逮捕されてたまるかいっ!
『姉様っ!そんな姉様っ!!』
ランが、手錠を嵌められたロンに向かい,泣き叫ぶ。
ロンに近づこうと警察官を押し除けようとする。
しかし、警察官は何人もいてランの力では、かなわない。
私とヤマさんは茫然としている。
はっとしたヤマさんは、刑事に尋ねる。
『何があったんだ?』
『ええ、実は〇〇河川敷で通り魔による死体が発見された。その死体から、ロンさんの爪痕が見られた。しかるに、容疑者として疑惑がある。』
『それだけで!?』
『ああ。だってロンさんと被害者に接点はないのだから。通り魔的犯行として説明がつくだろう。』
『そ、そんなバカな・・・。』
『そうよっ!だって姉様は私とずっと一緒で・・・。』
『寝てる時もかな?犯行は午前2時過ぎだ。』
『そ、それは!』
そうあの不自然な全員寝落ちが、薬などで調整されたものならば。犯行は可能だ。しかも、ロンが食事を運んでいた。
状況的には可能なのだ。
『ヤマさんも、エミリも言ってよっ!どう考えてもおかしいじゃないっ!こんなの濡れ衣なのよぉぉっ・・・。』
ふわぁあああんと、崩れ落ちてランは泣きはじめた。
『ラン。』
ロンが振り返る。
『大丈夫、私はやってないからね。すぐ帰るわ。』
ロンの耳がピクピク動く。大丈夫じゃない。非常にストレスと不安が入り混じっているはずだ。
『姉様あああああああっ!』
ランの耳はうなだれている。
声をあげて泣く。そのまま無常にも、ドアは閉じられていった。ランとロンの絆に蓋をするように。
♦︎
泣き続けるランの背中をさする。
ヤマさんは何か考え続けている。
リビングでは沈黙の時間が続いていた。
違和感を感じる。
ヤマさんは襲われたが助かった。
そして、その襲った人物の死。
助けたロンの早すぎる逮捕。
『ふふふっはーっはっはっ!この迷宮の探索者たる、魔界からの使者、エミリが暴いてやろうでないかああああっ!!』
バッと立ち上がる。
ランは姉様、姉様と言いながら泣き叫ぶ。
ランのネコ耳はどんな構造なのか、左右にピクピク激しく動く。
ヤマさんには、『エミリちゃん。今日もシマシマパンツだね。』と立ち上がった勢いで捲れたスカートの中身を凝視している。
まさに地獄絵図だった。
一方で捕まったロンだったが、次の日にテレビで報道されていた。
脱走犯として。