど見事にあしらわれた。

 …この子もどこまで予想しているんだろうか。底が見えない。


「二人とも、()()()()()()()()()()。僕は先に行くから後から付いて来て」


 そう言い残すと雪之進(ゆきのしん)君はすたすたと来た道を戻って行った。

 我々の編纂(へんさん)作業の数々を目にしておきながら追求しない…。それはつまり彼にとって我々は彼の目的の『手段』に過ぎないと割り切られているからだろうか。そう割り切れる彼の価値観も凄いが、それ以上に復讐心が彼の行動原理となっているのだろう。

 それが()()()()()()()()()であったとしてもそれすら理解して原動力にしていそうだ。


「何だかすげぇ子供だよネ…」

「ええ。彼なりの考えがあっての事なんでしょう。でももっと分かり合えるかもしれませんし、彼を知る努力は今後もしていきましょう」

「かしこ」


 軽い返事に本当に分かっているんだろうかと不安になる私を余所(よそ)【辞典】(ストラペディア)のページをめくる彼。


「じゃあ、今度こそ【トイレ文化】……レェェッツ☆クリエイション!!!」


 それってどうしても叫ばなきゃダメなんでしょうか。ノリがいまいち分からない。


《 CPを消費し、世界に指定文化:トイレ を誕生させました。現在の世界との関係性を調整をしました。》


 トイレとの関係性の調整って。もう字面(じづら)が変。

 でもこれで取り敢えずは生理現象による問題の一つが片付いた(はず)【辞典】(ストラペディア)によって改変されているとしたらスタ・アトの村の様子も変化しているかもしれない。ただ、恐らくは『トイレの原型』が生まれた程度だと考えておいた方がいいだろう。あくまでもここは異世界なのだから。


「これであの光景ともオサラバか…」


 感慨(かんがい)深げに呟いているけれどあなたその光景で吐きそうになっていたじゃないですか。元に戻してやろうかしら。

 現在地がどの辺なのかと何気なく大陸地図のページをめくるとちょっとした変化に気付いた。


神々廻(ししば)さん、これ見て下さい」

「え、どうかしたノ?」


 近付いてくる神々廻(ししば)さんに開いた私のページを見せる。


「この川の名前も付けられるようになってます」

「マジっすか」


 マジっす。

 雪之進(ゆきのしん)君はこの川はそんなに大きくは無いと言ってはいたものの、大陸地図上では東部の平野まで続くかなり長く大きな川に見えた。


「どうします? 今ここで名前考えますか?」

「うーーーーーーーーーーん………」


 眉間に何本も(しわ)を入れて考え込む名付け神様。


「デカい……激しい……そして結構長い………ならば……ヨシ!!」


 自分の【辞典】(ストラペディア)を呼び出し勢い良くページを開く彼。

 嘘、もう決めたの!?

 名付けが苦手だからという建前で私を召喚したくらいなのにこの変化…。自分のアイデアだけで問題なく名前を決められるのであるならば私がサポートする必要なんて要らないのではないか。

 …あれ、どうして残念な気持ちになっているのだろう、私。

 ええいそんな訳あるか。頭をぶんぶんと振って否定する。


「OK、決定!!」


 空中に固定した【辞典】(ストラペディア)の見開きをタン、と軽く叩くと名称が決定されたらしく、私の【本】もシステムメッセージのページに勝手に切り替わった。


《 世界設定/名称/地形/リ・ファスタ:ダイス・プロン川 が世界に登録されました。》


 おお、何と言うか異世界っぽい。分からないけど。名付け方が上達している証拠だろうか。


「独自の名称がスラスラと思い浮かぶのはゲームなどでファンタジー世界に触れてきた時間の長さゆえですかね」

「え? あ、ああ…うん、そうカモね」


 どうして命名直後は微妙な反応を示すのだろうか? まさか本当は満足していないとか…だとしたらいい加減そうに見えて実は相当真摯(しんし)に取り組んでいるという事だろう。


「あのサ…、キミ本当に………いややっぱナンデモナイっす」

「??」


 なんなんだろう。追求した方がいいのかしら。でもがっついていると思われたくも無いから彼が話してくれるまでは敢えて聞かないでおこう。


「これだけ範囲の大きい物の名前を付けたんだし、もしかしたら…ホラ来た!」

「え?」


 手元の【辞典】(ストラペディア)に目を落とす。丁度システムメッセージのページだ。そこに新たに追記されていく文字。




《 『ダイス・プロン川』が世界に登録された事により、既踏破区域周辺オブジェクト『スタ・アトの祭壇』が解放されました。》








   (次頁:49へ続く)






       

☆もしお時間的に余裕があって可能でしたらば「いいね」「コメント」「評価」を是非ともお願い致します。


★作家仲間様でしたらばお邪魔させて頂くかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ