頁18:CPとは
先程いた人気の無い場所から移動しながら小さな声で話す。
いくら人目につかない場所だと言っても、流石に同じ場所に長く居すぎだと思ったからだ。我々を気にしている村の人の目も忘れてはならない。
「まずはひろしさんとの会話から確認出来た未設定の名称から決めていきましょう。恐らくこれらはミッション2ではないので私の承諾は不要の筈ですが、一人で決めますか?」
それはそれでかなり不安ではあるが、『決定する経験』を重ねればいずれ苦手意識も薄れていくのではないか。『おおまかな世界設定』と私は評したが、神々廻さんにとっては確かに難問の続く問題集みたいに見えるかもしれない。
「無理でs…ぅぇっぷ。手伝って下さい。吐きそぅ…」
「どれだけ雑魚メンタルなんですか!?」
本気で顔色が悪くなってる…。
はぁぁぁ…と私はため息を吐いた。仕方ない、得手不得手の最悪のセットがたまたま当たってしまったんだと諦めよう…。
「分かりましたよ…。でもあくまでも私はサポートするだけですからね。最終的に決定権を持っているのはそちらなんですし」
「うう…分かったよぅ…」
泣きそうな顔すんな。泣きたいのはこっちです。
「では…まずはこの大陸の名前から決めましょうか」
「あ、それまだ無理っぽい」
「……え? なぜ??」
「これ見て」
そう言うと彼は背中に手をまわし、ヨレヨレのシャツの下に手を入れると本を取り出した。成程、ちゃんと人の目を意識している様だ。
我々は虚空から本を召喚出来るけれど、その図は下手したら異端に見られかねない。だから誰に見られてもいいように服の内側に仕込んでいたという演技をしたのだろう。
でもなんか嫌だ。生暖かそうで。
「大陸の名称設定のページでこの『たいりく』と記入された欄を押してみるト…」
《 名称変更をするにはCPが不足しています。》
見慣れた警告の文字。
「…どういう事ですか? CPって?」
村の人から『見た事も無い物を図鑑と見比べている旅人』に見える様に私も立ち回る。会釈したり愛想笑いを振りまく事を常に忘れない。
「新規設定はいつでもどこでも好きに出来るんだけど、一度名前を付けてしまうと変更するのに『クリエイションポイント』っていうポイントを消費しないといけないみたいヨ」
「クリエイションポイント??」
ページを一気にめくり、ヘルプの載っているページを開く彼。
「ミッション2から導入されてた要素みたいだネ。ええと…、キミの辞典に登録されていくモノが増える度に加算されていくポイントみたい? ていう事は今現在2つ登録済みだから2ポイントあるって事かしら」
なぜか女子っぽい語尾で保有ポイントを調べようとページをパラパラめくる彼。
なんだか天地創造の壮大さの割に随分俗っぽくなってきた気がするけど…そもそも必要なポイントってどのくらいなのだろう。
「あ、あった。…って、1100ポイント!?」
「ちょっと声が大きいですよ!」
「おっと、そうだった。ごめん…」
突然大きな声を出したせいで少し視線を集めてしまったっぽいが、なんとなく『珍しい物を見つけてはしゃいでる外国人を微笑ましく眺める空気』を感じた。…まあ実際概ねその通りですけどね…。
「なんでこんなに加算されてるのか分からないケドたった2つ登録しただけでそんなに貰えるなんて……実は間違えても修正し放題だったり?」
いや、大事な事を忘れています。
「名称修正に必要なポイントは……ブフーーー!?」
ほらやっぱり。ていうかリアクション大きすぎ。さっきよりも見られてるじゃないですか。ニコニコ。
「ひゃ……ひゃくまんぽいんと……?」
「でしょうね。基準は分かりませんが、星全体に影響を及ぼす様な大規模改変がそうそう簡単に行えるとは思えません」
「うへぇ…、変な名前付けるんじゃなかった…」
全くです。
「どうしよう? 頑張ってポイント貯める?」
「…他にポイントを使用するモノって何があるんですか?」
もしその他にポイントを要する重要な創造があった場合、そちらに必要ポイントをまわせなくなる可能性がある。
名前を付けられる物には限りがあるからだ。
「えっと……『新規産業のクリエイト』『指定物質のクリエイト』『他』。『他』ってなんやねん」
アクセントがイマイチですね。それでは関西の方からツッコまれます。どうでもいいですけど。
「現在解放されているその二つは如何にも黎明期を彷彿させる響きですので、単純に予想するなら文明が一定レベルに達した時点で『他』が明らかにされるのではないでしょうか」
「おお…ナルホド…霊名器……レーメーキ…??」
なんか考えてる文字違いません?
神々廻さんが次の場所を見に行こうぜ!という体で立ち上がりその場から歩き出す。私もギャラリーに手を振り振り。
「ちなみに初期装備の変更に必要なポイントは?」
「装備変更…うーーーん、さっきよか全然少ないけど…一部位につき一万ポイント必要だワ」
すると四か所で四万か…。確かにそこまで多い感じはしないけれど、ポイント加算の法則が分からない以上はやはり迂闊に消費すべきではないかもしれない。
「仕方ないですね、とりあえず暫くは保留で我慢しましょう。───で・も!!」
「ハ、ハイ!?」
これだけはちゃんと理解してもらわなければ後々困る事になるので、立ち止まって彼の目をしっかり見据える。
「いいですか? 設定の変更には大きなリソースを割く、つまり名前を付けるという我々の行為とはそれだけ重要な意味を持っているという証明みたいな物です。私達にとっては単に作業の内のいち項目に過ぎないとしても、この星にとっては血となり肉となって行くんです。ガチガチに構えて考えろとは言いませんが、せめて一つ一つに対して真摯に取り組みましょう」
「は、ハイ! カシコマリマシタ!!」
しまった、ガチガチだ。
遠くで何事かと我々を見ていた老若女子達から妙にキュンキュンしたオーラを感じるのだけれど…何をどう勘違いしたのだろうか。ニコニコ手を振り振り。(そろそろ疲れてきた。)
「はぁ…、とりあえずまずは慣れていきましょう。私もまだ分からない事が多すぎるので」
(次頁/19へ続く)
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