頁20:命名責任とは
とりあえず決まってしまった物は仕方ない。それに設定を一つ一つ決める毎に姑の如く口出しをしてしまえば、結局それは神々廻さんが私を傀儡にしようとしたのと同じになってしまう。ある程度は寛大に、生暖かく見守るのも大事なのか。だがしかし…うむむ。
「あの…サ、歩き回ってるウチにこの村の名前とかも思いついたんだけど…」
私の葛藤を見抜かれたのか、おずおずと申し出る彼。調子が良いのは喜ばしい事だが果たしてどの様な名前なんだか…ドキドキする。悪い意味で。
「町の名前を付けるにあたってとりあえずまず『オレちゃんルール』を決めたのね」
「ルール?」
意外なプロセスだ。
「この世界の言葉を日本語で統一はしたけど、地名や町の名前は全てカタカナにしよう、と」
「ふむふむ」
既に【たいりく大陸】ってひらがなになっちゃってますけどね。
「どうしてもオレってば名前とか付けるの苦手だから、この先もしかしたら元の地球の地名を使っちゃうかもしれないでしょ?」
「それは…仕方ないと思いますけど」
本人が頑張って考えた名前であっても、知らない所で被ってしまうなんて普通に有り得るだろう。
そもそも地名だけですら計測できないくらいに存在しているのだから。
「だから、もしそうなったとしても『これはアクマでもこの星オリジナルの名前なんだゾ!』って自信を持って言えるように…って。なんでカタカナだからオリジナルなんだよ!ってツッコまれそうだけど、マァ単なる自己満足☆」
頭の後ろで腕を組んで気恥ずかしそうにナハハと笑う。
「そんな事は無いですよ。少なくとも私はその考えを支持します。永遠に終わらない作業になるだろうからこそ動機や理由付けは大事なのではないでしょうか。それでも恐らくいつかは惰性になってしまうかもしれませんが、せめてそれまでの間くらいのモチベーションに繋がるなら採用すべきです」
少し驚いた眼で私を見やる彼。
「え…、も、もしだヨ? もし『シブヤ』とかってあからさまな名前にしようとしても?」
「あなたの中で『あの渋谷とは違うんだ!』という明確な意思が存在しているならいいのでは? 要は自分が創造していく世界に対してどれだけ心を持って取り組んでいるかどうかでしょう」
そこに生きている人々には知る術は無いだろうが、自分達が生きている世界がカミサマの怠慢で適当に設定されていたなんて裏設定は悲劇でしかない。
「マジっすか…反対されるかと思ってビビって損したワ」
「だからもう…。私だって別に何から何まで反対したい訳じゃないんですよ。単におかしい事にはおかしいと言ってるだけで、いいと思った事なら普通に協力します」
「そっか♪ さっチーの事ちょっと誤解してた。ゴメン」
「さっチーもヤメロ」
抗議を都合よく聞き流して再び本を開く彼。
「それで? 決めたというこの村の名前とは?」
「う、うん」
緊張した面持ちでこちらをチラッと見る。まだ私に対して完全に緊張は解けていない様だ。
「……『スタ・アト』の村、ってのはドウデショウ…」
「『スタ・アト』?」
てっきり日本の地名から持ってくる物だと思っていたが予想外だった。
間の『・』がどういう意味なのかと思ったが、ゲームやファンタジーに登場する地名とかは恐らくそんなノリなのだろう。分からないけど。
「私にはファンタジーな世界観はよく分かりませんが、いいのでは?」
「え、ファンタジー??」
え?
「あ、いや、そんなすぐにOK貰えるなんて思わなくてサ! アハハ! やったぜ☆」
「…?」
なんだか引っかかるが、まあ大した事ではないのだろうか。
遠くの女子達からなぜか拍手が贈られた。
『よかったねオニーサーン! おめでとう!!』
『大事にするんじゃよぅ!』
「ありがとーハニー達!! 愛してるよっ!!」
『それこっちに言っちゃ駄目なヤツだからね!?』
…何を言ってるんだろうこの人達は…??? 異世界の文化は謎だ。
「ほら、決めたならすぐに登録しましょう」
「あ、そうだよね」
既に開かれていた大陸地図のページの左端、この村を表すアイコン?を彼がタップすると名称入力欄が展開される。
「では記念すべき最初の【町の名前】…誤字脱字OK。それでは登録、っと!」
私の本も自動で開かれるだろうから前もってシステムメッセージのページを開いておいた。
そのページに新たに刻まれる文章。
《 世界設定/名称/集落名/たいりく:スタ・アト が世界に登録されました。》
ずん。
…という感覚が全身を襲った。それは決して不快なものではなかったが、何と言うか…辺りの空気が締まった、みたいな。それは恐らくは『石』の時と同じで、この世界においてこの村の存在が正式に確定した事の証明なのかもしれない。それによってこの村がどの様に変化するのかは今はまだ不明だけど。
「なんて言ったらいいか分かんないケド…空気? みたいなのが変わったっぽくね? 呼吸がちゃんと出来る…みたいな? いや違うな…」
「言いたい事は何となく分かりますよ。村の雰囲気がハッキリした様に感じます」
「やっぱり? …あれ? ちょ、本見て!」
「え?」
言われた通り再び開いたページに視線を落とすと、先程のメッセージの次に新たに刻まれる文章が───
《 『スタ・アト』が世界に登録された事により、スタ・アト専用町成長イベント『 の巣』が解放されました。》
(次頁/21へ続く)
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